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これから・自分たちの意志

 レビンが勇者の剣を抜いて意識を失った翌日、聖堂で私はキザキとヒューイに呼び出された。

「失礼します。」

応接室に入るとそこには先に二人が座って話をしていた。

私はキザキの後ろに立つと

「ユキナ様、座ってください。」

そう言い、ヒューイさんが席を用意してくれた。

私はキザキの顔を見るとキザキは座るよう目配せをしたのを確認して椅子に座った。

「ヒューイさん、話しというのは何でしょうか?」

キザキが話を切り出した。

「まずは、知らなかったこととはいえ、ユキナ様に対する数々のご無礼、大変申し訳ありませんでした。」

ヒューイが深々と頭を下げた。

私は驚いてしまい声が出なかった。

「仕方ありませんよ。まさか奴隷が巫女だなんていくら聖堂を任されていたとしても気付けるものではありません。」

キザキが代わりに答えた。

「しかし、一体何故巫女様が奴隷を…?」

「このユキナが巫女とわかったのはごく最近の事なんです。とある事情でこの杖を使う機会がありまして。」

そう言って杖をテーブルの上に置いた。

「こ、これは!」

ヒューイが身を乗り出して杖を見た。

「そうです。巫女しか使用することが出来ないと言われる破邪の杖です。これを使用したのを私だけでなくルーベル様も目撃しました。」

ヒューイはまじまじと私の方を見た。

「レビンさんと言いましたか。彼にユキナ様が触れた瞬間剣から強烈な光が発生しました。聖堂に伝わる勇者様の言い伝えで『勇者の剣は一人では抜けない。巫女の力が必要』と記載されたものがあります。その言い伝え通りのことが目の前で起こった事…。正に奇跡としか言いようがありません。」

ヒューイは完全に私を巫女だと信用したようだ。

「キザキ様、そこでご相談なのですが。」

ヒューイが改まってキザキに話し始めた。

「ご存じの通り、聖堂では巫女様を神の次に崇めております。その巫女様が奴隷というのは聖堂の代表者として耐え難いことです。そこでユキナ様を奴隷から解放して頂けないでしょうか?」

ヒューイの突然の申し出に私は動揺を隠せなかった。

「いきなり解放と言われましてもこちらとしてもユキナはキザキ商館にとって最早大切な人間です。巫女という立場がわかったからと言って聖堂の一方的な都合で解放する訳にはいきません。」

「大切…ですか…。それは奴隷としてということですよね?人以下のように扱われる奴隷という立場で巫女のユキナ様を飼い殺すということですか?そんなことはあってはなりません!」

ヒューイがかなり熱くなって話を続けた。

「そもそもユキナ様が巫女と分かった時点でどうして聖堂へ報告が無かったのですか?報告頂ければすぐにでも迎えに行き聖堂で受け入れる準備を整えましたのに。キザキ様は奴隷商人でしたよね?巫女という価値の付いたユキナ様を高額で売る為に解放しないつもりですか?そんなことが許されて言い訳がない!」

ヒューイが捲くし立てるようにキザキを問い詰めた。

キザキは黙って聞いていた。

「キザキ様には今までよくして頂きました。」

気付くと自然と口が動いていた。

「何も知らない癖に勝手な事ばかり言わないでください!確かに奴隷という立場かもしれませんが私はキザキ商館に来てから一度も自分が不幸なんて思ったことはありません!」

「し、しかし…。」

ヒューイが何かを言おうとしたが私は止まらなかった。

「キザキ商館での仕事は忙しかったですが充実しています!食事も寝る場所も与えて頂いて何も不満はありません。それどころか色々な仕事をさせて貰えたお陰で出来ることも増えました。商館でも仕事でも素敵な出会いもありました。間違いなくキザキ様のお陰です。」

キザキも驚いた顔をしている。

「それを勝手にキザキさんを悪者みたいに言って…。私が巫女と分かる前はただの奴隷として見て冷たい目を向けたあなたにキザキ様を悪く言う資格なんてありません!訂正してください!」

