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共存会談への道

 ルーベル邸に到着した俺たちは一旦各自用意された部屋に行き休憩することになった。

実際会った魔王ウルクの印象は恐ろしいほどの力を持っているものの、人間との共存には前向きに…というよりも俺たちよりも深く考えてくれている印象だった。

前世の俺との戦いを経て生まれ変わり偶然とはいえ俺がモンスターとほぼ戦う事なくここまで来た。

結果的に以前の魔王が呈した苦言をクリアする形で会えたのが大きいだろう。

そして、魔王の力によって俺は前世で経験したことを見せられた。

結果として魔王軍四天王メディウスの言っていた通りだった。

前世の俺も魔王戦が近くなって共存を考え魔王に打診したが、今までの対立を考えた魔王に却下され戦い。ギリギリの攻防の末、魔王を打ち倒した。

しかし、喜びよりも行き場のないもやもやとした気持ちが大きかった。

国に戻って国王に報告しこれから平和が訪れると考えていたがそう上手くはいかなかった。

魔王討伐後、国の治安維持を任された俺たちは騎士団を設立し貢献したが、仲間と国王たちの裏切りによって毒殺された。

実際記憶を遡っただけとはいえかなり精神的なダメージを受けた。

今生きている俺も奴隷になりたての頃は裏切られることの連続だった。

現在共に行動をしているキザキ、ルーベル、ユキナには絶対の信頼を置いている。

しかし、勇者パーティーで最後まで一緒に戦ったミントの裏切りで死んだ俺は皆を最後まで信用できるだろうか…。

正直自信がない…。

実際会談を行ってもし人間の中に裏切る者がいたら…

会談後共存の約定が制定されたとして人間側で裏切る者が出てしまったら…

ウルクがあれだけ真摯に共存の意見に賛同してくれているからこそその期待を裏切りたくない…

様々な考えが巡り全く休める気がしなくなった。

俺は部屋を出てルーベル邸の中庭に出た。

真ん中にベンチがあるのでそこに腰掛け夜空を見上げた。

雲一つなく星が綺麗に見える。

「共存…信用…か。」

「レビンさん?」

振り向くとユキナが息を切らせて立っていた。

「ユキナさん、どうしたんですか?そんなに急いで。」

「廊下からレビンさんが見えて…かなり表情が暗かったので気になったので追いかけてきました。」

ユキナは息を整えながら笑顔を見せた。

「それより大丈夫ですか?」

俺の独り言が聞こえたのだろう。

「大丈夫…と言いたいところですけどちょっと頭の整理が出来てませんね。」

俺は力の無い笑顔を作った。

「あたしでよければ…話してくれませんか?レビンさんの悩み。」

真剣な表情のユキナは真っ直ぐ俺の目を見てきた。

ユキナになら…

「俺…ウルクに過去を見せられて臆病になってるのかもしれません。人間を信用するのが恐いんです。魔王軍との共存は本気で叶えたいと思っています。でももし…人間側の裏切りがあったら…ウルクに何か仕掛けようとしたら…。ウルクがあれだけ本気で共存を考え会談に応じてくれるという期待を裏切りたくないんです…。」

「今は魔王軍よりも人間側を信用できないって事ですよね…。」

俺は頷いた。

「前世の記憶でパーティーの一人と国王と側近に裏切られて俺は死にました。メディウスが言っていた通りだから間違いないでしょう…。それで…こんな事言いたくないです…言いたくないですけど俺はキザキさん、ルーベル様、そしてユキナさんも信用しきれていない事に気づいてしまいました…。」

俺は俯いて話した。

目の前で信用できないと言われたユキナの顔を見ることができなか新字体

ユキナは黙って話しを聞いている。

「こんな事言われても皆困るのはわかっているんです!でもどうしても頭から離れない…。信じたいのに…本気で信じたいのに…。」

急にユキナが俺を抱きしめてきた。

俺の頭を撫でながらユキナは言った。

「言ってもいいんですよ。本気で思った事を全部話してください。あたしはレビンさんの本音を全部聞きたいんです…。」

ユキナは温かかった。

「俺は…ただ皆が安心して人だけでなく魔王軍も信用できる世界が来て欲しいだけなんです…。幼稚で現実味の無い話しだってわかってます…。それでも諦め切れないんです…。」

