表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/17

王都での報告・陰謀、そして北の都市キシオナへ

 ルーベル邸に戻った一同はまずは今回の件に関して整理することにした。

ルーベルはセオリーから不在の間の情報を聞きに別の部屋に移動した。

セオリーに聞かせる訳にはいかないので俺たちから引き離したというのが本音だ。

「まずは話しの整理をしようか。」

キザキが話し始めた。

「今回の会談で四天王全てに会う事ができた。西のダンジョンの主メディウス、東のダンジョンの主シーザー、南のダンジョンの主レイス、北のダンジョンの主ミューレ。話を聞いていた限りではメディウスはレビンにかなり興味を持っておりそれ以外はあまり人間に関心を持っていないように感じた。シーザーに関しては敵意を強く感じた。」

「俺も概ね同意見です。でもまさか今回の件、俺の考えをあそこまで興味を持たれて魔王にまで話すっていうのは想定外でした。あくまでメディウスの興味の範疇だと思っていたので。」

「俺も聞いていてあの興味の持ち方は異常だと感じた。もしかしたら昔の勇者の英雄譚が何か影響しているのかとも考えたがまだ何もわからないな。」

キザキが眉間に皺を寄せた。

「俺は全くの未知なのが北と南の四天王です。南のレイスに関してはまだしも北のミューレは姿さえはっきり見せてくれませんでしたからね。」

「人見知りと言っていたが何か隠しているのかもしてないな。今回会談を行い人間側にも魔王軍側にもメリットの話がある内容で会談は終わったがまだまだ気を緩められる段階ではない。」

「はい。」

「まぁ、これ以上は憶測を出ないから話しても仕方ない。今後の方針について話すぞ。今回の事で動かなければならないことがある。まず、ルーベル様に呪いの指輪を渡した者を探し出し捕らえて事情を聞く。」

「これに関してはルーベル様が心当たりがありそうでしたね。」

「そうだな。それも含めてルーベル様も交えて話す必要があるだろう。」

「二つ目は国王の説得ですね。」

「そうだ。正直ルーベル様は有能な方で国王の信頼も大きい。それでも今回の件は慎重に話を進めなければならん。一歩間違えればルーベル様の立場まで悪くなるどころか反逆者になってしまうからな。」

本当に慎重にいかねば魔王軍の共存どころか大きな戦争に発展しかねない。

「それと魔王軍側の問題ですね。」

「そうだ。」

キザキが頷いた。

「この世界で魔王が存在することは間違いない。だが、その素性などに関しては全くと言っていいほど情報が出ていない。四天王が今回の件を直接交渉してくれることになったがどうなるかは全くわからん。」

