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共存の課題と望み

 「…ビンさん!…レビンさん!」

ハッと意識が戻り俺は起き上がった。

今まで見てたものは…?

酷く汗をかいている。

「大丈夫ですか?」

ユキナが心配そうに俺を見ている。

辺りを見渡すとルーベル、キザキも俺を見ていた。

「意識が戻ったか?」

魔王が…幼女姿の魔王がそこには笑みを浮かべて立っていた。

「何を…したんだ…?」

まだ混濁する意識の中で俺は魔王に尋ねた。

「すまんすまん。貴様は記憶を無くしているようだったのでちょっと直してやろうと思ったのだが強く魔法を掛け過ぎたようだ。恐らく前世の記憶まで戻ってしまったのではないか?」

「前世の記憶…。」

なるほど。

さっきのは俺の前世の記憶だったのか。

「つまり俺は前世でも勇者だったということなのか?」

魔王が頷いた。

「我はすぐにわかったぞ。貴様はあの時の勇者であったことが。そして貴様はどう感じた?勇者ユリウスの結末を。」

俺は記憶の内容を思い出し吐き気がしてきた。

「何があったんだ?レビン。」

キザキに聞かれた。

俺が黙っていると魔王が笑い出した。

「あれを見てすぐに冷静に話せというほうが酷な話よ。我が要点だけ話してやるわ。」

魔王はキザキ・ルーベル・ユキナに前勇者の事を話した。

ユリウスも共存を考えていたが魔王が拒否したこと。

拒否の理由は魔王側からすれば人間が攻め込んでくるため応戦していたという事。

ユリウスも自分たちのやり方が合っているか疑問を抱いていた事。

魔王討伐後の騎士団としての動き、国王を中心とした裏切り、ミントという共に戦った仲間の裏切り、毒殺…。

話しが進むにつれて全員顔色が悪くなりユキナに至っては途中で吐いてしまった。

「とまぁ、ざっくり話すとこんな所かの…。」

「今の話は本当なのか?」

キザキは青ざめた顔で俺に聞いてきた。

「さっきの記憶が本物なら魔王の言っていることは真実です。」

その場にいる全員が固まった。

四天王から話しは聞いていたがまさか…俺が前世でも勇者であんな死に方をしていたなんて…。

「で、どうするんじゃ?」

魔王が俺を真っ直ぐに見て言った。

「どうする…とは?」

「察しが悪いの…。貴様らは我らとの共存を求めてここに来たのだろう?前世の我は貴様らの行動の矛盾に腹が立ち戦闘となって敗れた。今回…と言ってもお前にとっては以前の記憶はなかった訳だがどういう訳か我の部下とはほぼ戦わずに我の元までやってきて共存の話を持ってきおった。正直、前世の記憶があるのではないかと疑ったぞ。まぁ、前世どころか単純に記憶喪失にもなっているようだがの。」

魔王はククっと笑った。

「しかしお前は人間共の汚い部分を直接見てしまった。というよりも見たことを思い出してしまった訳だがそれでも人間を信用できるのか?」

魔王ウルクは真剣な表情で俺を見てきた。

俺は…。

後ろを振り返るとルーベル、キザキ、ユキナ全員が心配そうにこちらを見ている。

「レビン!」

目が合ったキザキが叫んだ。

「お前に全て任せる。」

ルーベルとユキナも頷いた。

「俺は…俺はそれでも魔王軍との共存の道があると信じたい!」

ウルクが驚いた顔をした。

「貴様…正気か?」

「はい…。正直、先ほど見せられた前世の記憶だけだったら俺は人間を信用することが出来なくなっていたと思います…。それに見方によっては今回も散々な目にあった事もありました。事実、勇者とはいえ奴隷でもありますから…。」

俺は自分の首輪に振れ魔王に笑顔を向けた。

「でも…、それでも今ここにいる人間は少なくとも信用出来ます。例え前世の記憶を見たとしてもそれでも信用出来るんです。」

「命を懸けて共に我と戦った仲間にも裏切られたのにか?」

「はい…。正直相当堪えました。意識が戻ったとき皆の顔を見て不安になったのも事実です。」

俺は全て正直に話した。

「それでもルーベル様、キザキさんには奴隷という立場の俺を散々守って頂き、立場など気にせず話してくれました。ユキナさんも奴隷とはいえ巫女という立場を得て聖堂で安全に暮らす道があったにも関わらず俺たちと共にここまで来てくれました。本当に命を懸けて。そんな人たちが裏切るはずがない。もし裏切られたとしたらよっぽど俺が方向を誤ったんだと諦めがつきます。甘い考えかもしれませんがこれが俺の考え方です。」

