国王への報告と魔王登場
聖堂での一件より俺の回復を待ったこともあり半月ほど経っていた。
王都へ向かう当日出発前の準備が早めに終わった俺は鈍った体を戻すため聖堂の周りを走っていた。
まさか自分が勇者なんて…。
全く実感が湧かないどころか勇者である自分が魔王軍との共存を本気で望んでいる。
人類の味方であるはずの勇者なのに…。
もしこの共存案が上手くいかなかったら俺はどうするんだろう…。
果たして魔王軍と戦えるのだろうか…。
そんな事を考えていると聖堂の中庭に人影が見えた。
ヒューイともう一人は…見たことない人物だ。
俺が遠目で見ているとヒューイはこちらに気づき頭を下げた。
その後、少し見知らぬ者と話したあとにこちらに向かって歩いてきた。
「レビンさん、準備は出来たのですか?」
「はい、暫く寝ていたので運動していました。」
俺が答えるとヒューイは頷いた。
「これから王都に戻るのですからほどほどにしてください。」
ヒューイは笑って聖堂の中へ戻っていった。
あの見知らぬ者は誰だったのだろう…。
俺も聖堂に戻ることにした。
中に入るとすでに準備を終えて全員集まっていた。
「レビン、遅かったな!」
ルーベルが声を掛けてきた。
「準備は出来てるな?今回は直接王城に向かう。余計な時間を掛けて国王に不審に思われるのはまずいからな。」
今回、聖堂で俺が勇者ということが分かったが国王に報告してしまうと魔王討伐を命じられる可能性がある。
せっかく四天王たちの協力もあって魔王軍との共存の可能性が出てきたのにそうなってしまっては元も子もない。
ルーベル、キザキ、ユキナ、俺と聖堂のヒューイのみが知っている情報でこれ以上知られると情報封鎖が難しくなる。
「では、早速出発するぞ!」
ルーベルの合図とともに俺たちは王都へ向けて出発した。
王都への道中、再度報告内容について打ち合わせを行った。
勇者の剣は誰にも反応しなかった事、ユキナは巫女で間違いなかった事、魔王との会談を行う事。
すんなりいけばいいのだが…。
「特に慎重に話さなければならないのは魔王との会談についてだな。これに関しては勝手にこちらが四天王と話をして進めたから国王がどういう反応をするか…。」
ルーベルが難しい顔をして言った。
「大丈夫です。私から話します。」
キザキが答えた。
「何か考えがあるのか?」
「はい。」
キザキは頷いた。
「勇者の件も含めて私から国王へは話します。」
「…。わかった。任せたぞキザキ。」
その後、すぐに王都へ到着した。
そのままどこにも寄らず城内まで入り、国王への謁見を申し出た。
そこに宰相であるモンテがやってきた。
「国王は別件で会議中だ。話は私が聞く。」
モンテは明らかにこちらに敵意のある目線を向けてきた。
モンテからすれば自分を飛ばして国王の命で動いている俺たちをよく思っていないようだ。
「お気遣いありがとうございます。ですが、今回の件は直接国王に報告させて頂きたく…。」
「たかが商人風情が意見するな!」
モンテがキザキに怒鳴った。
「モンテ殿。少々横暴では?」
ルーベルがモンテを睨みつける。
怒りの表情のまま今度はルーベルを睨みつけ言った。
「成り上がり風情が…。国王の勅命を受けたからと言って調子に乗るなよ?」
モンテは今回の件を知らされていないことにかなり不満を抱いているようだ。
「しかし、こちらも国王から内密にという指示を頂いているのでモンテ様といえどお話する訳にはいきません。どうかご理解頂きたく。」
ルーベルが頭を下げる。
「ちっ!応接室で待ってろ!」
そう言うとモンテはどこかへ行ってしまった。
「相変わらずというか何というか…。」
キザキが苦笑いを浮かべた。
「あいつは本当に昔から変わらん。臆病な癖にプライドが高くずる賢い奴だ。今後の会談などについても邪魔をしてくる可能性があるから万が一にも知られる訳にはいかんな。」
ルーベルが真顔で言った。
ルーベルとモンテ、過去にどういう事があったかまではわからないがあのモンテの態度を見ると良好な関係ではなかったのだろう。
「モンテの厄介なところは貴族たちとかなり深い繋がりがある。それこそ貴族特有の汚い部分に関してもだ。儂はその辺の折り合いが付かなかったので敵視されているというところもある。」