ヒューイはいきなり私に言われたことによってショックを受けたようだ。

「ヒューイさん、1つ宜しいですか?」

キザキが口を開いた。

「ユキナを奴隷から解放して巫女として聖堂に留めたいという事はわかりました。それからどうするつもりですか?」

「それから?」

ヒューイが我に返った。

「そうです。聖堂に留めて何をさせるつもりなのですか?」

「そ、それは巫女として、神の使いとして迷える人々に道を示し、正しい道に導く先導者として…。」

「具体的には?」

「そ、それは…。」

ヒューイが口ごもる。

「具体的に何かがあるという訳ではなく、巫女だからという理由で聖堂に留めるつもりだったのですか?」

「そ、そのために聖堂はある…。」

キザキがテーブルを叩いた。

私もヒューイも驚いて固まってしまった。

「私が悪く言われるのはいくらでも構いません。しかし何の考えも無しにユキナを聖堂に縛り付けようとするのは許せません。その為に聖堂はある?聖堂はユキナを縛り付けるための場所なのですか?そんなバカな話がありますか!」

こんなに激情に駆られるキザキを見るのは初めてだ。

「ユキナは私の商館で大切に育ててきた一人です。奴隷だの巫女だの少なくとも商館の者にとっては関係ありません。」

もはやヒューイから言葉は発せられなかった。

「ユキナ!」

「はい!」

突然声を掛けられ飛び上がりそうになった。

「あとは、お前の意志次第だ。お前はどうしたい?」

突然の質問に頭が真っ白になった。

しかし、聞かれていることは分かっている。

このまま奴隷としてレビンやキザキと共に進むか、聖堂で巫女として人々の先導者とやらになるか。

答えは一つだ。

「私はレビンさんと一緒にいたいです!」

「…。」

「…。」

キザキとヒューイがこちらを呆然と見ている。

自分の顔が熱くなっていくのがわかった。

私は…今なんて言った?

頭の整理が追いつかない。

「ぶっ!ははは!」

キザキが大声で笑い始めた。

ヒューイは相変わらず呆然としている。

「まぁ、そういうことです。ヒューイさん。本人の意志ははっきりしているようなのでこれ以上我々で話をしても意味が無いでしょう。」

キザキは話しながら必死で笑いを堪えている。

ヒューイも諦めたように頷いた。

顔が熱い…。

キザキと一緒に応接室を出るとルーベルが大きな笑い声をあげながら近づいてきた。

「面白いものを聞かせてもらったわ!ユキナ!お前もなかなかやるなー!」

まだ何と言ったか思い出せない…

顔が熱いのも収まらない。

キザキはまだ笑いを堪えながら部屋で休むよう私に指示を出した。

笑う二人を背に私は部屋に戻った。

「あーーーー!」

ベッドにうつ伏せに倒れ込み枕に顔を埋めて叫んだ。

「私はレビンさんと一緒にいたいです!レビンさんと一緒にいたいです!一緒にいたいです…。」

思い出した。

頭の中で言葉が響き渡った。

「あーーーーーーーーーー!」

枕に顔を埋めたまままた叫んだ。

明日からどんな顔をして皆に会えばいいんだろう…。

眼を覚まさないレビンの事を思うと不安だが今は意識が無くてよかったと思ってしまった。

 「うぅ…。」

俺が目を覚ますとそこは知らない部屋だった。

辺りを見渡したが人はいないようだ。

身体を起こすとまだ強い脱力感を感じる。

「レビンさん?目が覚めたんですか?」

ユキナが部屋に入ってきて大声を出した。

「ユキナさん…。ここは?」

「ここは聖堂の部屋です!体調は大丈夫ですか?」

心配そうに俺の顔を覗き込んだ。

「たぶん…。問題ないと思います。」

俺は体を動かしながら答えた。

安心した表情を浮かべたユキナは

「よかった…。いきなり倒れてしまって皆心配したんですよ!」

「すみません…。」

俺は苦笑いを浮かべた。

「体調が大丈夫そうでしたら皆さんを呼びますがどうですか?」

「問題ないのでお願いします。」

俺が答えるとユキナは部屋を出て行った。

皆には心配をかけてしまったようだ。

確かキザキに剣を抜くように言われてから体調がおかしくなったような…。

あの剣は一体何だったんだ?

しばらく考えているとユキナがキザキとルーベルを連れてやってきた。

「その様子だと大丈夫そうだな。」

キザキが俺の様子を確認して言った。

「はい、ご心配お掛けしました。」

「どこまで覚えている?」

「確か剣を抜く指示を頂いて…その後の事はいまいち覚えていません。」

「そうか…。」

キザキが何かを考えるように目を閉じた。

「あの、俺に一体何が起きたんですか?」

不安になり始め聞いた。

「実はお前が抜いた剣な…。魔王を討伐した勇者が使用していた剣なんだ。」

ルーベルの言葉に一瞬頭が固まった。

「あの剣は今まで何人もの勇者候補が抜くことに挑戦したが抜けなかった。儂も何度か見たが有力な者でもピクリともしなかったんだ。あの剣には先代勇者が次の勇者の資格がある者しか抜けないように魔法が掛かっていたそうだ。」

「ま、待ってください!それじゃその剣を抜いた俺は…?」

「間違いなく勇者であるという事だ。」

キザキが俺の目を見て言った。

俺が…勇者?

