新たな依頼
人間と魔王軍の戦いに疑問を持ち始めたレビン。
勇者候補エドとの西のダンジョン攻略、魔王軍四天王メディウスとの2度目の出会いを通して更に深く考えるようになったレビンにまた新たな依頼が。
あれから数日が経った。
俺は未だに考えて答えを出せないでいる。
南の都市ミヅキの英雄エド達は確かに魔王四天王のメディウスの手によって殺されてしまった。
その影響は小さくなかった。
勇者候補でもあったエドが死んだことによって王都を中心に不安の声が広がっていた。
勇者候補でも魔王どころか四天王にも歯が立たないという事実が人々の恐怖心を煽った。
しかし俺は別の考えで頭を悩ませていた。
人間とモンスターが戦うこと自体に疑問を持ってしまった。
現在、王都を中心にこの国は結界が張られているお陰でモンスターの侵入を許さない状態が維持されている。
その為、城壁の中では人々は安全に生活を送れている。
逆にモンスターはダンジョンで生活をしているがこちらは結界などが無く人間が入り放題だ。
なので人間、特に冒険者はダンジョンに入り必要な資源の採取や経験値を稼ぐ為にモンスターを討伐している。
人間から見れば冒険者は心強く頼もしい存在だろう。
でも、モンスターからすれば自分たちの住処に勝手に人間が侵入してきて襲ってくるという印象なのではないだろうか?
逆の立場なら人間が住むところに結界が無くモンスターが襲ってくるのと何が違うのだろう…。
俺はどうしても納得のいく答えが出せず悶々とした日々を過ごしていた。
今日は珍しく予定が入っていなかったので戦闘訓練に参加した。
ニールを始め、皆戦闘スキルが上がってきている。
俺が用事で色々動いている間に俺とは別のダンジョンに行ったりしていたみたいだ。
「レビンさん、何かあったんですか?」
ニールが心配そうに声を掛けてきた。
俺は無理やり笑顔を作り
「何でもない。」
そう言って稽古に戻った。
俺の悩みを他人に話せば少しは楽になるのだろうか。
しかし、内容が内容だ。
下手をすればモンス多―に肩入れをしていると思われる可能性がある。
今の生活は奴隷とはいえ決して悪いものではない。
これが壊れてしまう位なら…黙っていたほうがましだ。
自分にそう言い聞かせ稽古に打ち込んだ。
最近、このキザキ商館では奴隷を買うことはあっても売ることが行われていない。
元々、キザキは奴隷に教育、訓練を行うことによって他の奴隷商館との差別化を図っていた。
さらにレンタル奴隷を行うことにより戦闘要員、非戦闘要員共に現場での実戦経験を得てさらに奴隷たちは能力を伸ばしている。
結果、奴隷としての価値は爆発的に上がり購入金額は並みの貴族では手が出ないほど跳ね上がっていた。
その為、買う位ならレンタルしたほうが良いという顧客が増えた。
依頼量も以前に比べたら格段に増えている。
今日もレンタル奴隷の依頼で一人の客がキザキ商館に訪れた。
ユキナが応接室に案内しキザキとの面会が行われた。
しばらく話し合いが行われ客は帰った。
「レビン、ニール!」
キザキが俺たちを呼んだ。
応接室に入るとキザキが疲れた顔をしていた。
「どうしたんですか?」
俺が聞くと
「今来た客だが、実は国王の側近だ。国王から直接の依頼を持ってきた。」
「国王から直接?」
俺とニールは顔を見合わせた。
「内容は?」
俺が聞くと
「先日、西の洞窟での勇者候補がやられた事により西のダンジョンが危険であることは判明した。そこで残りの北・南・東のダンジョンの状況確認を依頼したいとのことだ。もちろん冒険者も複数派遣する予定との事。」
「冒険者がそれだけいるなら何故商館にまで声が掛かったんですか?」
「レビン、お前が西のダンジョンから2度も無事に生還したことにより国王はお前に特別な何かがあるのではないかと思っているようだ。それでお前だけは名指しでの指名だ。」
この何かがあるとかどういう事だろうか?