俺が話し終わるか終わらないかのうちに魔王ウルクが俺に抱き着いてきた。

「貴様は!どこまでお人好しなのだ?過去にあれだけの目に遭っておいてまだ人間を信用すると?正気なのか?」

ウルクの目には涙が浮かんでいた。

「過去を思い出せば考えが変わるかもと思ったが…。結局出した答えは共存か!この道こそが課題も多く一つの裏切りで簡単に未来がどうにでも転がる不安定な道なのに…。貴様はまだ自分を苦しめたいのか?」

言っていることは分かりづらいが俺を思って言ってくれていることは伝わった。

「ありがとうございます。でも、たぶん俺は魔王軍との共存を諦めません。例えこの命でダメだったとしても来世でもその次でも何度でも挑戦すると思います。魔王様だって期待しているんじゃないですか?」

「なんで我がそんな事を…。」

メディウスがクスクスと笑った。

「何を笑っておる?」

魔王は怒りの表情でメディウスを睨んだ。

「いや…。本当に面白い人間だと思いませんか?」

ウルクは黙って俺を見た。

「ここまでお人好しで頑固というだけでも面白いのにそれがろくに戦闘経験のない勇者…しかも奴隷という立場…。やっぱり興味が尽きない。」

メディウスがニヤニヤと笑っている。

ウルクは大きなため息をつき、諦めたようにこちらを見た。

「わかった…。今回は共存の会談とやらに参加してやる。前世のような言い訳も効かんしな…。」

「あ、ありがとうございます!」

俺が礼を言うとやっと皆も笑顔になった。

「それとレビン!貴様は敬語を使うな!勇者のくせに魔王に敬語など使っていたら人間から怪しまれるではないか!」

「は…いや、わかった。」

俺が返事をするとメディウスが

「全く素直じゃない…。」

苦笑いを浮かべて呟いた。

「黙れ!メディウス!」

真っ赤な顔でウルクが怒鳴った。

「ただし、条件が2つある。」

「条件?」

「ああ、一つは王都の結界を解いて王城で会談を行おう。こちらに国王を来させてもよいがここのプレッシャーに恐らく普通の人間では耐えられまい。」

早速ルーベルが頭を抱えた。

王都で魔王軍との会談を行う…。

前代未聞な上に結界を解くとなるとよほどの説得材料がないと厳しいだろう。

「もう1つは?」

「レビン、一度我と戦え。」

「はぁ?」

「いいから。」

そう言いながら俺からある程度の距離を取った。

「いや、意味がわからないのですが…。」

「敬語やめぃ!一度今のお主の力を知っておきたいだけじゃ。何、本気でやりあう訳ではない。」

そう言うとウルクのプレッシャーが跳ね上がった。

ユキナが俺に向かって勇者の剣を投げた。

俺は受け取り剣を抜いた。

「いくぞ…。」

ウルクは高速で突進してきた。

 レビンとウルクの戦いは一瞬でケリが着いた。

初動で剣を弾き飛ばされたレビンは成す術なく地面に倒れていた。

「これほどの戦力差とは…。」

ルーベルもキザキも驚愕の表情のまま固まっていた。

あたしはレビンの元へ駆け寄り声を掛けた。

完全に意識を失っており、慌てて回復魔法を掛けた。

魔王ウルクはつまらなそうにレビンを見ていた。

「娘よ。貴様は本当に巫女か?」

ウルクの質問の意味がわからず黙っていると

「勇者と巫女が揃った時、勇者は覚醒すると思っていたのだが勘違いか?」

ウルクは真剣に悩んでいる。

「うぅ…。」

レビンが意識を取り戻した。

「大丈夫ですか?」

私が聞くと弱々しい笑顔をこちらに向けた。

「確かにこの男が勇者ということは間違いないだろう。だが、戦闘力に関して言えば期待外れもいいところだ。恐らく我が四天王より弱いぞ。」

ウルクははっきりと言った。

「仕方ありません!今までモンスターどころか戦闘経験…実戦という意味でまともにレビンさんは戦ったことがありません!勇者というのもほんの少し前に分かったことなんです!」

ウルクの言葉に怒りを覚えあたしは思った事を口にした。

「そうか…。しかしこうなると我らにとって人間と共存する意味はあるのか?」

「どういう意味ですか?」

「そのままの意味だ。勇者がこの程度では共存すると言ってもこちらにメリットが少ないのもあるがもし人間たちが我らを裏切り攻撃してきた場合、レビンでは止められないという事になる。それでは我らは反撃せざるを得んぞ?」