涙が出てきた。

「キザキ商館に来てからも何度も仲間と思ってた人から裏切られました。むしろ魔王軍のほうがそれが敵意でも正直に向けてきました。ウルクの事も信用できると思ってます。でも人間は…人間は本当にわからないんです…。もし、共存の会談で何か人間が仕掛けたら…共存後に人間が裏切ったら…そう考えると不安で押し潰されそうになります…。」

もう自分の感情がわからない…

言葉が出て来なくなり沈黙が訪れた。

その間もずっとユキナは俺を抱きしめてくれていた。

「もし…」

ユキナが口を開いた。

「もしレビンさんが一人で抱え込めないなら少なくともあたしには話してください。どんな些細なことでもいいです。」

ユキナの目からも涙が溢れていた。

「あたしは直接見てないからレビンさんの前世で何があったかはわかりません。それに今までレビンさんが経験したことは全部ではないですが聞いているし、見たこともあります。あたしから見ても人間は常に何か裏で考えている人が多くて恐いです。レビンさんが信用出来ない気持ちもわかります。」

ユキナの俺を抱きしめる力が強くなった。

「それでも…それでもあたしの事だけは信用してください!勇者を支える巫女というだけでなくずっとレビンさんを見てきたあたしを…。」

「ユキナさん…。」

「それでももし信用できなかったときはあたしを斬って下さい。」

「それは…。」

「いいんです。レビンさんになら斬られても…。その時は来世でもあたなを好きになって今度こそ結ばれるんです!今後は勇者とか巫女とか関係ないのがいいですね。」

ユキナは涙を溢しながら笑顔を浮かべた。

俺はユキナを抱きしめ大声で泣いた。

「ごめんなさい!いきなりこんな話しをして…信用してるつもりなのに…不安で…」

ユキナは黙って俺を抱きしめ続けてくれた。

 翌朝、部屋を出てロビーに向かうと応接室の扉が開いていた。

俺が入るとすでにルーベルとキザキ、ユキナの3人が待っていた。

「昨日は寝れたか?」

ルーベルが心配そうに声を掛けてきてくれた。

俺はユキナと目が合い昨日の事を思い出し目を逸らした…。

「大丈夫でしょう。」

キザキが何かを察し言った。

「そうか…。では本題に入るか。」

皆が席に座り打ち合わせが始まった。

まずは状況の整理、魔王ウルクは共存に前向きだという事、俺が勇者でユキナが巫女であることの報告、会談時は王都の結界を解除すること、奴隷制度の廃止…。

他にも詳細に関して詰めなければならない。

「まぁ、国王や側近の様子を伺いながらだな…。迂闊に刺激するとどういう行動を取るかわからん連中も多いからな…。」

ルーベルがしかめっ面で言った。

変な気を起こす者がいるというのは皆が抱える不安らしい。

「本来なら国王だけに話したいところだが恐らく側近もいるだろう。我々が魔王軍に洗脳されている可能性も考えるでしょうからね。」

ルーベルもキザキもかなり慎重になっている。

「基本的には儂が話そう。キザキも助力を頼む。レビンとユキナは基本的には喋らないでくれ。何か言いたいことや国王からの質問があった場合は儂かキザキを見ろ。合図を出す。」