ルーベルはため息交じりに言った。
「まぁ、ここまで来て焦っても仕方がない。国王の会議が終わるのを待とう。」
国王の会議が終わったのは約1時間ほど経った頃だった。
「待たせたな。」
国王が応接室に入ってきた。
俺たちは膝をつき頭を下げた。
「国王、今回の件報告に参りました。」
ルーベルが言うと国王は
「わかった。早速、移動しよう。」
前回話し合いを行った隠し部屋へ移動した。
部屋に入り国王が一息ついた。
顔には酷い疲労の色が見える。
「国王様、体調が悪いのですか?」
ルーベルが訊ねると少し弱った笑顔を浮かべ
「少々忙しかっただけだ。問題ない。」
と国王は答えた。
「今回の件、私から報告させて頂きます。」
キザキが前に出た。
「頼む。」
キザキは予定通り話を進めた。
聖堂に行ってユキナが巫女であることは間違いないとわかった。
勇者の剣に関しては誰にも反応することはなかった。
「そうか…。勘違いであったか…。」
国王が呟いた。
「申し訳ありません。私も今までのレビンが経験してきたことを考えると高い可能性で勇者である可能性が高いと思ったのですが…。」
「違ったものは仕方がない。また勇者候補を探すしかあるまい、それにレビンに関しては只者ではないことは間違いないだろう。」
国王は自分に言い聞かせるように言っているようにも見える。
やはり人間にとって勇者の存在は大きいようだ。
「国王、ここからは更に重要な話になるのですが…。」
国王は黙って話すよう目で合図を送ってきた。
「聖堂に行く前にお話しさせて頂きました魔王軍との共存についてですが、実は四天王との会談には続きがありまして。」
国王はキザキのほうへ顔を向けた。
「四天王との会談の終盤に四天王の一人メディウスが魔王に会談の場を設けることを進言すると言っていました。」
「何?」
国王が驚きの表情を浮かべた。
「魔王軍の…魔王…か?」
「はい。」
暫く国王が考え込んだ。
「つまり直接魔王と会談をする場が設けられる可能性があると…。」
「はい、まだ四天王と会談後話していないので魔王が応じるかどうかはわかりませんが。しかし、先日も話しました通り四天王の一人は少なくとも前向きに考えています。」
「今まで魔王軍との戦いの中でこんな話があったなんて聞いたことがないぞ…。どうしても罠を疑ってしまう。」
国王が渋い顔で言った。
「私たちも完全に信用しているわけではありません。国王がご心配されるのも無理はありません。私たちはこの打ち合わせの後、再度西のダンジョンへ向かうつもりです。その時に出来れば魔王との会談には国王に出て頂くという約束をして頂きたいのです。」
「共存の会談を実現させる為にまずは人間の国王自ら参加する事を伝えて魔王も会談に出席させるようにするためか?」
「そうです。いくらレビンが共存案を魔王に伝えてもレビンには何の権力も力もありません。国の政の決定権のある国王様が会談に出て頂くことによって初めて魔王との交渉の場として成立するのです。」
国王はずっと考え込んでいる。
「西のダンジョンに行った際にすぐに国王様が出席されると言えば四天王たちが魔王の説得に難航していたとしたらよい交渉材料になるでしょう。魔王も人間側が積極的に歩みを寄せていると前向きに捉える可能性も上がります。」
「わかった!」
国王はキザキを制した。
「四天王へ私が共存のための会談に参加することを話してもよい。その代わり何としても実現させろ。」
「はっ!」
俺たちは全員で返事をし部屋を出ようとするとキザキが国王に呼び止められた。
部屋から出て応接室でキザキを待っているとルーベルが口を開いた。
「レビン、ユキナ。お前たちはキザキをどう思っている?」
ルーベルの質問の意図がわからず返事に困っていると
「具体的に言うとキザキは何者だ?儂も古い付き合いだが国王との関係性から見てもかなり重要なことを知っているような気がするのだが…。」
なるほど。
確かにキザキは同じ商館に住んでいても不明なことが多かった。
「正直私はキザキさんがどんな人物かは細かくわかりません。ルーベル様ほど付き合いの長い訳でもありませんし。ただ、少なくとも商館の人間にとっては優しく、真摯に向き合ってくれていました。」