言っている事はわかる。

「では、もともとレビンさんの力を求めて共存すると言われていたのですか?」

「そうではない。貴様らの国だけなら何とでもなるだろう。だが、共存するという事は世界中の人間と共存するという意味なのであろう?このレビンに力があれば我々に対抗する手段があるとして人間も共存は前向きに考えられるかもしれんが抵抗できない状態で共存と言ってもお前たち人間は納得できるのか?」

言葉が出て来ない。

「我はこのレビンの力が勝手にあると思っていたのは誤算であった。もしくはレビンの力ではなくとも勇者の影響力により我らに抵抗できる軍などが作れればよいのだがレビンは現状ただの奴隷だ。」

その後もウルクは話し続けたが言っていることが正論過ぎて何も言い返せない。

悔しくて涙が出てきた。

「そ…それでも…。」

レビンが立ち上がっていた。

「それでも…共存の道は諦めない…。力が必要なら…これから手に入れる。」

立っているのがやっとなのにレビンの目の力は衰えていない。

ウルクは溜息をつきレビンに近づいてきた。

もうやめて…。

言いたくても声が出なかった。

ウルクがレビンを片手で持ち上げて言った。

「脆弱なくせに口だけは動きよる。力を手に入れる?どのように?根拠の無い言葉に何の意味もないぞ?」

ウルクのプレッシャーがまた強くなった。

「やめてーーーーー!」

突然あたしから強い衝撃波が出た。

ウルクが驚いてこちらを見ている。

レビンから手を離すと力無く地面に倒れた。

「レビンさん!」

あたしが駆け寄るとレビンは完全に意識を失っていた。

回復の魔法を使おうとした直後、ウルクに肩を掴まれ振り向かされた。

まじまじとあたしの顔を見るウルクに恐怖を感じた。

「貴様…。今のは?」

「何のことですか?」

「今の力だ!なんだあれは?」

「わかりません。それよりレビンさんの治療を…。」

「そやつは大した負傷はしておらん!それより今の力だ!意図して使ったのか?」

本当に無自覚だった。

そもそも何が起こったのかすらよくわかっていない。

「無自覚なのか…。」

ウルクはこちらを見ながらポツリと呟いた。

その後、笑い始めたウルクに戸惑っていると

「無意識とは言え貴様が先に覚醒したか!」

ウルクは嬉しそうに言った。

「どういうことですか?」

あたしが訊ねると

「以前の勇者との戦いでは戦闘中に勇者が覚醒し我を打ち倒した。その時の巫女は今のお前より段違いに強かったが覚醒はしていなかった。しかし今回は逆のパターンで勇者覚醒の前に巫女が先に覚醒しよった!巫女の力は勇者を支える為にあるものだ。今この脆弱なレビンだが貴様の助力があれば飛躍的に強くなるであろう。」

「…つまり?」

そこでキザキがあたしに向かって説明してくれた。

「つまり勇者の力が弱すぎることが原因で魔王ウルク様は人間との共存に悩みを感じていたがお前とレビンで協力してレビンの力が増せばウルク様の憂いは無くなるということだ。人間と魔王軍の会談で人間側に安心感を与えられるという事に繋がるからな。」

「でも…具体的にあたしは何をすれば?」

「まずは…レビンの治療かの…。」

気絶したレビンをウルクが眺めていた。

慌ててあたしはレビンの元へ走った。

 俺が目を覚ますと見知らぬ部屋にいた。

辺りを見回すとベッドの横の椅子で眠るユキナの姿があった。

看病してくれていたのだろうか…。

その時、ユキナが目を覚ました。

「レビンさん!目を覚ましたのですね?」

ユキナが飛びついてきた。

俺はユキナを受け止め泣いている彼女を抱きしめた。

「本当に…心配したんですからね…。」

「すみません…。」

そのままユキナが泣き止むまで優しく抱きしめた。

しばらくすると急にユキナは冷静になったようで慌てて俺から離れた。

「す、すみません…。取り乱しました…。」

真っ赤な顔でうつ向くユキナ。

俺は笑いを堪えながら何があったのか聞いた。

「レビンさんはウルク様の圧倒的な力の前に意識を奪われました。その後に…、これはあたしもよくわからないのですが巫女としての力が覚醒したらしいんです…。この力があればレビンさんが強くなる力になれるとウルク様がおっしゃっていました。」

