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再び西のダンジョンへ

前回王都で起きていた行方不明事件、奴隷商人とその一味が犯人という事で一旦幕を閉じたがまだまだ闇は深そうだ。キザキの商館へ戻ってきた俺たちだが俺への客が来たという報告を受けた。一体どんな客が来たのだろうか?そしてまたダンジョンへ行くことに…。

 王都から戻って数日が経った。

俺たちは日常に戻っていた。

王都は毎日がお祭りのような騒ぎであれはあれで楽しかったがやはりこの商館が落ち着く。

今日も戦闘要員は訓練を行っている。

俺は街の仕事に向かうことになっている。

訓練中のニールに手を振り廊下を歩いているとユキナが洗濯物を持って歩いてきた。

「おはようございます。」

声を掛けるとボーっとした表情で通り過ぎる。

「ユキナさん?」

はっとしてユキナが振り返った。

「あ、レビンさん!おはようございます!」

いつもの笑顔を見せてくれた。

「考え事ですか?」

「べ、別に!何でもないです!」

そう言って廊下の奥へ行ってしまった。

王都では恐い思いをしたからまだ少し残ってるのかな…。

そんな事を考えながら商館を出た。

今日は土木作業の仕事だ。

現場は商館から近くすぐに現地に着いた。

「おはようございます!」

俺が声を掛けると現場監督のポールがこちらを向いた。

「おう、レビン!来てくれたか!」

「はい、よろしくお願いします。」

俺はポールの指示で作業に入った。

もうこの現場での作業は何度も行っているので問題なく作業を行っていく。

「レビンが奴隷じゃなければな~。俺のとこで働いて貰いたい位だよ。」

ポールが俺に聞こえるように言った。

俺は苦笑いを見せた。

そういえば忘れていたけど俺は一体いつまで奴隷を続けるんだろう…。

今度キザキさんに聞いてみよう。

俺が荷物を運んでいると後ろから声を掛けられた。

「兄ちゃん、ちょっといいか?」

振り向くと冒険者らしき数人が立っていた。

「ここにレビンって奴隷がいるらしいんだけどどいつだ?」

「俺です。」

答えると男の目つきが鋭くなった。

「お前がレビンか。俺はモンス。南のミヅキで冒険者をやってるんだ。」

「はぁ…。」

俺は興味無さそうに返事をした。

「お前西のダンジョンで魔王四天王に会ったんだよな?」

「そんな事もありましたね。」

「よし!お前俺たちの道案内をしろ!」

「嫌です。」

「はぁ?」

モンスが驚いた顔をしている。

「俺は奴隷なのでそういう依頼があるならキザキ商館に行ってください。俺じゃ決められません。」

俺がそういうとモンスは苛立った態度を見せた。

「お前、奴隷の癖に生意気だな…。わかった。キザキ商館だな?お前の事をこき使ってやるよ。」

笑みを浮かべながらモンスと仲間は去っていった。

「だ、大丈夫なのか?レビン?」

ポールが心配そうに俺の傍に来た。

「何がですか?」

「いや、今の冒険者の事だよ。今キザキ商館はレンタル奴隷をやっているんだろう?無理難題を言われるんじゃないか?」

「大丈夫ですよ。キザキさんがいますもん。」

「信頼しているんだね!」

「はい、本当にお世話になっているので…。」

奴隷でなくなったらキザキ達との縁は切れてしまうのだろうか…。

ふと寂しい気持ちになった。

 今日の作業が一通り終わり商館に戻ってきた。

「ただいまー。」

俺が声をかけるとユキナが小走りで近づいてきた。

「おかえりなさい、レビンさん。今ちょうどお客様が来てるんです。」

まさか昼間の奴らじゃないだろうな…。

一抹の不安を覚えた。

自室に戻り着替えていると再びユキナが来た。

「レビンさん、キザキさんがお呼びです。」

俺は応接室に向かった。

あいつらだったら面倒臭いな…。

そんな事を考えながら部屋に入ると見知らぬ顔がそこにはいた。

「こちらがレビンです。」

キザキが俺を紹介し俺は頭を下げた。

「初めまして。私はミヅキから来た冒険者のエドと申します。」

エドは丁寧に頭を下げた。

「初めましてレビンです。」

「先日伺った際は不在だったようなので改めて今日は君にお願いしたいことがありまして来ました。」

前に俺宛てにきた客というのはこの人か…。

キザキが俺に事情を説明する。

西のダンジョンの四天王に会った俺に道案内をお願いしたいという事だ。

そんなに噂になってるのか?