「あたしも同意見です。いつも何か考えている方という印象はありますけど商館や関わる人の為に動く人だと思います。」
俺とユキナが答えた。
「やっぱり芯の部分は見えないっていう事だな…。儂も同じだ。キザキを信じよう。」
その言葉の意味がいまいちわからないまま応接室でキザキを待った。
キザキはすぐに応接室にやってきた。
国王と何を話したか聞いたが答えなかった。
一度ルーベル邸に行き西のダンジョンへ向かう準備をすることになった。
ユキナと準備を進めているとポツリとユキナが呟いた。
「キザキ様は…。味方ですよね?信用してもいいんですよね…。」
俺はこのキザキ商館に来てから何度も裏切りを見てきた。
どんなにいい人そうであっても平気で嘘をつき騙す。
そんな光景を何度も目の当たりにしてきたので簡単には言葉がでなかった。
それでも
「キザキさんは大丈夫ですよ。俺たちあんなに世話になってたんですから…。」
振り絞るように言った。
ユキナも無理やり笑顔を作って応えてくれた。
準備が終わったのでキザキの部屋に向かった。
ユキナは自分の準備があるということで別れ、俺がキザキの部屋をノックすると返事があった。
「失礼します。」
部屋に入るとキザキは窓から外を見ていた。
「出発の準備が出来ました。」
俺が伝えるとキザキはこちらを振り返った。
「レビン…。お前はもしも魔王軍との共存の夢が叶わなかったらどうするつもりだ?」
「え?」
キザキの突然の質問に俺は固まった。
「もちろん、万全を期してこれからの会談に臨むところだ。だが、四天王が裏切る可能性もある。魔王が会談に応じない可能性も。もしくは人間…、国王が考えを改めて異を唱える可能性もある。そうした場合どうするか考えているか?」
キザキの言ったことは俺も考えた。
だが、明確な答えは思いつかなかった。
しかし、
「正直、綿密な作戦は考えていません。キザキさんの言う通り可能性はいくらでもあると思います。もしかしたら失敗する可能性のほうが高いのかもしれません。しかし、少なくとも今までここまで共存の道に近づけた例はないと思います。だったら少しでも可能性があるなら賭けてみたいと思います。」
「大切な人を危険に巻き込んでしまってもか?」
「それは…。もし俺に勇者の力があるなら出来るだけ皆さんは逃げられる時間くらい稼いで見せます。」
俺はできるだけの笑顔で応えた。
キザキも笑顔になりこちらを見た。
「厳しいことを言って申し訳なかったな。お前の気持ちはわかった。思い付きや勢いだけでない覚悟があることもな。」
どうやらキザキは最後に俺を試したらしい。
「国王様からも言われてな。少なくともお前の意志が簡単にブレるようなものでないことを確認するようにと。」
「それで隠し部屋から出る時呼び止められてたんですか?」
「国王様からしたら自分に何かあった場合、国が大きく揺らぐことは分かっている。いくらこちらを信用しようとしても不安が消えることはないだろう。念には念を入れて確認するのは当然だ。」
確かに…。
それほど今回の人間と魔王軍の会談は重大なのだ。
元々人間同士でも争いや戦争が起こるというのに他種族との共存。
全く先が見えない。
だが少なくとも終わりの無い戦いを続けるより人間も魔王軍にとっても有益になることは間違いない。
「俺からも質問いいですか?」
「何だ?」
「キザキさんは…。キザキさんは本当にただの商人なんですか?以前ルーベル様から有名な冒険者だったというのは聞きましたがそれだけじゃ説明できない事が多くて…。」
キザキはこちらを振り向いた。
その目はこちらの真意、中を見ているような緊張感を与えてくる視線だった。
「もし、その正体を知ってどうするつもりだ?」
「…。内容にもよりますけどたぶんどうもしません。」
「何?」
キザキが訝し気な顔をする。
「もしかしたら…、いや多分裏で何か動いている感じはします。その内容までは全くわかりません。でもキザキさんは普段からあまり表立って何かをするタイプではありません。商館でもいつの間にか出かけたり依頼を取ってきたり行動が見えづらい部分はありましたけど決して商館のメンバーが被害を受けたり、不利益になることはありませんでした。」