賢明だと思う。

真っ直ぐ正直に話し合えれば一番いいがここは交渉や駆け引きに慣れた二人に任せた方がいいだろう。

「では、すぐに出るぞ!」

ルーベルがセオリーの方を向くと頷いた。

屋敷から出ると馬車が止まっておりすでに出発の準備が出来ていた。

「ではすぐに乗ってくれ。」

ルーベルの言葉で俺たちは馬車に乗った。

城までの道中も話はしたが特に新しいアイデアは無く皆緊張した様子で王城まで馬車は走った。

城に着くとすぐに応接室に通された。

「一旦ここでお待ちください。」

案内してくれた女性が部屋を出ていくのを確認してルーベルは首を傾げた。

「すぐに玉座の間に通されると思ったのだが…」

暫く応接室で待機していると別の案内係が来た。

今度は玉座の間に向かうようだ。

玉座の間に入ると案の定国王と側近が待っていた。

「よく来たな。早速だが一応確認させてもらう。」

魔術師の一人が俺たちに何か魔法をかけた。

「特に状態異常などを受けている様子はありません。」

その後、国王からいくつか質問され答えていった。

「問題無さそうだな。」

国王の力がふっと緩んだのがわかった。

やはり俺たちが洗脳されているのではないかという不安があったのだろう。

ただの人間が魔王に直接会うというだけでも異例なのに何もされずに戻ってくるとは思わなかったのかもしれない。

「では、報告をはじめさせて頂いても宜しいでしょうか?」

ルーベルが早速切り出した。

「話してくれ。」

国王と家臣たちの前でルーベルは魔王と会って話したことを報告した。

魔王ウルクは共存に関しては前向きに考えていることをまず話した。

「それは信用できるのか?」

国王が全員の顔を見て言った。

「はっ!魔王ウルクは転生前に勇者と戦ったことも覚えていてその時も共存の話しが出たそうです。その時は勇者の行動と主張が一致していないことで拒否をしたそうです。」

「ならば何故今回は共存に前向きなんだ?共存の話しを持ち出したのは勇者でもなくただの奴隷だぞ?」

俺の方を見て国王は言った。

「仰る通り、レビンがただの奴隷だったら信用出来ない話しかもしれません。このレビンは記憶喪失なのですが、魔王と会った際魔法を掛けられ前世の記憶が蘇りました。そこで分かったのですが今ここにいるレビンも実は勇者でした。」

「何だと?」

国王が立ち上がり驚きの顔を向けてきた。

家臣たちもざわついている。

「レビン、剣を。」

ルーベルの言葉通り俺は勇者の剣を国王に見せた。

「そ、それは…。では真なのか?」

「はい、我々も魔王に言われ疑念がありましたので魔王たちと別れた後に聖堂に行き確認をしました。レビンはあっさりと剣を抜きました。」

「信じられん…。」

「そこで更に分かったのですが、このユキナも巫女だということがわかりました。」

国王は驚きのあまり声が出せず口を開けていた。

「こちらも聖堂の守り人のヒューイが確認したことと…、ユキナも出しなさい。」

ユキナが杖を国王に見せた。

国王は尻もちをつくように玉座に座った。

本当は魔王に会う前に分かっていたことだが国王への報告を伏せた手前、聖堂のヒューイには鳥を飛ばし話を合わせるようお願いしてある。

「魔王も勇者と巫女だということはすぐにわかったようです。前世で魔王が共存を拒否した理由は勇者がダンジョン攻略時にモンスターを多く倒したことが魔王軍側からすれば自分たちの住処に勝手に入ってきて暴れたという認識で魔王である自分と対峙した際に共存と言い出したことが納得いかなかったそうです。しかし、レビンはモンスターとの戦闘をほぼ行わず魔王に会う事ができました。それを魔王は結果として約束を守ったと認め今回共存の会談に応じるという話しになりました。」

国王は考え込んでいる。

「それと魔王はレビンの力試しとして戦いました。結果はレビンの惨敗です。レビンが今まで戦闘訓練は行ってきましたが実戦が少ないということもありますがそれを踏まえても魔王は強力でした。」

「では…、戦闘になったら人間側が圧倒的に不利ということか?」

「はい…。しかし魔王はレビンの事を気にいってしまったようでレビンを魔王が鍛えるという話になりました。」

「なんだそれは?」

「魔王はレビンが弱いままでは人間が安心して共存など信じられないだろうと…。」

「なぜ魔王が人間側の心配をしているのだ?」

「魔王自体が共存を望んでいるからです。」

ルーベルは国王の目を見て話した。

「前世での勇者の最期をご存じですか?魔王討伐し英雄となった勇者は人間の欲望のせいで人間の手によって殺害されました。それを魔王は酷く嘆いているようです。もし自分が共存に応じていればそのような惨事は起こらなかったのではないかと…。」

これはルーベルの作り話も含まれている。

とにかく魔王が人間に危害を加えないと信じてもらうため馬車の中で練った内容だ。

「…話しはわかった。」

「お待ちください!」

国王が言った直後家臣の一人が声をあげた。

「ジールか…。」

ルーベルがぼそっと呟いた。

「話しの内容はわかりましたがあっさり信用できる内容ではありません!魔法で洗脳などは無いと思いますが万が一人間ではわからない仕掛けなどかあったら…。」

国王がジールを手で制した。

「この者たちは私の命令とは言え直接魔王と接触してきたのだぞ。しかも勇者と巫女とまで分かった。魔王はそれが自分の脅威となるとわかっていながら共存の話しを受けたのだ。共存の意志が全く無いのならその場で二人を殺してしまえば終わりなのにそうしなかった。儂はこの者たちの言うことを信用する。」