俺が考えていると

「何かあったのか?」

キザキが俺に聞いてきたので昼間のモンスの話をした。

「恥ずかしながら知り合いです。」

エドが申し訳なさそうに言った。

「どういう関係なんですか?」

キザキが訊ねると

「一応、同じ冒険者ギルドに所属していまして周りからはライバル関係と見られています。」

「周りからはというと?」

キザキが訊ねる。

「正直モンスたちのパーティーはそこら辺のチンピラと変わりません。一緒にされるのはたまらないですね。」

エドが苦笑いを浮かべる。

「そういえば俺も昼間声を掛けられて自分じゃ判断できないって言ったら商館に行くと言ってましたが来てませんか?」

「来てないぞ。」

「関わらないに越したことはないですよ。」

エドが言った。

「それで道案内の件、どうでしょうか?」

エドが聞いてきた。

キザキは俺の顔を見てどうだ?と目で聞いてきた。

「昼間の連中と違ってエドさんは常識のある方だと思います。ですが私はダンジョンで四天王に命を救われました。ですので正直戦いたくないです。」

「それでもモンスターですよ?悪のきまぐれで助けられたかもしれませんがモンスターは倒すべき敵です!」

エドが強い口調で言ってきた。

「それでもです…。命を救われたことに変わりはありません。」

「そうですか…。では、道案内だけでもお願いできますか?」

そこでキザキが割って入った。

「わかりました。お互いの言い分を尊重してレビンは戦闘に参加しない。しかし道案内はするという事でよろしいでしょうか?」

「わかりました。それで結構です。」

「では出発は明日、商館前でよろしいですか?」

「構いません。」

エドが言い扉から出て行った。

「お前も頑固だな。」

キザキが笑いながら言った。

「しかし、あまり助けられたから戦いたくないというのはな…。下手をすればモンスターと繋がりがあると思われかねんぞ?」

「言いたいことは分かります。でも…どうしてもそこまで凶悪なモンスターだと思えないんです。」

「まぁいい。明日に備えて準備をして休め。」

俺は応接室から出た。

外にはユキナが洗濯物を持って通りかかった。

「レビンさん。大丈夫でしたか?」

心配そうに見上げるユキナ。

「大丈夫ですよ。明日西のダンジョンに行くことになりました。」

「え?またですか?」

ユキナが眉をひそめる。

「前にあれだけ酷い目に遭ったのに…。」

「大丈夫ですよ。今回は道案内だけなので。」

「そうですか…。でも本当に気を付けてくださいね?」

「ありがとうございます。」

そう言って自室に戻った。

 翌日、商館の前でエドと合流した。

「では、よろしく。」

エドが笑顔で言った。

パーティーメンバーは戦士のエドがリーダーで武闘家のダン、魔法使いのリース、神官のメンスの四人パーティーだ。

それぞれ自己紹介をして早速西の街ヒデンに向かうことにした。

ヒデンでパーティーの装備準備をして翌日ダンジョンへ向かう。

ヒデンに向かう途中パーティーの活動を聞いたのだがエドは勇者候補にあがるほどの腕前らしい。

このパーティー自体かなり有名らしくドラゴン討伐なども行ったことがあるらしい。

昨日出会ったモンス達については昨日エドが言っていた通りほとんどチンピラでたちが悪いらしい。依頼があれば強盗、傷害なんでもやるという。

「そもそもそんな依頼がギルドに来るんですか?」

俺が聞くとエドは渋い顔で答えた。

「表立っては言えないけどギルドも貴族たちからの依頼は断り切れないものもあるらしくてね…。」

なるほど。

圧力を掛けられているのだろう。

どんなことでもしがらみはあるのだろう。

そんな話をしているとヒデンに到着した。

ヒデンで買い物をしていると路地裏から悲鳴のような声が聞こえた。

「何か聞こえました。」