まさか、何度も生還したことでモンスターとの繋がりがあると誤解されたのか、それとも運の強さのことを言っているのか…。
一抹の不安を覚えながら応接室を出た。
「国王から直接の依頼って…大事ですね。」
俺は無言で頷いた。
「でも、レビンさんと一緒に依頼に行くのは本当に久しぶりなので楽しみです!僕もたくさん訓練してダンジョンにも行って経験を積みましたので役に立って見せます!」
無邪気なニールの笑顔を見てまた複雑な感情が込み上げてきた。
数週間後、東の街ヒデンの町はずれで集合がかかった。
ヒデンの冒険者ギルドから集められた冒険者たちが大勢集まっていた。
その輪の外に俺とニールは座り、装備品の手入れを行っていた。
冒険者たちは外巻きに俺たちの様子を伺っていた。
キザキ商館のレンタル奴隷に関しては王都を中心に噂が広まっていた。
俺に至っては西のダンジョンから2度も生還した猛者という噂があるらしい。
実際は2回とも四天王メディウスに逃がしてもらっただけなのだが。
一つの冒険者パーティーが声をかけてきた。
「お前らだろ?奴隷なのに冒険者気取りで調子に乗ってる奴らってのは。」
あからさまに喧嘩腰の男に俺は
「冒険者のつもりも調子に乗ってるつもりもありません。」
と、答えた。
正直今は他人と話をする気にならない。
「そういう態度が調子に乗ってるって言うんだよ!奴隷のくせに!」
もうこういう輩は慣れたもんである。
俺は無視して武器の手入れを続けた。
「言いがかりはやめてください!」
ニールが怒りの表情を浮かべ言った。
「お前も奴隷だろ?冒険者ごっこで調子に乗ったのか?」
男が言うとパーティーメンバーが声を出して笑った。
「僕たちだって何度もダンジョンに潜ってモンスターと戦ったことがあります。馬鹿にされる筋合いはありません!」
怒りが収まらないニールは男に食い下がった。
「それが冒険者ぶってるって言うんだろ?クソガキが。」
もうこの何の意味も無い会話に嫌気が差し俺は口を開いた。
「あなた方が馬鹿にしている冒険者気取りの奴隷ですけど今回は国王からの勅命で来ました。それでもあなたはまだ何か言うつもりですか?」
「国王様から?う、嘘に決まってるだろ!」
「信じるか信じないかはどうでもいいです。ただ本当だった場合あなたは国王の判断に異を唱える形になりますけど。」
そう言うと男は舌打ちをしてパーティーとその場を去った。
「ニール、いちいち相手にするな。」
俺が言うと
「でもレビンさん…。悔しいですよ。僕たちが奴隷っていうだけでこんな扱いを受けるなんて…。同じ人間なのに…。」
「キザキさんのお陰で俺たちはいい環境にいさせて貰えてるから勘違いしてるかもしれないけど俺たちはあくまで奴隷だから。本当に過酷な環境にいる人もたくさんいる。その事を忘れるなよ?」
「奴隷だから何を言われても仕方ないと?」
「奴隷になったっていうのはそういう事なんだよ。少なくともこの国では…。」
納得のいかないという表情を浮かべてニールは装備の手入れに戻った。
同じ人間なのに…か…。
同じ人間でも格差がついて差別が生まれ攻撃対象になる…。
人間とモンスターについて考えている俺にとっては余計気が重くなった。
しばらくするとこの冒険者たちを纏めるリーダーのクロエが指揮を取り東のダンジョンに向けて出発した。
道中、クロエが俺とニールに声を掛けてきた。
「さっきはすまなかったね。あいつら見慣れない者を見るとすぐに突っかかるところがあってギルドでも問題児扱いされてるんだ。つまり子供なんだよ。」
笑いながらクロエは言った。
「あ、私はクロエ、今回の冒険者パーティー全体の指揮を任されている。君たちのことはギルドマスターから話は聞いているよ。ダンジョン経験はあるみたいだけど基本的には戦闘は私たちに任せて欲しい。」
「僕たちだって戦えます!あ、僕はニールと言います。こちらはレビンさん。特に僕は東のダンジョンは何度も行ったことがありますので自信があります。」
先ほどのことが悔しかったのだろう。
ニールにしては相当強気にクロエにアピールしている。