「ですが…。」

なおも食い下がるジールを国王は睨んだ。

「ならばお前には魔王軍との今後について考えはあるのか?方法は?」

「それは…。」

「儂の一存だが魔王との会談に出席する。」

「ありがとうございます!」

ルーベルが深く頭を下げた。

「会談を行う際、魔王軍から提案がありました。魔王自らがこの王城に来ると言っています。」

「その意図は?」

再び国王は疑念の眼差しを向けてきた。

「一度結界を解いた状態で魔王と四天王だけ城に入ります。モンスターは魔王が制御するとのことでした。そして城で会談を行うことでもし魔王軍に怪しい気配があればすぐに結界を作動させる。結界を作動すればいくら魔王や四天王だとしてもその威力に耐えられません。何とでもなるでしょう。」

「確かに…。」

「これも魔王からの案です。」

「魔王はここまで考えていたのか…。」

国王が呟いた。

「正直共存など不可能と思っていたが魔王軍がここまで考えていたとはな…。」

「あと、もう一つだけ…。」

「まだあるのか?」

「はい、奴隷制度についてです。」

「奴隷制度?」

国王が訝し気な顔をした。

「これも魔王からなのでが、人間と魔王軍が共存を決めているのに人間側で差別を作るような制度を作っているのはおかしいと。奴隷制度のせいでレビンやユキナのように勇者や巫女とまでは行かないまでも高い能力を持った者を飼い殺している可能性もある。同じ立場として共存するのなら条件次第ではモンスターも奴隷にされかねないから奴隷制度は廃止すること。これが共存の条件だそうです。」

これも馬車の中で考えた内容である。

「まさか魔王軍がここまで人間側のことを考えているとは…。」

「共存を成立させる際、国民の前でこのレビンとユキナの首輪を外して奴隷制度の廃止を宣言して欲しいそうです。」

国王はまた考え込んでいる。

「以上が、今回魔王と会談を行った内容となります。」

家臣は黙って国王の言葉を待っている。

その場に緊張が走った。

「ルーベル、キザキ、レビン、ユキナ。ご苦労であった。内容はわかった。だがすぐに答えを出すには重すぎる話しだ。暫く時間をくれ。」

「もちろんです。」

ルーベルが立ちあがった。

俺たちも続いて立ち上がり玉座の間から出た。

そのまま城から出て馬車に乗った。

「おい!」

先ほど国王に進言していた男がいた。

「なんだ。ジール。」

ルーベルは面倒くさそうに言った。

「この成り上がりが…。よくあんな事を国王様に報告できたものだな!」

「国王様の命令で行って報告したまでだ。何か問題あるか?」

「問題だらけだろう!共存など嘘に決まっている!」

「国王様に話した通りだ。それを決めるのは貴殿ではなかろう?」

「…。覚えておけよ!」

顔を真っ赤にしてジールはどこかへ行った。

「あの方は?」

キザキが聞くとルーベルは溜息をつきながら答えた。

「典型的な貴族様だ。儂が貴族になったときもよほど気に入らなかったらしく最後までごねておった。まぁ、儂も貴族の中だと敵が多いのでな。」

ルーベルが笑い飛ばした。

馬車を走らせ王都のルーベル邸に到着した。

「ルーベル様、一旦我々は商館に帰りたいと思います。」

「そうか、まぁしばらく空けておるからな。」

「はい、それに奴隷制度が無くなる可能性が高いので…。」

「なるほど、もう準備と言う訳か。さすが商人だな。」

ルーベルは笑いながら言った。

「では馬車を呼んでやるから少し休んでいけ。」

俺たちはルーベル邸の応接室で待たせてもらうことにした。

 馬車はすぐ来てキザキ、ユキナ、俺の3人はすぐにキザキ商館へと向かった。

ルーベルは一度自分の仕事も行わなければならないとの事なので何かあったら連絡がすぐに取れるようキザキにアイテムを渡した。

使用するとすぐに音声で話しができるというアイテムらしい。

俺たちも商館を離れて暫く立っているので久しぶりという感覚が強い。

商館に入るとすぐに皆が出迎えてくれた。

詳細は話していないものの何か大事に関わっているというのは感じていたらしい。

「何か変わったことはないか?」

キザキが訊ねると一人の戦闘要員の奴隷が手を挙げた。

「昨日の夕方くらいですね。訓練が終わり少し散歩に出たときのことです。商館の近くで怪しいフードを被った者に声を掛けられました。」

「何を言われた?」

「意味がわからなかったのですが…。キザキ様、レビン、ユキナの情報を何でもいいから教えて欲しいと…。それから屋敷に戻ってきたら状況を教えてくれという内容でした。声は魔法かアイテムかわかりませんが明らかに変えていました。」

