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ドラゴンとして転生

 その日は土砂降りの雨の日だった。俺が仕事で多忙の両親の代わりに幼稚園に年長の弟を迎えに行った帰り道。弟は兄である俺の手を握りしめ、拙い足取りでついてくる。


 弟は赤い長靴で足元の水溜りをいじくりご満悦だ。楽しそうな弟の姿を見ていると、こちらまで心が安らぐ。


 両親は若干ネグレクト気味、俺は中学三年生にも関わらず、ネットゲームばかりしているため、友達トータル数0人。


 せめて、お前だけはまともに育てよと、兄として弟の人生を祈るばかりだ。そんな何気ない事を考えていると、それは突然やって来た。


 大型トラックだ。トラックは車道を大きくずれ、歩道にいる俺達の元に物凄い勢いで突っ込んでくる。俺は咄嗟に弟を庇おうとする。が、間に合わない。俺と弟はトラックににあっという間に飲み込まれた。


 気づくと、俺と弟はうつ伏せに倒れていた。俺は血だらけの手で弟の手に触れた。まだ、脈がある。


 生きている。何やら、周囲の人々がきゃーきゃーと騒ぎ立てている。それほど、俺達の出血量が酷かったのだろうか。


 薄れゆく意識の中、俺は一つのことだけを考える。神様、俺はいいから、弟を助けてあげてください。俺と違い、弟はまだ幼いのだ。


こんなところで死ぬなんてあんまりにも程がある。そんな事を思っていると、次第に、見えていた目も見えなくなっていく。


 「兄……ちゃん……」


 意識を失う瞬間に弟が自分の手を握ってくれたような気がした。


 *****************************


 目が覚めると、俺は何やら膜のようなものに覆われていた。ここは何処だ?確か俺はトラックに巻き込まれて……。


 そうだ!!弟の事を思い出し、俺は立ち上がろうとする。その瞬間、硬いものに頭を思い切り強打し、俺はあまりの痛みに悶絶する。


 これは困った。こんなに困ったのは小学生時代の校長室の掃除時、校長先生が大事にしていたカビンをうっかり割ってしまった時以来だ。


 どうやら、俺は何かの殻に閉じ込められいるらしい。どうにかここから、出られないものかと、利き手である左手で自分を閉じ込めている、殻状の物体を触ろうとする。


 その左手を見た途端、俺はゾッとした。それもそのはず、俺の左手……。いや、身体中のあちこちに青い鱗がぎっしりと生え渡っていたのだ。


 何故か、お腹だけ淡い水色の皮膚が生えているが……。それに、体も異様に小さいし、背中と尻にも何かが生えている感触を覚える。


 もっとよく後ろ部分を見たいが、膜で固定されているため、前部分しか確認する事ができなかった。落ち着け!俺!パニックになりかけていた自分を自分で叱咤し、状況を整理しようとする。


 恐らく、俺は事故の後遺症的ななにかで、鱗が生えてしまい、異例の症状として、何処かに閉じ込められているのではないだろうか。


 しかし、そんな事がありえるのだろうか?だが、何が起きるのかが分からないのが人生というものである。せめて、体を覆っている膜だけでも、引き剥がせないものかと、膜を思い切り手でひっぱてみる。


 だめだ、びくともしない。この膜が強力すぎるのか?いや、単純に俺の筋力が落ちているのだ。


 元の体だったら、こんなもの簡単に引きちぎれただろう。ここまでひ弱だと、これからの日常生活に難を要するかもしれない。しょうがない、こうなったら俺に出来ることは外側からの接触を待つ事だけだ。


 俺は寝る事を試みるが、なかなか寝付けない。俺はこれからどうなるのか?何より弟は無事なのか?様々な疑問が俺の頭の中を駆けずり回り、眠りにつく事は至難の技であった。


 その日は土砂降りの雨の日だった。俺が仕事で多忙の両親の代わりに幼稚園に年長の弟を迎えに行った帰り道。弟は兄である俺の手を握りしめ、拙い足取りでついてくる。


 弟は赤い長靴で足元の水溜りをいじくりご満悦だ。楽しそうな弟の姿を見ていると、こちらまで心が安らぐ。


 両親は若干ネグレクト気味、俺は中学三年生にも関わらず、ネットゲームばかりしているため、友達トータル数0人。


 せめて、お前だけはまともに育てよと、兄として弟の人生を祈るばかりだ。そんな何気ない事を考えていると、それは突然やって来た。


 大型トラックだ。トラックは車道を大きくずれ、歩道にいる自分たちの元に物凄い勢いで突っ込んでくる。俺は咄嗟に弟を庇おうとする。が、間に合わない。俺と弟はトラックにあっという間に飲み込まれた。