そう言って俺は路地裏に走り出した。

「お、おい!」

エドが後ろをついてくる。

少し走ると複数の男同士の喧嘩のようだ。

片方は数人地面にうずくまり、一人は胸倉を掴まれていた。

「モンス!」

エドが叫んだ。

「何だ、エドか。」

ニヤニヤしながらモンスは男から手を離した。

「ミヅキの英雄様がこんなところで何をしているんだよ?」

「その人たちは?」

エドが聞いた。

「こいつら?こいつらは西の冒険者らしいぜ。俺たちの事を知らないっていうから教えてやってたのよ。」

本当に不愉快な奴らだ。

「やり過ぎだろ。」

「上品なエド様には目に毒だったかな?」

モンスと仲間たちが笑っている。

「もう気は済んだろ?早く行けよ。」

俺が言うと

「お前は昨日の…。エドについたのか。精々お前も気を付けるんだな。」

そう言ってモンス達は大通り方面へ向かった。

俺たちは怪我人を病院に担ぎ込み買い物の続きに出た。

「すまなかったな。レビン。」

エドが謝罪してきた。

「エドは何も悪くないだろ。」

俺が言うと

「同じミヅキ出身の者として恥ずかしい。」

悔しそうに言った。

その後仲間と合流し宿屋へ入った。

夕食で明日のダンジョン攻略に向けての打ち合わせを行った。

やはり優秀なパーティーのようで細かい状況も想定して作戦を立てている。

リースが途中で部屋に忘れ物をしたらしく取りに行った。

ダンは作戦会議に飽きてきたのか眠そうにしている。

エドとメンスが真剣に打ち合わせを続けていたがリースの戻りが遅いので俺とエドで様子を見にいくことにした。

リースの部屋はもぬけの殻となっており窓が空いていた。

外を見ると真新しい足跡がしっかりと残っている。

ダンとメンスを呼び急いで俺たちは足跡を追った。

そこには一軒の倉庫のような建物があった。

扉を開けると案の定モンスたちが待っていた。

「よう、早かったな。」

モンスがニヤニヤしながらこちらを見ている。

「リースを返せ!」

エドが叫ぶ。

モンスがリースを地面に放った。

気絶させられているようだ。

部屋の奥からモンスの仲間も出てきた。

「動くなよ?こいつを殺すぞ?」

モンスがリースの頭に足を置いた。

「卑怯だぞ。」

「卑怯で結構。俺は昔からお前が嫌いなんだ。何かと騒がれやがって目障りなんだよ。」

「どうして欲しいんだ?」

「エド、お前はこっちへ来い。抵抗するなよ?」

エドがモンスのほうへ歩いていく。

エドはいきなり走り出しエドを殴った。

「ぐぅ…。」

エドが口から血を吐きながらよろめく。

なおもモンスの攻撃は止まらない。

「いい気味だな!ここで死んどけよ!」

「エドさん、もう大丈夫ですよ。」

俺が声を掛けた。

全員が俺の方を振り向く。

俺はリースをおぶり一番後ろへ下がった。

「な?いつの間に?」

困惑した表情を浮かべるモンス。

エドがモンスの顔面に一撃を入れる。

乱闘が始まった。俺は神官のメンスにリースの回復をお願いをして一旦全体を見た。

ダンはモンスの仲間と戦ているがこちらは問題無さそうだ。

問題はエドだ。

最初ノーガードで貰った一撃が思ったより強烈だったらしい。

反撃はしているが足に力が入っていないらしく軽い。

モンスは流石というべきかまだ力を残している様子だ。

俺はモンスに一直線に向かい脇腹に一撃を入れた。

「ぐぁ…。」

モンスが呻き声をあげて倒れ込んだ。

これで終わりかな…

俺が離れようとするとエドがモンスの頭を蹴飛ばした。

呻き声をあげて吹っ飛んだモンスを更に攻撃を続ける。

「エドさん、それ以上は死ぬぞ?」

俺はエドを羽交い絞めにして抑えつけた。

「こいつは仲間を殺そうとした!許せない!殺されても文句は言えないだろう!」

なお暴れるエドの首を軽く締めて気絶させた。