俺は状況を理解できず呆然としていた。

「まぁ、いきなりそう言われても実感も何もないだろう。今はとにかく休んでくれ。体調が万全になったら国王へ報告に行くぞ。」

「わかりました…。」

全員部屋から出て行って状況を整理しようとしたが何も纏まらなかった。

 「キザキ、お前から見てレビンは大丈夫そうか?」

「と、言うと?」

レビンの部屋を出てルーベルとキザキは応接室で話しをした。

「突然勇者だと言われてもレビンも理解も納得も難しいだろう。しかもモンスターとの共存を考えているレビンにとって勇者という立場がどう影響するか…。勇者が魔王軍と共存を望むなど王国の者からしたら裏切り行為に見られても仕方ないことだ。」

ルーベルの言っていることはもっともだ。

付き合いが長くレビンという人間を知っている我々ですら急展開過ぎて頭が追いついていない。

「ルーベル様の仰ることはもっともです。正直私も整理が追いついていません。」

「しかもよりによって勇者が奴隷という身分というのもな…。お前が何を考えているかわからんが、勇者と巫女がお前のところで奴隷とは。本当に偶然なのか?」

ルーベルがキザキに鋭い視線を向けた。

キザキが暫く考え込み意を決したように言った。

「ルーベル様、あなたを信用して話します。これは国王にもまだ内密にして頂きたい内容です。」

 俺は頭の整理ができないまま部屋で過ごしていた。

これ以上情報が増えても処理できる自信がない。

キザキの話を聞くと結果として俺は勇者でユキナは巫女ということらしい。

英雄譚に出てくる勇者や巫女の話は聞いたことがあるが信じられない。

そもそも記憶を無くす前、俺は何をやっていたんだ?

ユキナについてもどういう経緯で奴隷になったのだろう…。

確か口減らしの為に売られたと聞いたことがあるが…。

勇者と巫女が同時にいるキザキ商館とは何なのか?

こんな偶然あるのだろうか?

考えれば考えるほど頭が痛くなって纏まらない。

キザキから呼び出しが掛ったのはその時だった。

応接室に向かうとキザキ、ルーベル、ユキナが先に待っていた。

「そこに座ってくれ。」

俺は指示された椅子に座る。

「考えてみたか?」

キザキは俺に聞いてきた。

「考えてみましたが…何もまとまってないです。」

キザキは苦笑いを浮かべた。

「俺もルーベル様とも話しをしたが何もまとまっていない。ただ、一つ分かった事はレビンが勇者でユキナが巫女という事実だ。」

確かに…。

「一点、確認したいことがあります。」

「何だ?」

「キザキ商館に俺とユキナさんがいたのは偶然ですか?」

ユキナも気になっていたようでキザキを見ている。

「キザキ商館には代々受け継がれていることがある。その一つが勇者を探すことだ。」

「勇者を探す?」

俺が聞き返すとキザキは頷いた。

「ただし、私の先祖が誰かと約束をした程度のものだ。それを代々受け継がれ使命のように私の先祖たちは考えていたようだ。出現する勇者が冒険者などだったら自然と名が広がるだろう。しかし万が一貧困の家庭に生まれ奴隷になるような事になったら魔王軍との戦いと関係ないところで日の目を見ぬまま死んでしまうかもしれない。深読みをし過ぎた先祖が奴隷商人を始めたのだ。」

「なんか…ある意味凄いですね…。」

俺は正直に言ってしまった。

キザキは笑いながら続けた。

「確かにな…。だからうちの商館は自分で言うのもなんだが奴隷の扱いはいい方だろう?万が一勇者が来たときに厳しい奴隷環境においてしまったら意味がないからな。だが、レビンがうちに来たのは本当に偶然だ。うちに来てから面白い男だとは思っていたがまさか本当に勇者とは…。」