「はは、わかったよ、ニール。君がレビン君か。話は聞いているよ。」
クロエが俺のほうを真っ直ぐ見た。
「突然で申し訳ないけど一つだけ確認させて貰ってもいいかな?」
「何ですか?」
俺が聞き返す。
「君は魔王軍と繋がっているのかな?」
本当に突然の質問だった。
「な、何を言って…。」
ニールが声を出そうとするとクロエは手で制した。
「西のダンジョンでの話は有名な話だ。2回も一人で脱出に成功している。これはまぐれで済む話じゃない。」
気付けばクロエは鋭い目でこちらを見ていた。
「魔王軍との繋がりはありません。二度とも魔王軍四天王に何故か興味を持たれて逃がして貰っただけです。その際に、何か情報を渡したとかこれから情報を渡すなどの約束はしていません。」
俺はありのまま話した。
鋭い目のままクロエが俺を見ている。
どの位経っただろう。
クロエの表情がふっと緩み笑顔になった。
「わかった。信じよう。私は人を見る目があるつもりだ。自分を信じるとするよ。」
笑いながら集団の先頭に向けて歩き出した。
俺は大きく息を吐いた。
あのクロエという冒険者、かなりの手練れだ。
今の会話の間、いつでもこちらを攻撃できる状態を維持していた。
少しでも誤魔化しなどをしていたら首が飛んでいたかもしれない。
「大丈夫ですか?」
ニールが声を掛けてきた。
ニールも何かを察したのだろう。
顔色が悪かった。
ニールの肩を叩き冒険者パーティーの最後尾についていった。
東のダンジョンに到着した。
クロエが各パーティーに指示を出し最終確認を行っている。
俺たちはメインでは戦わず荷物運び、怪我人の手当てや後方の安全確認などを任された。
ニールは不満そうな顔をしているが俺としてはモンスターと戦わずに済むのはありがたかった。
今この思考状態で戦うのは危険過ぎる。
冒険者パーティーたちは今回数も多いので順調にダンジョンを進んでいった。
モンスターの屍を見ると気分が悪くなったりもしたが俺たちもついていった。
西のダンジョンに比べモンスターの数が少なくかなり余裕をもって進んでいることに違和感を覚え俺はニールに尋ねた。
「東のダンジョンはいつもこの位のモンスターしか出ないのか?」
「いえ、今日は特に少ないですね…。」
ニールも違和感を感じているようだ。
「やっぱり君たちもそう感じるかい?」
いつの間にかクロエが横に立っていた。
「あまりに手ごたえが無さ過ぎるね。私も前に来た事があるけどもっとモンスターの量も質も段違いだった覚えがあるよ。」
「ちょっと慎重に行った方がいいかもしれませんね。」
そこでかなり大きな物音がした。
俺とニール、クロエのパーティーと他数名の前に突然壁が現れた。
「しまった!」
クロエが舌打ちをした。
「かなりダンジョンをスムーズに進めてしまっていたので隊列が間延びしていたんだ。そこを狙われた。」
ニールとクロエのパーティーの魔法使いが魔法を撃つが壁はビクともしない。
何とか開けようとクロエ、俺も壁を破壊しようと攻撃したがどうにもならなかった。
しばらく何とかしようとしたがどうにもできず、一旦引き返すことも検討したが突然目の前の壁が消えた。
「な、何だ?」
奥を見ようとしたが暗くて見えない。
「慎重に進むぞ。」
クロエが先頭を歩き出した。
ニールが明かりをつけクロエと俺の後ろを歩く。
暫く歩くと鉄のような匂いがした。
先を行っていた冒険者たちの無惨な死体が周り中に転がっていた。
ほとんど原型を留めていない物もあった。
後ろを向いてニールが吐いた。
クロエと俺は集中を切らさず周囲を見渡した。
モンスターの姿は無く奥に扉が見えた。
「クロエさん、どうしますか?俺は退くことをお勧めします。」
俺が言うと、
「私もそれが正解だと思う…。」
引きつった笑顔でクロエは答えた。
「しかし、今から戻ったとしてもこのメンバーだけで無事脱出できる可能性はあまり高くない…。それどころか始めから罠だったとしたら帰りの待ち伏せもあると考えた方がいいだろう。」
確かにクロエの言う通りだ。