その様子をモンスの仲間とダンがぽかんと見ている。

「この喧嘩は終わりだ!」

俺が大声を出すと身を震わせモンスの部下はモンスを担いで逃げて行った。

「戻りましょう。」

俺はパーティーに声を掛けると皆頷き宿屋に戻った。

 昨夜の襲撃のせいでダンジョンへの出発日が一日遅れた。

エドとリースの治療をメンスが行っている。

「あんた一体何者なんだ?」

「ただの奴隷です。」

ダンの質問に俺は答えた。

「いや、強さが尋常じゃないんだよ。奴隷になる前は何をやってたんだ?」

「実は…。」

俺は記憶が無いことを話した。

「本当にそういう事ってあるんだな。お前も苦労してるんだな。」

ダンは同情の目を俺に向けた。

これ以外知らないのだから自分を不幸と思ったことはあまりない。

そんな目を向けられるのは余計なお世話だ。

しばらくするとエドが目を覚ました。

「昨日は済まなかった。」

「悪いのはモンスですよ。」

俺は答えた。

リースも意識を戻し順調に回復した。

「じゃあ、今度こそ明日ダンジョンへ向かうぞ。」

そう言って全員宿屋で休んだ。

翌日、俺たちはダンジョン前で作戦の最終確認を行った。

「準備はいいな?行くぞ!」

エドの合図でダンジョンへ入った。

入口すぐでモンスターを発見した。

こちらに気づいていない様子だ。

そこにリースの炎の魔法が襲い掛かった。

慌てたモンスターはこちらに向かって襲い掛かってきた。

エドとダンが簡単にモンスターを仕留めた。

「よし、上々だな。」

エドが笑顔を見せる。

「何で今いきなり攻撃したんですか?」

俺の質問にパーティー全員が不思議そうな顔をしている。

「どういうことだ?」

ダンが聞いてきた。

「向こう気づいてないなら戦わないで先に進めばいいんじゃないですか?」

「それだとあとで後ろから襲われるかもしれないだろ?」

「そうですか…。」

「それに経験値にもなるからな。」

意味も無くモンスターを倒しているようにしか見えない。

俺がおかしいのだろうか…。

その後もダンジョンを進みモンスターを討伐しながら進んだ。

本当にいいパーティーだ。

連携もしっかりしていてリーダーのエドの指示が的確だ。

本当に効率よくモンスターを倒している。

更に奥へ進むと狼型のモンスターが現れた。

スピードのあるモンスターで油断はできない。

群れをなして襲ってくることが多いが今回2匹しかいない。

あっさりとモンスターを倒した。

「なんか珍しいですね。このモンスターが群れてないの。」

俺が言うと

「まぁ、たまにはあるんじゃないですか?」

エドが答える。

「おい。」

ダンが皆を呼んだ。

皆で集まるとそこには先ほどの狼型モンスターの子供がいた。

「こいつを守ってたのか…。」

俺が呟くとダンが子供の狼を持ち首の骨を折った。

「え?」

あまりのことに俺は固まってしまった。

「何してるんですか?」

「ああ、今後の為にな。」

何事も無かったかのようにダンは死体を捨てた。

「今後って…?」

「だからこいつが大人になったらまた人を襲うだろ?そうならない為にもな。」

あまりにも理不尽な事を言っているのではないかと思った。

気分が悪くなり俺は通路の端で吐いてしまった。

「そのうち慣れるよ。」

エドの言葉に一層気分が悪くなった。

更にしばらく進んだ先で大きな扉を見つけた。

「ここです。」

俺がエドに伝えた。

「わかった。道案内ありがとう。君はここで待っていてくれ。君は助けて貰ったことを恩義に感じているようだしね。」

俺は扉の外で待つことにした。

「行くぞ!」

エドの合図でパーティーが扉の中に入っていった。

俺は先ほどの件を思い出していた。

あれがモンスターではなく例えば人間同士の戦争だったら…。

相手の子供まで殺すのか?

