第2話 勇者の帰還1
イレイスは疲れ果てた体を動かし、壊れた大きな門の穴を潜り抜ける。
周りの森や空は不気味なほどに静かで、暗かった。
しかし、通常ならいるはずの魔物もほとんどいない。
「よし」
彼女は魔王城で得た宝石などをカバンにしまい、剣を腰にしまう。
ここは魔王城のある東の森の奥深く。
王都ペルケースからは数週間以上かかる場所である
「まだまだのんびりできそうにはないな...」
彼女は疲れ果てた声で呟きつつ、馬を走らせる。
彼女は手持ちの干し肉を食べながら王都を目指した。
1週間ほど経ち、彼女はついに森から出ることができた。
「やっぱり森は苦手だな」
彼女は周りを見渡す
木々が邪魔をして空が見えなかった森とは違い、青い空に白い雲、自分の背丈を超えるほどの鳥の群れ、彼女は見慣れた景色に安堵した。
ここから王都まではまだまだかかるが、危険は少ない
「うーーん」
彼女は大きく背伸びして、深呼吸をする
仲間と一緒にこれば、移動の最中も楽しかったのだろうか。いや、今更もう遅いな。
彼女は心の中で思いつつ、王都を目指して馬で駆け出したのだった。
数週間がたち...
「やっと着いた〜」
彼女が疲れながらも喜びを隠しきれない声をだす
ここは王都ペルケース
この世界屈指の都市である
周りは、人の背丈を遥かに越す壁に囲まれており、魔物の侵入を防ぐための結界が張られている
冒険者はもちろんのこと、騎士団や、商人などたくさんの人で溢れている。
彼女は王都ペルケースの入り口の西門で並んでいる。
「次の方どうぞ」
銀色の鎧を着た男がイレイスを呼ぶ。
「冒険者カードを」
「どうぞ」
彼女は金色で染まったカードを取り出し渡す。
この世界の冒険者のランクはカードの色で判別される
ランク5 茶色 冒険者の20%を占める
ランク4 青色 冒険者の30%を占める
ランク3 赤色 冒険者の35%を占める
ランク2 銀色 冒険者の10%を占める
ランク1 金色 冒険者の5%を占める
それぞれ、ランクによって受けられるクエストや特典が変わる。
金色のカードは勇者や、冒険者の中でもトップを占める人物が持っている
「確認しました。イレイス様ですね」
男が冒険者カードを差し出す
「入ってどうぞ。王がお待ちです」
「わかった。ありがとう」
イレイスはカードを受け取り、門を潜った。
やっと終わったのだな。
彼女はぼそりと呟き、白に染まった立派な王城に歩みを進めた。