この惨状を見てニールはもちろんクロエのパーティーも戦意が無くなっている。
「それとこれは私の単純なわがままだが、この扉の先にいる者に興味がある。」
「西のダンジョンではこういう扉の先に四天王がいましたよ…。」
俺が言うとクロエは笑顔を作り
「なら尚更だ。アミー!」
クロエのパーティーの神官はビクっと体を震わせた。
「パーティー全員を連れてターンを使って脱出しろ!私をパーティーから外してニール君を加えてくれ。」
「ありがとうございます。」
俺はクロエに礼を言った。
ターンはダンジョンからの脱出魔法でパーティー全体に効果がある。
ただし、人数制限があり、今回クロエが自分が脱出できるにも関わらずニールに譲ってくれたのだ。
「クロエさん!レビンさん!」
ニールの声が聞こえた瞬間ターンによりクロエと俺以外の姿が消えた。
「さぁ、中に入ろうか…。」
クロエが言った。
扉を開けるとかなり広い部屋が広がっていた。
更に奥に扉が見える。
「あの状況で入ってくるとは己の強さを信じるが故か?それとも阿呆か?」
急に正面に強い気配が現れた。
クロエと俺が身構えると、正面に現れた気配は姿を現した。
角の生えた女性…に見えるが人間とは明らかに違う。
何より立っているだけなのに逃げ出したくなるこのプレッシャーは何だ?
「な、何者だ…?」
クロエが掠れた声で尋ねた。
「我は魔王軍四天王の一人シーザー。お前らはこのダンジョンに何をしに来た?」
シーザーはゆっくり歩いて近づきながら聞いた。
「私は…」
クロエが口を開こうとした瞬間、吹き飛ばされた。
俺には何をされたのかわからなかった。
クロエは固い洞窟の壁にめり込み血を吐いた。
「すまん。聞いてはみたが興味は無かった。許せ。」
そう言い、シーザーはクロエのもとに近づいた。
「我は人間が嫌いだ。だから殺す。」
表情も変えずクロエを投げ飛ばした。
「ぐぁーっ!」
クロエが激痛に声をあげる。
「うるさいな…。死ね。」
シーザーの手に黒い光が集まった。
「待て!」
俺が声をあげるとシーザーの手から光が消えた。
こちらを振り向き今度はこちらに歩いてきた。
「順番が待てないのか?お前からでもいいんだぞ?」
優しさすら感じる声で語りかけながらシーザーが向かってくる。
俺は話し合いをしたかったが先ほどのクロエの話を聞かなかったことから聞く耳を持たないだろう。
俺は覚悟を決め持ってきた剣を構えた。
「抵抗するか?そんな武器で。」
笑みを浮かべながらシーザーが更に向かってきた。
これは死ぬな…。
俺は覚悟を決めた。
気付くと目の前にシーザーの拳が見え、その腕を誰かが抑えていた。
「何のつもりだ?メディウス…。」
シーザーが聞いた。
「一度話を聞け。」
メディウスがシーザーに言った。
確かにメディウスの声だった。
西のダンジョンで会ったときは姿がはっきりしなかったが今目の前のメディウスははっきりと見える。
大柄でシーザーと同じように頭から角が生えておりこちらは男性に見える。
「何故止める?」
シーザーがメディウスの腕を振り払い下がった。
「この男は私の観察対象だ。」
「こいつが?だが、私には関係ない。こいつも人間だ。」
シーザーは俺を睨みつけた。
「すまんなレビン。シーザーは人間が本当に嫌いでな。」
「何故そんなに人間を嫌うのですか?」
俺が聞くとシーザーがまた俺に向かって攻撃をしてきた。
メディウスがそれを華麗に捌いた。
「邪魔だ!メディウス!」
メディウスは何か魔法を使いシーザーを拘束した。
「メディウス!貴様ー!」
暴れるが拘束は解けない。
メディウスが俺に近づいてきた。
俺は思わず身構えた。
「構えなくて大丈夫。私に攻撃する意志は無い。」
メディウスが無感情に言った。
「奴が人間を嫌うのには理由があってな。以前魔王軍と勇者との戦いがあったのは知っているな?」
「はい、古い言い伝えですよね。」
「人間にどういう風に伝わっているか知らないが私たちはその頃から生きていて実際勇者とも戦ったことがある。」
「あれって古い話しですよね?」