戦争だから仕方ないのか?

そもそも相手の領域であるダンジョンに足を踏み入れたのはこっちだ。

それでモンスターを殺し先に進む。

理由が経験値稼ぎと資源などの回収…。

領域を侵害しているのはどっちなんだ?

考えれば考えるほど訳がわからなくなってきた。

ドーーーーーン!

扉の中から爆発音がした。

そして静寂が響く。

俺は扉を開いた。

そこには先ほどまで一緒にダンジョンを探索していた者たちが無惨に焼け焦げて死んでいた。

「お前か…。」

魔王軍四天王メディウスが声を掛けてきた。

「以前は助けて頂きありがとうございました。」

俺が頭を下げる。

「仲間がやられたのにお前は怒らないのか。」

「仲間というか…道案内を頼まれて来ただけなので。それに彼らは自分からこのダンジョンに来てモンスターと戦いました。その結果あなたにやられただけです。」

「冷静なのだな…。」

「冷静というか…正直よくわからなくなってきました。人間は魔王軍が悪だと言い何も考えずにそう信じています。でも俺から見ると今回は人間が魔王軍を襲ったように見えました。」

「…。」

「それをメディウスさんが返り討ちにした…。ただそれだけです。」

「それがお前の考えか?」

「…はい。俺も彼らと来たのである意味共犯者です。ここまでの道案内もしました。あなたに殺されても文句は言えません。」

「お前は面白い人間だな。」

メディウスは笑い声をあげた。

「とっとと帰るがいい。また機会があったら会えるだろう。」

メディウスはそう言って後ろを向いた。

「あ、俺名前を貰いました。レビンです。」

「レビンか。覚えておこう。」

笑いながらメディウスは消えて行った。

 その後俺はエド達の遺品を回収しダンジョンから脱出した。

またメディウスのお陰だろうか、モンスターに襲われることは無かった。

俺は街へ戻り宿屋に泊まった。

この宿でエドたちと過ごしたことを思い出しダンジョンでの事も考えていたら疲労からだろうかすぐに眠りについた。

翌日朝一番にヒデンを出発しキザキの商館に着いたのは昼過ぎだった。

「ただいま。」

俺は商館のドアを開け中に入るとキザキとユキナが出迎えてくれた。

そのまま応接室に移動し今回のダンジョンでの出来事を話した。

話をしている時ユキナは真っ青になって聞いていた。

「では、また四天王に見逃されたということか?」

「はい。」

俺は答えた。

キザキがしばらく考え込んでから口を開いた。

「ミヅキの冒険者たちの件は私がギルドに話しを通そう。その時に遺品なども渡しておく。」

「ありがとうございます。」

「恐らくまた王都にも行くことになるだろう。それまでゆっくり休むとよい。その間あまり悩み過ぎないように。」

キザキが俺を気遣ってくれた。

部屋に戻ろうとするとユキナに呼び止められた。

「レビンさん…。本当に無事でよかった。でもそれよりレビンさんが考えすぎて壊れてしまわないか心配です。」

ユキナは下を向きながら言った。

「本当に辛くなったら話を聞いてください。」

俺は弱々しい笑顔を浮かべ自室に戻った。

ベッドの上に倒れ込むとヒデンでの出来事とダンジョンでの出来事が一気に押し寄せてくる。

もう俺一人では抱えきれない想いが胸にあった。

相談するにも相手を選ばないと魔王軍に通じてると思われてしまう。

今度王都で報告をする前に頭を整理しないと…。

俺は目を閉じた。


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