「結果的にそうなっただけかもしれないぞ?」
「そうだとしても、俺はキザキさんを信頼してます。ユキナさんも同意見でした。」
「勇者と巫女からの信用か…。随分、重い信頼だな。」
キザキは口元で笑った。
「俺について気になることが多いのは分かった。だが、まだ詳細を話すことは出来ん。」
キザキが真剣な顔で俺に向かって言った。
「だが、お前らの信頼を裏切る気は毛頭ない。何か俺が信じられないような出来事が起こったとしてもそれだけは忘れないでくれ。」
そう言うとキザキは椅子に座った。
「わかりました。」
何か決定的な約束をしたわけではない。
それでも来る前より大きな安心感を感じることが出来た。
「では、準備も出来たことだしルーベル様に声を掛けて出発するぞ。」
「俺が行ってきます。」
俺は部屋を出てルーベルの部屋へ向かった。
ルーベルの部屋へ着くと中から声が聞こえた。
「…しかしルーベル様!これ以上危険な真似をされるのは…。」
「しつこいぞ!セオリー!」
恐らく西のダンジョンに向かうルーベルをセオリーが止めようとしているところのようだ。
「失礼します。」
俺がノックをして中に入るとルーベルが必死にすがりつくセオリーを引きずって入口に歩いてきた。
「おう、レビン!準備は出来たか?」
「は、はい。」
俺はセオリーを見た。
慌ててセオリーは立ち上がり姿勢を正す。
セオリーにとってはルーベルは本当に大切な主人なのだろう。
俺たちにとってのキザキのように…。
「セオリーさん。」
俺が声を掛けるとセオリーはキッとこちらを見た。
「ルーベル様もキザキさんもユキナも俺が絶対に守ります。命に換えても…。」
「何を無責任な…。奴隷ごときに一体何ができるというんですか?」
セオリーは怒りを含む声で言ってきた。
「意外と強いみたいですよ。俺。」
「何を…?」
セオリーがきょとんとした顔をしたが俺はルーベルと一緒にすでに集合場所へ歩き出していた。
大丈夫です、セオリーさん。
絶対俺が何とかしますから。
集合場所のルーベル邸中庭にはすでに馬車が準備されておりキザキとユキナが待っていた。
すぐに一同は西のダンジョンに向けて出発した。
前回の西のダンジョン訪問からそんなに経っていないのにかなり久しぶりに来る感覚だ。
四天王は魔王の説得は上手くいったのだろうか。
不安材料は多いが俺たちはまっすぐにダンジョンへ向かった。
ダンジョンに着き入口に馬車を置いて4人は中に入った。
すると、景色が突然歪み立っていられなくなった。
「これは?」
何かを考える前に四天王の部屋の扉の前に到着していた。
恐らく転移魔法の一種なのだろう。
俺が一同を振り返ると皆頷いた。
部屋の扉を開けるとまた見たことのない部屋に変っていた。
小高い丘の上からは湖が広がっており湖の周りには森が生い茂っていた。
全員がぽかんとしていると
「意外と早かったな。」
丘の頂上に四天王の一人メディウスがいた。
酷く疲弊しているように見える。
「何かあったのか?」
俺が訊ねるとメディウスはふっと笑い指を鳴らした。
すると丘の上にテーブルが現れた。
「皆座ってくれ。」
メディウスに言われ全員席へついた。
「他の四天王はどうしたんですか?」
キザキがメディウスに尋ねると
「今魔王様の試練に挑戦してもらっている。」
「魔王の…試練?」
メディウスが頷いた。
「前回の会談のあと我々四天王は全員で魔王様にお前らのことを報告に行った。共存についても話したところ魔王様は面白がっていた。」
「それなら何故試練を?」
「我々魔王軍がどれだけ共存について真剣に考えているか確認するため…だそうだ。本気でやりたいことなら試練くらいこなせるだろうと。」
なるほど。
「それで、試練はかなり厳しいものなのか?」
「四天王それぞれが魔王様の欲しがるものをまず集めてきた。そこまでは順調そのものだったのだが…。」
ため息をついてメディウスは続けた。
「最後の試練が魔王様と戦い攻撃が掠りでもしたら合格という内容なのだが…。全く掠るどころか近づくことすらできない毎日倒されてしまっている。シーザーに至っては一番惜しい攻撃をしたにも関わらず魔王様が面白がって反撃したせいで今も動けないでいる。」
魔王とはどれほど強いのだろうか…。
