第16話 王都からの伝令文
「おはようございます!イレイスさん」
その声で目が覚めた。いつもよりも体がすっきりしている。やはり柔らかいベットのおかげだろう。
シュン君が窓を開くと朝の冷たい風が流れ込んできた。
「イレイスさん!今日はランクが上がって初めてのクエストですよ。早く行きましょう」
シュン君が興奮した様子で私をベットから連れ出す。
まだ起きたばかりかぼーとする。
「ん、いい匂いがするな」
「朝ごはん作りましたからね」
......なんて良い子なんだろうか。私よりも早く起きて、ご飯を作ってくれるなんて。てか私の方が年上のはずなんだけどな。
そんなこんなで、ご飯を食べて身支度をしてシュン君と冒険者ギルドに向かった。
「ランク4のクエストはどんなものがあるんですか」
「ランク4はな......」
そんな会話をしていると、町が少し騒がしい。
「時の勇者が.....!」
「これはすごいことだぞ」
「でも1人......」
そんな会話が聞こえてくる。
「なんか騒がしいですね」
「そうだな。時の勇者がなんかしたんだろう」
「時の勇者ってのはどんな人なんですか?」
「そうだな。時の勇者は世界トップと言われている奴だ。異世界から召喚されて、魔法と剣術の両方がトップクラスの実力を持っている。私も何回か見たことがあるが勇者以外のパーティーメンバーもそれぞれ強そうだった。」
「すごい人なんですね」
「まぁな」
そんな会話をしながら冒険者ギルドの扉を開けると、さらに騒がしく、冒険者が集まって一枚の紙を見ていた。
「気になるな。シュン君少し行ってみてもいいか」
「もちろんです!僕も気になるので」
こうして群衆の中をかき分けていくと、紙の文字が見えてきた。
「伝令文か。珍しいな」
そう思いながらわたしは文章を読むことにした。
「時の勇者、強敵を追い払う」
王都ペルケースの近くの森で魔王軍の中でも5本の指に入る配下の1人が現れた。そいつによって、近くの町が壊滅状態に陥った。それを聞き重大な問題だと考えた王の判断により、時の勇者一行に討伐を命じた。
そしてそれから1週間後、時の勇者が帰ってきて民衆の前にたった。
「無事倒すことができた!!みんな安心するがいい」
その言葉に王も民衆も大いに喜んでいた。
その後、正式に王から発表された。その内容は以下のものだ。
「時の勇者一行によって、無事討伐することができた。しかしその中で魔法使いが一名殉職してしまった。なのでその代わりになる者を募集する!」
なので以下の条件に当てはまる人物は至急王都にくるように......
魔王軍てのは嘘だな。民衆にはまだ生きていることにしているらしい。まぁ龍王が実はいましたーっていうよりも、そっちの方が混乱は避けられるか。
「魔法使いの人、死んじゃったらしいですね」
「そうだな。しかし戦いには犠牲はつきものだ。しょうがないだろう。それも相手は相当な強者だったらしいし、1人の犠牲で済んだだけまじなんだろう。」
「そうですか...」
シュン君が落ち込んでいる。ここは年上の私が言葉をかけるべきだな。
「安心しな、シュン君。私は絶対に死なないし、シュン君も守ってみせる。それよりも、クエストを受けに行こうか!」
「......はい!」
驚きの情報が耳に入ってきだが、気にすることはない。私はもう勇者をやめているのだから。そう割り切り、シュン君とランク4クエストを受けるのだった。




