第15話 新築祝い
初めてのクエストを受けてから約1ヶ月。私たちはクエストを受け続けた。猫探しや海岸の掃除などなど。たまに面倒事に巻き込まれるときもあったが基本的にはすんなりいったし、ランクも上がった。
「やっと...完成したな!シュン君」
「はい!やっとですね!」
今、私達の目の前には一軒の家がある。
建て替え前に比べて、全体的に大きくなっている。
そこら中に穴や蜘蛛の巣があった壁や天井も張り替えられ、綺麗な木が使われている。この木は少し特別で、他の木よりも頑丈らしい。この森の魔物に対策だ。と、店主の老人は言う。木で作られた屋根や壁からは暖かさを感じる。
「さっそく、入ろうじゃないか!シュン君」
「はい!」
そうして、木で作られた扉を開けると待望の景色が広がっていた。
「すごいですね!!ミリスさん」
「あぁ!」
お風呂場とキッチン。宿屋に比べてフカフカのベット。4つほどある個室。私が欲しかった物がある。それだけで目頭が熱くなるのを感じる。長かった......本当に長かった。ずっとこの景色のために頑張ってきたような気がする。
「シュン君!さっそくお祝いをしようじゃないか!」
「そう言うと思って、たくさん買ってきてます」
「素晴らしい!」
嬉しすぎて、テンションがおかしくなっている気もするが、今日ぐらい問題ないだろう。
「もう食べられない......」
「私もだ」
シュン君が膨らんだお腹を手でさすりながら口を開く。私1人だったら食べきれないだろうし、ここまで楽しくなかっただろう。
そう喜びに浸っているとシュン君が声をあげた。
「あっ!忘れてた」
そう言ってシュン君はポケットの中から何かを取り出して、机に置いた。
「......これはなんだ?」
机の上には花をモデルにしたと思われる髪飾りが置いてあった。
「これは、僕からの新築祝いと今までの感謝の気持ちを込めたものです。ぜひつけてみてください!」
「......ありがとう」
私は手にとって髪飾りを見る。白い花びらに中央の黄色。
「懐かしいな......」
その髪飾りの花は久しぶりに王都に行ったときに、小さな少女に貰った花と似ていた。シュン君は知らないはずだが。まぁ私はこの花が似合うんだろうな。それにしてもこれがシュン君の隠してた秘密の正体か。
「イレイスさん?」
シュン君が私を見て、眉をひそめている。どうかしたのだろうか。
「大丈夫ですか?」
「え、」
とっさに私は自分の顔を手で触る。お酒で熱くなっている肌に、指を伝う液体を感じた。
「あっ、大丈夫だ...」
そう言いながらも......涙が止まらない。この年で泣いてしまうとは情けないな
「ありがとう、、シュン君。絶対大切にする」
「こちらこそ、ありがとうございます!!今後もよろしくお願いします」
こうして、私達は新しい家での生活が始まった。
私はこの日は死ぬまで絶対に忘れないだろう。