ルーベル、キザキ、ユキナも話を聞いて震えあがっている。
「今は何とか方法はないかと考えていたところだ…。」
メディウスは更に深いため息をついた。
「俺が力になれないか?」
「レビンが?確かにお前は面白い奴だが戦闘に関して平凡そのもの…。下手をしなくても魔王様の風圧で死んでしまうぞ?」
呆れた顔でメディウスは言った。
「キザキさん、ルーベル様!」
二人に俺は視線を送った。
二人は顔を合わせた後頷いた。
「メディウス…。俺は勇者だ。」
「は?」
メディウスに聖堂での話をした。
自分が勇者であること、その事を隠して国王に魔王との会談に出席する許可をもらったこと。
「ははは!」
メディウスが笑い出した。
「そうか!何か特別なものを感じていたがまさか勇者だったとは!俺の勘もまだまだ衰えていないな!」
本当に愉快そうに笑った。
「そういうことなら話は別だ!さっさと行くぞ!」
メディウスが指を鳴らすとまた場所が変わった。
どうやらまた転移魔法だろう。
気付くと見知らぬ場所にいた。
ただただ何もない広い部屋。
その部屋の奥に退屈そうに座っている者がいた。
とてつもないプレッシャーを纏うその者は口を開いた。
「次はお前かの?メディウス。」
「いえいえ、私では魔王様に届かぬこと何度も体験しましたので。」
「つまらん。」
その者は不貞腐れたような声を出した。
「魔王様に会って頂きたい者を連れて参りました。」
メディウスは俺を指差し言った。
「そいつは…。」
魔王はかなり遠くにいたのに一瞬で俺の目の前に現れた。
「勇者じゃ!勇者じゃないか!」
魔王は嬉しそうに声をあげた。
俺たちはぽかんと魔王を見ていた。
どう見ても…、子供…、メディウス達と同じように角は生えているが小さな少女の姿があった。
「何故先に勇者と言わなかったのじゃ?」
メディウスに凄む魔王。
「私も先ほどレビンから聞きました。」
「レビンというのか!我はウルク、魔王じゃ!」
ウルクは胸を張って言った。
俺たちはどうしていいかわからず自己紹介をした。
「ふむ…。貴様が巫女か…。ぱっとせんな…。」
とてつもなく失礼なことをユキナに言った。
俺が文句を言おうとしたがユキナに止められた。
「して…。それは奴隷の首輪か?なぜ勇者が奴隷なのだ?」
これまでの経緯をウルクに話した。
ウルクは大笑いしながら話を聞いていた。
「何とも間抜けな…。勇者ともあろう者が奴隷とは…。そして人間も自分たちの救世主を奴隷にしてしまうとは…。我を笑い殺す気か!」
涙を流してウルクが笑っている。
「しかし…」
ウルクが涙を拭きながら話を変えた。
「まさか勇者から魔王軍と人間の共存を持ちかけてくるとはな。」
そう言うと何やら準備運動を始めた。
メディウスがぼそっと俺に声を掛けた。
「ここからだ。あとは任せたぞ。」
何のことかわからず戸惑っていると魔王ウルクのプレッシャーは跳ね上がった。
「勇者レビンよ。勇者になりたてとはいえ貴様は勇者だ。今回の会談に応じるに値するかどうか見極めさせてもらう。」
「どういうことですか?」
俺が訊ねると魔王は楽しそうに言った。
「何四天王と同じ試練じゃよ。我に攻撃が掠りでもしたら会談に応じてやろう!出来なければ我は行かんぞ!」
俺は剣を構えた。
「舐めておるのか?」
ウルクが真剣な顔になった。
「そのようなつまらん剣ではなく勇者の剣を使え。」
俺はユキナから勇者の剣を受け取った。
「そうだ、それでいい。その剣は我を滅ぼすことができる剣だ。これで一応対等な戦いとなるだろう。」
ウルクはそう言うと一気にこちらに突っ込んできた。
俺は剣で受け止めたが力が尋常ではない。
そのまま吹き飛ばされ壁に激突した。
意識が朦朧とする。
「レビンさん!」
ユキナの叫び声が聞こえた。
「何じゃ貴様。ふざけておるのか?」
ウルクは俺の目の前に来て目を見つめてきた。
「ああ…。そういう事か。貴様記憶を無くしているな?」
「な…なぜそれを…。」
ウルクはため息をつき改めてこちらの目を真っ直ぐに見た。
「レビンよ。目を逸らすでないぞ?」
そういうとウルクの目が赤く光った。
赤い光を見ていると次に指を鳴らす音が響いた。
そこで俺の意識は別のところに飛ばされた。




