第31話 シルフ
あれは5年前だっただろうか。
私は黒緑の森の近くの村で生まれた。その森には魔王城があって、よく攻め込まれていた。でも村にはたくさんの獣人が住んでいる。だからよく追い返した。
でも、あの日は違った。
「逃げて!」「ダメだ!勝てない。」
村中が火に包まれ、周りにはよく遊んでいた子や知り合いのおばさんが血を流して、倒れていた。
あっという間だった。村の警備の人の声が聞こえて、逃げようとしたときには、魔物に囲まれていた。
その後、村長が降伏して戦いは終わった。
「お母さん、お母さん!」
私はこの戦いで母が死んだ。最後は子供を守って、建物に潰れたらしい。あまりに酷い姿だったらしく私には見せてくれなかった。
「どうする。条件を飲み込むか。」
「嫌、それではあの子が...」
「それでは、みんな殺されるぞ!」
「しかし...」
村の大人たちが集まり、話していた。小さかった私はどんな話をしているかが分からなかった。でも今から分かる。
その3日後、私は大人達につられて魔王城に行った。
「そいつか?」
「はい。村で一番強い子です」
私は訳がわからなかった。なぜ連れてこられたのかを。どうなるのかを。
「わかった。受け入れよう。」
目の前が男がそう言ったとき、私の体が動かなくなった。魔法を使われたのだ。
「え、どういうこと?なんで.....」
私は周りの大人達を見上げて、やっと分かった。私は村を守るために捧げられること。そして見捨てられたことを。
そこから私は魔王軍の一員として働いた。雑用をしながら、他の魔物にボコボコにされるのが毎日だった。
でも私には才能があった。体術も一度受ければ、習得できるし、獣人の特徴である五感の発達もあったから、すぐにボコボコにすることができた。その才能を見込まれて私は魔王の配下の1人になった。
「でもなんで、この森にいたんですか?」
「それはな....」
今から2年前転機があった。魔王軍による侵攻だ。森の近くの町に私は副リーダーとしてに攻め込んだ。
そのときに、私は戦場から逃げ出した。今思えば、この機会をずっと狙っていたのだなと思う。その足で私は故郷の村に戻った。
私は嬉しかった。みんなにまた会えることが。でもみんなは違った。私を見るなり、「なんでお前が」「この村はどうなる」と言われた。
気づけば私は1人で逃げ出していた。とにかく村から離れた場所へ。悲しい気持ちを紛らわすように走り続けた。
「それで、この森に」
「そうです。その後は森に住む白狼達を従わせて住んでいました。」
「そうだったんですね」
主様が悲しそうな顔をしている。私のためにそんな顔をしてくれるなんて♡
「主様!大好きです」
「わ!ちょっとシルフ〜」
やっぱり主様はいい匂いがするな。甘くて、自然の匂いがする。
「はい。終わりです」
「あ〜」
無理矢理離されてしまった。もっと嗅ぎたかったな。
「それで、本当に僕達と住むんですか?」
「もちろんです!でも主様が嫌なら外にいますけど」
「い、嫌じゃないですよ。部屋はあるし、イレイスさんもいいとおっしゃっていたので。」
「ありがとうございます!!」
あっ!この家に向かっている人がいる。この匂いは...イレイス様だ。
「主様!イレイス様が帰ってきましたよ」
「よくわかったね。行こうか。」
「はい!」
家事とか何もできないけど、主様とイレイス様の役に立てるよう頑張るぞ。主様のベットにもマーキングできたし、満足、満足!