「それで…。勇者を見つけたらどうするつもりなんですか?」

「これ以上は今は言えない。事情があってな。」

そう言って寂しそうに笑った。

「それでここからが本題だ。」

ルーベルが突然会話に入ってきた。

「お前が勇者と分かった以上国王へ報告する義務がある。そして先日の四天王との会談によって魔王と直接会う可能性が高くなった。勇者である事がわかった上でレビンに聞きたい。勇者とは魔王を討伐できる人間の希望だ。その勇者が魔王軍との共存を願っている。その考えは今でも変わっていないか?」

「はい。」

俺は迷わず答えた。

勇者の剣が抜けたからと言ってモンスターを討伐するとか魔王を討伐するという正義感は特に湧いていない。

基本的に今までと何も変わらない。

「それが人間の希望を裏切ることになってもか?」

「裏切ることになるでしょうか?」

「何?」

ルーベルが訝し気な顔でこちらを見た。

「今人間は魔王軍を討伐し人間が安全に暮らせる世界が来ることを望んでいると思います。私たちが魔王軍と会談を行い共存の道が開ければ人間も魔王軍も安全に暮らせる世界が来ます。」

「綺麗ごとだな。」

「俺も綺麗ごとだと思います。ですが、今その綺麗ごとが現実になる可能性があるのですからそれに賭けてみてもいいのではないでしょうか?」

「失敗すれば魔王軍と戦わずに和平交渉も失敗した愚か者ということになるが。」

「私は奴隷です。今更そんなことを他人に思われても何とも思いません。私は私の身近な人が平和で幸せに暮らしてくれれば満足です。」

俺は素直な自分の気持ちを話した。

ルーベルは暫く考え込んだあと急に大笑いした。

「やはり何も変わらなかったな!キザキ!」

ルーベルがキザキの方へ視線を移すと微笑んでいた。

「レビンとの付き合いも長くなってきましたからね。では、今後の事を話しましょうか。」

キザキが改まって話し始めた。

「まず今回のレビンが勇者とわかった件、こちらに関しては国王はもちろん魔王軍四天王にも秘密にしましょう。」

「え?」

思わず俺は声が出てしまった。

「国王に話せば何故魔王を倒そうとしないかを追求されるだろう、お前がいくら共存を望んでも国を挙げて勇者として祀り上げられたら行動し辛くなり魔王軍にも情報が入り共存の道は限りなく難しくなるだろう。そして魔王軍四天王や魔王に知られた場合、向こうからすれば勇者は魔王軍の脅威でしかない。危険な芽は潰しておくということになりかねない。その場合も結果はどうあれ戦闘になり共存の道は閉ざされてしまう。」

キザキの言っていることはもっともだ。

「そこでレビンが勇者とわかったことは今いるメンバーだけの秘密事項とする。ヒューイさんに関しても他言無用の了承を得た。」

本当にキザキは仕事が早い。

これから何が起こるかわかっているかのように先回りをしている。

「ルーベル様にも先ほど話して了承を得ている。あとはレビンとユキナ次第だ。」

一旦キザキは間を置いてから話し始めた。

「レビン、ユキナ。一旦自分の状況を整理してからお前たち自信で答えを出して欲しい。」

ユキナと目を合わせて頷いた。

「俺たちは…キザキさんの指示に従います。」

キザキが首を横に振った。

「そうではない。お前たちはその気になればそんな奴隷の首輪を外して自由な暮らしを手に入れることもできる。極端な話、隙をついて私を殺してしまえばいつでも解放されるのだ。」

考えたこともなかった発想に俺は気分が悪くなった。

「そんな事考えたことありません!」

「分かっている。意地の悪いこと言ったな。すまん。」

キザキが頭を下げた。

「ただ、お前たち、特にレビンに関しては記憶が無いという事もありとても従順だ。そのせいで俺の指示を待つことが当たり前になってしまっているんだ。しかしさっきも言った通りお前たちにはお前たちの人生がある。考え方がある。自分たち自身で考えて答えを聞かせてくれ。あまり時間は取れないができるだけ国王への報告などは遅らせる。」