 気づくと、俺と弟はうつ伏せに倒れていた。俺は血だらけの手で弟の手に触れた。まだ、脈がある。


 生きている。何やら、周囲の人々がきゃーきゃーと騒ぎ立てている。それほど、俺達の出血量が酷かったのだろうか。


 薄れゆく意識の中、俺は一つのことだけを考える。神様、俺はいいから、弟を助けてあげてください。自分と違い、弟はまだ幼いのだ。


 こんなところで死ぬなんてあんまりにも程がある。そんな事を思っていると、次第に、見えていた目も見えなくなっていく。


 「兄……ちゃん……」


 意識を失う瞬間に弟が自分の手を握ってくれたような気がした。


 ***********************************


 目が覚めると、俺は何やら膜のようなものに覆われていた。ここは何処だ?確か俺はトラックに巻き込まれて……。


 そうだ!!弟の事を思い出し、俺は立ち上がろうとする。その瞬間、硬いものに頭を思い切り強打し、俺はあまりの痛みに悶絶する。


 これは困った。こんなに困ったのは小学生時代の校長室の掃除時、校長先生が大事にしていたカビンをうっかり割ってしまった時以来だ。


 どうやら、俺は何かの殻に閉じ込められいるらしい。どうにかここから、出られないものかと、利き手である左手で自分を閉じ込めている、殻状の物体を触ろうとする。


 その左手を見た途端、俺はゾッとした。それもそのはず、俺の左手……。いや、身体中のあちこちに青い鱗がぎっしりと生え渡っていたのだ。


 何故か、お腹だけ淡い水色の皮膚が生えているが……。それに、体も異様に小さいし、背中と尻にも何かが生えている感触を覚える。


 もっとよく後ろ部分を見たいが、膜で固定されているため、前部分しか確認する事ができなかった。落ち着け!俺!パニックになりかけていた自分を自分で叱咤し、状況を整理しようとする。


 恐らく、俺は事故の後遺症的ななにかで、鱗が生えてしまい、異例の症状として、何処かに閉じ込められているのではないだろうか。


 しかし、そんな事がありえるのだろうか?だが、何が起きるのかが分からないのが人生というものである。せめて、体を覆っている膜だけでも、引き剥がせないものかと、膜を思い切り手でひっぱてみる。


 だめだ、びくともしない。この膜が強力すぎるのか?いや、単純に俺の筋力が落ちているのだ。


 元の体だったら、こんなもの簡単に引きちぎれただろう。ここまでひ弱だと、これからの日常生活に難を要するかもしれない。しょうがない、こうなったら俺に出来ることは外側からの接触を待つ事だけだ。


 俺は寝る事を試みるが、なかなか寝付けない。俺はこれからどうなるのか?何より弟は無事なのか?様々な疑問が俺の頭の中を駆けずり回り、眠りにつく事は至難の技であった。


 **************************************


 パキ。何かが割れる音がし出し、俺は目を開ける。どうやら、寝てしまったらしい。あの状況で寝れる自分に自分でびっくりする。体感的にはまだ、1日もたっていないような気がする。


 俺が視線を彷徨わせると、俺を覆っていた殻のようなものが、割れ始めていることに気づく。俺が目を覚ました事に気がつき、外側の人間が拘束を解いてくれようというのか?俺は勇気を出し、殻の割れ目から頭を突き出した。


「グルル」


 目前にいたのは二匹のドラゴンであった。赤い竜と、青い竜。余りにも現実離れした光景に俺は唖然となる。その途端、青い竜の方が自分の方に歩んでくる。


 逃げようにも、膜で体を拘束されていて身動きが取れない状況だ。俺は一瞬死を覚悟する。


 だからこそ、青竜が自分にしてくれたのは予想外の事であった。青竜は俺の膜を鋭い牙で噛みちぎって、俺の首根っこを咥えると、俺を殻から引き摺り出してくれた。


 真横には、俺より早く殻から出してもらった二匹の小さな子竜ドラゴンがいる。まさに、感動の生命誕生の瞬間てやつだ。


 うん。これはつまりあれだな。ネットゲームばかりしていた俺は特別この手の分野に詳しかった。


 どうやら、俺はドラゴンに転生してしまったらしい。ドラゴンなんて現実にいるはずがないので、これは異世界である可能性が高い。


 大型トラックに轢かれたのだ。無事では済まない事だとは思っていたが、まさか死ぬ羽目になるとは……。俺の人生て、とことんついていない。


 そう、考えるとやはり、弟も死んでしまったのだろうか?記憶は曖昧だが、弟は自分と同じぐらいの重体であった気がする。もしかしたら、弟もこの世界に転生して来ているのかもしれない。


 しかし、それは弟の死を認める事になってしまう。そこまで、思考を働かせたところで、俺は首を振る。やめだ。考えたところでどうにもならない。


 今俺がすべき事は自分の置かれた状況を頭の中で整理する事だ。


 まず、俺は現代日本で生まれ育った一般学生であり、トラックの事故によって死亡。その後、異世界にドラゴンとして転生したというところか?


 しかし、何故ドラゴン?種族的には強くてかっこよくて勝ち組な気がするが、いざ、自分がその種族になれと言われたら、YESと言えないところだ。


 欲を言えば、人間が良かった……。この見た目である。異世界でお決まりのモテモテな展開は恐らく叶わないであろう。それに、転生と言えばチート能力を授かるというがお約束だ。


 今のところ、俺はチート能力なんて授かった覚えがない。それとも、自覚がないだけで実は授かっているのか?俺が元の頭の三分の一ぐらいになってしまった頭を捻りながら考えていると……。


「グルル?」


 青竜の方が不安そうに自分を青い瞳で見つめてくる。恐らく、この世界での俺の親だろう。しかし、何故この竜はこんなにも不安そうにしているのか?もしかして、これって産声とかあげなきゃいけないパターン?


 俺は先に生まれた自分の兄弟であるはずの二匹の竜を盗み見る。緑と赤の鱗を持て生まれた自分の兄弟は甘えた声を出しながら、もう一方の親であるはずの、赤竜にすり寄っている。なるほど、甘えればいいのか。


 俺が早速他二匹の兄弟と同じことを青竜にしてみると、青竜は嬉しそうな顔をし、俺の顔に鱗まみれの頬を押し付けてくる。ドラゴンの愛情表現だろうか?鱗が当たってちょっと痛い。


 俺が顔を顰めていると、隣に居た赤竜の方も俺の方に歩み寄って来て、俺に同じく頬を押し付けてくる。人生で初めて見るドラゴンは意外と子煩悩であった。


 俺は二匹の竜に絆されながらも、これからの異世界生活に不安を抱いた。


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