キザキは目を瞑って考えた。

そこに女性のメイドが手を挙げた。

「キザキ様すみません。私も昨日夕ご飯の買い物に出た際、声を掛けられました。内容はほぼ一緒です。」

「わかった。それ以外はないか?」

「はい。」

一同が答えた。

「レビン、ユキナ。応接室へ行くぞ。」

俺たちは場所を変えた。

応接室に入るとキザキは部屋に鍵を掛けるよう言った。

そのままキザキは喋らず紙に何かを書いてこちらに渡した。

内容は

「商館は盗聴されているかもしれない。ユキナの魔法で探知できないか?」

ユキナは少し考えて頷いた。

杖を取り出し何かを詠唱した。

応接室の椅子の下、棚、入口付近の天井が光った。

光った場所を確認すると見慣れないアイテムが置いてあった。

キザキに見せると溜息をつきアイテムを元の場所に戻した。

キザキがまた紙に書き始めた。

「恐らく先ほど聞いた怪しい者たちの仕業だろう。商館の人間も加担している可能性が高い。」

俺とユキナはキザキを見て頷いた。

「場所を変えるぞ。」

俺たちは街の宿屋に泊まることにした。

宿屋に到着後すぐにキザキの部屋に集まった。

キザキは大きなため息をつき言った。

「可能性は考えていたがこうも早く動くとはな…。」

「どういうことですか?」

俺が訊ねると

「恐らく商館の者たちが会った怪しい者というのは城の者だろう。今回の我々の報告を聞いた誰かが我々に尾行をつけ探っているのだろう。魔王軍と直接会った我々の魔王軍への加担を疑う者もいるとは思ったが…。」

キザキはルーベルから受け取った音声送受信用のアイテムを使用した。

ルーベルに商館が見張られていることを報告し、恐らくルーベル邸も見張られている可能性が高いことを伝えた。

ルーベルも薄々感じていたようでセオリーに調査を依頼したそうだ。

「今回、国王命令とはいえ我々だけで魔王軍と接触したことを快く思っていない者もいるだろう。特に儂は側近の者たちからすれば成り上がり貴族だからな。もし魔王軍との戦いを終わらせるような事になった場合の儂の格上げされる事を恐れている者もいるのだろう。」

ルーベルは心から面倒くさそうに言った。

「しかし、これがもし国王命令での監視だった場合厄介なことになりますね。国王自体が共存に前向きでないという可能性も考えておくべきでは?」

「まぁ、会談と王都で行うという事は危険も伴う可能性も考慮しなければならないからな…。その場合は、何とかして国王に信じてもらうしかあるまい。」

「では、今後の方針ですが我々が動くとどうしても素人なので大袈裟になりかねないのでルーベル様に今回の件は調べて頂きたいのですがよろしいでしょうか?」

「もちろん。セオリーを中心に側近たちを調べさせよう。」

「ではその間に我々はもう一度魔王ウルクに会いに行こうと思います。」

「何?それは危険ではないか?」

「今回の国王への報告を伝えに行きます。情報はなるべく共有したほうが魔王の信頼も得られるでしょう。それにレビンに訓練をつけると魔王は張り切ってましたからね。」

キザキが苦笑交じりで言った。

「わかった。しかし何かあったらすぐに連絡するんだぞ?」

「ありがとうございます。ルーベル様も十分お気をつけください。」

そう言うとキザキは通話を切った。

「そういう事だからまた魔王へ会いに行くぞ。数日はゆっくりする予定だったがここも安全とは限らんからな。」

俺とユキナは頷いて各自部屋に戻った。

俺はベッドに横になった。

まさか国王命令で動いて魔王と会い魔王はあんなにも真剣に共存を考えてくれているのに国王の側近、もしくは国王自らが俺たちに監視を置くなんて皮肉な話だ。

これから国王がどのような決断をするか次第だが何とか共存の道を行きたい。

どうしたら国王に信用してもらえるだろうか…。

そんな事を考えながら気づくと眠りに落ちていた。

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