そう言うとキザキは立ち上がり話し合いは終わった。

ユキナとも話したが一旦部屋に戻りお互い頭を整理することにした。

 部屋に戻って一旦頭を整理しようとしたがいくら整理しようとしても絡まるばかりで一向に整理できる気がしない。

熱が出そうになってきたので部屋を出て聖堂に庭に出た。

綺麗に整頓されており名前も知らない花が咲いている。

ぼーっと眺めているとヒューイが通りかかった。

頭を下げると真っ直ぐこっちに向かってきた。

「レビンさん、こちらにいらした早々に失礼な態度を取ったことをお詫び致します。」

そう言っていきなり頭を下げた。

「ちょっと、やめてください!」

驚いて慌ててヒューイに言った。

ヒューイは真っ直ぐこちらの目を見つめ

「奴隷と言う立場を見ただけで判断しあの様な態度を取ったことが恥ずかしいのです。蓋を開けてみればレビンさんは勇者、ユキナ様に至っては巫女ということがわかりました。本当に表面でしか物を見ていたと実感しました。」

「仕方ないことですよ。俺もユキナさんも誰がどう見ても奴隷ですし、勇者や巫女だなんて誰も想像できないです!」

「しかし、キザキさんとルーベル様は違った。あの2人はレビンさんとユキナさんの中の何かを見ていたのでしょう。」

確かにあの2人は最初から態度が全く変わらない。

「何が見えているんでしょうね…。」

ぼそっとヒューイが呟いた。

「ルーベル様とキザキさんと話し今回の件、内密にしておくこと伺っております。恐らくあの様子だとルーベル様たちはレビンさんとユキナ様の意志を尊重しようとしているのがわかりました。」

ヒューイも冷静になるとかなり頭の回転は早いようだ。

「キザキさんが恐らく2人の判断に任せようと思ったのはあなた達の意志を尊重したいという気持ちを自分たちが納得できる判断、行動が出来るようになってほしいという想いがあると思います。どうぞ、じっくり考えてください。」

ヒューイは今までで一番優しい笑顔をこちらに向けて去って行った。

自分が納得できる判断、行動か…。

その場に留まって景色を見ているとまた声を掛けられた。

「レビンさん。」

そこにはユキナの姿があった。

「何か大変なことになってしまいましたね…。」

ユキナが俺の横に立ってぽつりと呟いた。

「そうですね。」

「レビンさんは勇者の剣を抜いて勇者という事がわかったみたいですけど何か変わりましたか?」

「正直、何も変わってないと思います。少なくともここに来る前から考えてる魔王軍との共存やキザキ商館でお世話になったことなどに関して考え方に変化はありません。ユキナさんはどうですか?」

「レビンさんと同じです。巫女と言われても少し杖のお陰で魔法が強くなっただけですし基本的には何も変わりません。キザキ商館で奴隷生活を送りましたが奴隷と言うにはあまりにも贅沢な生活を送らせて頂きました。その御恩は忘れませんし、レビンさんの言う魔王軍との共存についても私は前にも言った通り信じてついていくだけです。」

そう言ってユキナが笑顔を見せた。

「お互いキザキ商館でお世話になったことを強く感じてるって事ですね。」

俺もユキナに笑顔を向けた。

「色々考えても結局正しい答えなんてわかりません。何を選んでも失敗すれば後悔はするでしょう。だったら自分がやって後悔の無い本音を言います。」

俺は覚悟を決めた。

「魔王軍との共存計画を継続する。その為に国王や四天王に勇者であることを隠して魔王との会談に備えようと思います。四天王たちが魔王を説得してくれることを祈りましょう!これは俺の意志だ!」

初めて自分できちんと考えて答えを出した気がした。

ユキナは満面の笑顔でこちらを見た。

「私はあなたについていきます!」

ドキっとした。

ユキナもはっとして顔を背けた。

翌日、ルーベル、キザキに声を掛け応接室で自分たちの考えを話した。

「本当にそれがお前たちの出した答えでいいんだな?」

「はい。」

俺とユキナは返事をした。

「では、国王には勇者の件については内密して報告を行う。その後、魔王と四天王の話し合いがどうなったか聞きに西のダンジョンへ行くぞ。」

「簡単に内密というがばれれば反逆罪では済まないぞ。」

ルーベルがくすくす笑いながら言った。

「今更ですよ。」

キザキも苦笑いをした。

「では明日一旦王国へ戻る!各自出発の準備をしてくれ。」

ルーベルの言葉で解散し翌日の出発に向けて準備をした。

本当に先の読めない…国王や四天王に勇者であることを隠し通せるのか?魔王は会談に応じてくれるのか、穏便に事が進むのか…。

不安は多くあるがこのメンバーならば乗り越えられると根拠の無い自信が沸いていた。

「まずは国王だ…。」

俺は呟きそのままベッドで眠りに着いた。



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