「巫女の力で俺が強くなる?」

「はい、その理屈はいまちちあたしもわからないです。レビンさんの力が強くなれば共存する為の会談も実現可能になるとキザキ様もおっしゃられてました。」

「ウルクの言っていた人間側の不安要素を抑えることができるってことか…。」

意識を失っている間に状況は変わったようだ。

「それでウルクや他の皆はどうしたんですか?」

「ウルク様は…疲れたから寝ると…。ルーベル様とキザキ様は別室で打ち合わせをしています。」

「寝てるって…。いくら脅威にならないとはいえ敵がいるのに…。とりあえずキザキさん達のところへ行きましょうか。」

俺はユキナと共に別室へ移動した。

「失礼します。」

ノックして入るとルーベルとキザキが何やら話をしていた。

「レビン!何ともないのか?」

ルーベルが相変わらずの大声で聞いてきた。

「はい、ユキナさんの魔法のお陰で…。俺が意識を失ってる間のこともユキナさんから聞きました。巫女の力が覚醒したことと、共存の会談を行える可能性が出てきたと。」

「今その話をしていたところだ。具体的にレビンの力を上げる方法は魔王とも話したのだが詳しくはわからなかった。それはこれから考えるとして一つ考えがあってな。」

キザキが真剣な顔でこちらを向いた。

「魔王軍との共存はもちろん行うとして俺はこの国の奴隷制度を無くしたいと思っている。」

「…急ですね。」

「急ではない。俺の一族はずっとこの奴隷制度に疑問を持っていた。何故このようなシステムが必要なのか…。奴隷には人権が無くどんな扱いを受けても仕方ないなんておかしいと思わないか?」

「もちろん思います。俺たちはキザキさんのお陰でむしろ良い暮らしと言ってもいい位ですが噂などを聞くと気分が悪くなるような話もたくさん聞きます。」

「お前は魔王軍との共存を願っている。そこに俺の夢も乗せてもらえないか?」

「と言うと?」

「つまり魔王軍と共存が決まり国王から国民へ説明するときに奴隷制度の廃止も宣言して頂きたいのだ。会談が始まればお前が勇者だという事も国王に伝えねばならなくなるだろう。そのお前は奴隷の身分で過ごしていたが実は勇者だったという事になれば民衆から見て奴隷の見方が変わるのではないかと読んでいる。そもそも奴隷制度があることによってそのような事が起こるし、魔王軍と対等な関係を結ぶのに人間の中で差別があるというのはおかしな話しだ。強引ではあるが一気に奴隷制度を無くすように仕向けようと思う。」

キザキの言っていることはかなり強引だが理屈はわかる。

俺もキザキのところ以外で奴隷になっていたことを想像するとぞっとする。

今後、このような事に人々が脅かされないように強引でも奴隷制度の廃止はするべきだ。

「国王から奴隷制度の廃止を宣言して頂いた直後に民衆の前でお前とユキナの奴隷の首輪を外す。その方が民衆にとってもインパクトは強いだろう。」

「わかりました。しかし、国王は素直に奴隷制度廃止に納得してくれるでしょうか?」

「問題はそこだ…。」

「ならば我が共存の条件として奴隷制度廃止を提案すればよかろう。」

俺とキザキが振り向くとそこにはウルクがあくびをしながら立っていた。

「ウルク様…?もう起きたのですか?」

「レビンが目を覚ましたとメディウスから聞いての。飛んできたのじゃ。」

悪戯な笑みで俺を見ている。

「しかし…。これは人間側の問題であり魔王軍にとってはメリットが特にないと思うのですが…。」

キザキが言うとウルクは面倒くさそうに手を振った。

「正直どうでもよい。貴様らの制度がどうなろうとな。だが、その奴隷の首輪!それがレビンとユキナに付いていることが問題だ。」

「首輪に何か問題が?」

「問題だらけじゃ!それのせいでレビンとユキナの力は相当抑えつけられておる!一般の者にならただの行動をコントロールするだけの首輪だが特別な力…、勇者や巫女への効果が強すぎるんじゃ。たくさん首輪はあったろうによりによって特別な力を抑える首輪をこの二人につけるとは…。キザキと言ったか?貴様わざとなのか?」

「い、いえ!決してそのようなことは…。我が一族が使用していた首輪をたまたまはめただけです。」

キザキが慌てて否定した。

「本当かのぅ…?」

疑いの目を向けるウルク。

「ウルク、俺はキザキさんを信用するよ。」

ウルクに言うと不満げな態度だが一応納得はしたようだ。

「結局、その首輪がある限りレビンもユキナも本来の力は出せんだろう。そうするとレビンがいくら訓練をしれも我と同等の力をつける事は叶わん。それだど結局話した通り共存の場を設けても人々の不安は取れんだろう。」