「人間とは寿命が違うからな。確かに私たちはあの頃勇者と戦い敗れた。魔王様を勇者に討ち取られのだ。」
メディウスが急に話しだしたので何事かと思った。
「何の話ですか?」
俺が聞くと
「シーザーに関することだ。」
メディウスが答えた。
「余計な事を言うな!メディウス!」
シーザーが暴れながら怒鳴る。
「魔王様が討ち取られたあと我々四天王は死ぬつもりだった。主君を守れず生き永らえる事に耐えられなかった。しかし、魔王様に止められた。死ぬことは許さないと。自分がまた復活するまで人間の動向を見守ることを命令されたのだ。」
「人間の動向?」
「そうだ。私たちは理解は出来なかったが魔王様の命令なので見守った。勇者は魔王様を討ったあと王国に戻った。王国は大いに盛り上がっていた。我々は歯がゆい思いで見ていた。何故魔王様はこんな光景を我々に見せたのか…。」
それはそうだ。
人間側には勇者の英雄譚だが魔王軍からすれば悲劇でしかない。
「それから数年後の事だ。勇者は死んだ。」
「え?」
俺は驚きを隠せなかった。
「殺されたのだ。同じ人間にな。我々魔王軍という大きな敵がいなくなった事により勇者は必要無くなったのだ。むしろ正義感が強く強力な力を持っている存在を疎ましく思う者が少なくなかった。あれだけ英雄と祭りあげておいて必要無くなったら殺す。人間とは本当に不思議な生き物だと思ったよ。」
俺は動揺を隠せなかった。
確か人間に伝わる英雄譚では王国で祝われてその後幸せに暮らしたというところで終わっている。
その頃から生きている人間などいないからその後の話など知っている者などいない。
そんな…勇者が殺されたなんて…。
「シーザーも私と同じくその現場を見ていた。勇者とは対立関係にあったが最後まで戦った相手だ。主君でもある魔王様に討ち勝った実力など認めている。それが人間の都合で…しかも人間の為に戦った人間を欲望の為に殺した。それがシーザーはずっと許せず人間を憎んでいるんだ。」
シーザーはすでに暴れておらず大人しくしていた。
「シーザー。このレビンは私の観察対象と言ったな。その理由についてなんだが…。」
メディウスが俺と初めて会った時と2回目に会った時の話をした。
俺が人間と魔王軍との戦いに疑問を持っていることについて話しをするとシーザーは何かを考え込んでいた。
「レビン。」
メディウスが俺に声を掛けた。
「今はこれ以上の話をしてもシーザーもまともに話しはできないだろう。我々も一旦去らせてもらう。しかし今日会ってやはりお前は何かを持っていることを確信した。我々の脅威となるのか?それとも全く新しい道を作る者なのか…。」
前にもメディウスは似たような事を言っていた。
「私の勘はよく当たるんだ。その直感を信じて今までの件も含めて魔王様に報告する。それを踏まえてまた話をするぞ。」
「メディウス!貴様勝手に…。」
シーザーが我に返り慌てて言った。
「シーザー。お前も何か感じたから私の話を聞いたのではないか?」
「……。」
シーザーが黙り込んだ。
「レビン、西のダンジョンにまた来い。お前の信用できる者だけを連れてな。」
そう言うと目の前からメディウスとシーザーが消えた。
残ったのは気絶したクロエだけだった。
クロエを担いで俺はダンジョンを出た。
またメディウスのお陰なのか、モンスターなどに襲われることもなかった。
ダンジョンを出るとニール達が再びダンジョンに戻ろうとするところだった。
「無事だったんですか?」
ニールが驚いた表情でこちらを見ている。
「無事…とは言えないな。クロエの傷が酷い。応急手当を頼む。その後すぐに街に戻るぞ。」
そう言ってクロエのパーティーにクロエの応急処置を任せそこで一晩休むことにした。
夜のモンスターの襲撃に備え俺は見張り役を買って出た。
皆には休むよう言われたがとても眠れる気がしなかった。
夜中の間考えたが何一つ纏まらなかった。
英雄譚のまさかの悲劇的展開、人間と魔王軍の戦いの意味…。
翌日俺たちは街に戻った。
これからの事についてもっと考える必要がありそうだ。
まず相談すべきは…。