ウルクは少し考えてこちらを見た。

「一旦、貴様は我と同等の力があるという事にしておくか…。」

「はぁ?」

「だから同等の力があるという事にして共存の会談を済ませる。その後、奴隷制度廃止を宣言させ貴様とユキナの首輪を取る。強くなるのはその後でよい。」

「…。ウルクは何故そんなにこちらに協力的なんだ?」

「話しを持ってきたのはそちらだろう?」

「それはそうだけど…。」

それにしてもまるで人間側の都合に合わせてくれているかの様な言動の裏が全く見えず不安を感じる。

「まぁ、貴様の感じる不安は自然なものだ。お前だけでなくそこのキザキや大男もずっと頭を回している。」

ルーベルとキザキに緊張が走った。

「だが、そこまで深く考えんでもよい。レビンと違って貴様らは頭が回り過ぎる。だが、いくら考えたとてわからんものはわからんだろう。」

それはそうだが何故俺を引き合いに出した?

「では本音で話そう。レビンは過去を見てきたからわかるだろうが過去では人間…、勇者も含めてな?のやってることに矛盾を感じた。そこに納得できず我は共存の話を蹴ったのだ。共存しようと言いながら我の部下を打ち倒し城にまで押し寄せてきたのだぞ?何を信用できるか…。そこで我がその矛盾をついたが戦闘になり我は敗北した。その後我は復活し再び人間たちと戦うことになった。勇者は自分が助けた人間たちの手で命を奪われたと聞きやはり人間と共存などできんと思っていた。しかし、今度の勇者は最初から本気で我々との共存を考えておりまともに戦うこともしなかった。運もあるだろう。そして我々の軍も正直この終わりの無い戦いに疲労し嫌気が差してきていた。そこに今回の話しだ。四天王のシーザーあたりは文句を言っていたがあいつは前の勇者と一番戦ったことにより情が沸いていたのだろう。その勇者が守った人間に殺されたという事が耐えがたいほど悔しかった。魔王軍側にもそういう者はおる。だが、それは人間側も内容は違えど魔王軍を許せぬ者もいるだろう。キリが無いのだ。だから今回の件ですぐには無理にでも共存の一歩を踏み出したいと考えておる。レビンなら信用できると感じておる。」

最後は照れくさそうにウルクは言った。

そこまで考えてくれてたのか…。

俺は目頭が熱くなった。

幼稚で子供じみた考えにも思えた自分の考えを実現しようと本気で考え協力してくれる者がいる。

それだけで救われる気持ちだ。

俺が振り返るとキザキ、ルーベル、ユキナが頷いた。

「ウルク…。ありがとう…。何としても成功させよう。」

「やめんか!まだ始まってすらおらんのだからな。まぁ、共存が実現したら貴様の訓練には付き合わせてもらうぞ?」

ウルクが本当に楽しみという笑顔でこちらを見た。

「ああ、頼む。」

 その後、詳細な打ち合わせを行い魔王城を後にした。

国王への報告なら俺とユキナはいらないだろうから残るようウルクは駄々をこねていたがメディウスに宥められた。

馬車で王都へ帰る途中、

「これで本当に実現できるんですかね…。」

俺はキザキに訊ねた。

キザキは難しい顔をしながら

「まだ正直不安要素はある。国王が今回の話しをすんなりと信用してくれるのか…。だが今考えてもわからんからな。」

キザキの隣でルーベルも何か考え込んでいるようだ。

「だが、魔王の態度や話した内容は本気を感じた。今はそれを信じるしかないな。」

こちらも勢いと誠意で共存の道を切り開こうとしていたが想像以上にウルクが前向きに考えてくれたお陰で具体的な共存の道が見えてきた。

本当にあとは人間側の問題だ…。

ウルクに見せられた過去を思い出し気分が悪くなった。

「大丈夫ですか?」

ユキナが心配そうに覗き込んできた。

俺は笑顔で応え馬車の行く先を見た。

あれは過去の事だ…。

実際、偶然も大いに重なったが魔王との約束は果たせている。

国王…、いや人間だって魔王軍との戦いに疲弊しているのは事実だ。

これで共存が叶えば新しい世界が広がるはずだ。

そんな事を考えていると王都が見えてきた。

「一旦、儂の屋敷で国王への報告内容を整理するぞ。」

ルーベルの言葉に皆が頷き、馬車は王都へ入った。

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