「こればっかりはメディウス達が上手く伝えて協力的に動いてくれることを祈るしかないですね。」

「一旦こんなところかな。ルーベル様には今まとめたことを後ほど報告する。明日以降でルーベル様が集めた情報も合わせてもう一度話し合うぞ。」

「わかりました。」

俺は応接室を出て部屋に戻ろうとした。

そこでユキナとばったり会った。

「レビンさん!」

どうやら洗濯物の途中のようで大きな荷物を抱えていた。

「持ちますよ。」

そう言って俺は荷物を受け取った。

「ありがとうございます!」

ユキナは嬉しそうにこちらを見上げて言った。

「キザキさんとの話し合いは終わったんですか?」

「はい、明日ルーベル様も交えて続きをすることになりました。」

「そうですか…。」

ユキナは呟いた。

「四天王の方々…。何というかすごかったですね…。」

ダンジョン経験が初めてにも関わらずいきなり四天王全員と会ったのだ。

さぞ強烈に映っただろう。

「ユキナさん、大丈夫ですか?辛くないですか?」

俺が聞くと

「全然大丈夫…というわけではないですが大丈夫です!レビンさんについて行くって行ったじゃないですか!」

満面の笑顔でこちらを振り返るユキナが眩しかった。

「そう…ですね。ありがとうございます!」

俺は気恥ずかしくなり目を逸らし洗濯物を運んで先を歩いた。

明日の打ち合わせ次第ではすぐにでも国王に会うことになるだろう。

気を引き締めておこうと心に誓った。

 翌日、ルーベル、キザキ、ユキナ、俺の四人は朝早くにルーベル邸から馬車で移動をした。

馬車は俺が操縦し、後ろに3人乗せている状態で走らせた。

これからの予定を話すに当たって人に聞かれないようにするためだ。

昨日、ルーベルはセオリーからの情報を全て確認した。

ルーベルに指輪を渡したのは王城の貴族だったらしいがこちらはダミーで裏でルーベルに指輪を渡すよう指示した者がいたらしい。

その相手に関してもルーベルはだいたい察しがついているようだ。

セオリーが調査した結果、ルーベルの存在自体をよく思っていない者も少なくないようだ。

血筋でなった貴族ではなく実力で成り上がったのが気にいらないというある意味貴族らしい思いがあるらしい。

「どうするんですか?」

キザキがルーベルに聞くとルーベルは不敵な笑みを浮かべて答えた。

「問題ない。」

それから昨日俺たちが話し合った内容を伝えるとルーベルは道具袋の中から笛を出し吹いた。

すぐに鳥が飛んできてルーベルの肩に止まる。

以前キザキが使用したものとは違いこれは国王へ緊急で連絡を取る際使用が許可されたものらしい。

ルーベルは一枚の手紙を鳥の足に巻きつけ飛ばした。

「時は一刻を争うかもしれん。すぐに王城に向かうぞ。」

俺は馬車の手綱を振りスピードを上げた。

 王城に着くと門番が馬車の前に立ちふさがった。

「通行書を見せろ。」

事務的な言葉を掛けてきた。

そこにルーベルが馬車から顔を出した。

「ル、ルーベル様?」

門番は驚き声をあげた。

「火急の要件だ。すぐに通してくれ。」

「し、しかしルーベル様とはいえ通行書無しで通す訳には…。」

「国の一大事だ!これ以上の問答は不要。行け!レビン!」

俺は馬車を走らせた。

後ろで門番が騒いでいるのが聞こえたが今は仕方ない。

城門を通りルーベルを先頭に王城の中に入った。

城の兵士たちはどうしたらよいかわからずこちらを遠巻きに見ている。

そんなことは気にせずルーベルはどんどん奥へ進んでいき俺たちも続いた。

王室の前に着くとルーベルは大声で

「国王!ルーベルです!入室の許可を頂けますか?」

と城中に響く声で叫んだ。

勢いよく王室の扉が開き中から騎士団長のアーモが真っ赤な表情で顔を出した。

「ル、ルーベル殿!何事か?」

アーモの肩を押し退けルーベルは中に入った。

奥にはザギール国王と宰相のモンテの姿があった。

「何用か?」

国王は怒りの表情を見せルーベルに怒鳴った。

ルーベルは膝をついて頭を下げた。

その隣にキザキ、俺、ユキナも同じように並んだ。

「国王、いきなりの訪問で大変申し訳ありません。火急の用事がございます。」

ルーベルが言うと宰相のモンテが苛立ちながら言った。

「いくら貴族とはいえ限度を超えてますぞ!」

「重々承知でございます。用件が終わりましたらどんな処罰でも受けます。」

「ふぅー。それで、何用だ?」

ザギール国王がため息をついて聞いた。

「国王、話の前に一つ確認がございます。」

「何だ?」

「先ほど火急の鳥を飛ばしたのですが届いておりますか?」

「いや…。届いていないぞ?」

国王は不審な顔を見せた。

「そうですか…。」

「何の話をしているのですか?」

モンテが苛立ったまま聞いてきた。

「待て、モンテ。」

国王がモンテを制した。

「ルーベルよ、先ほど鳥を飛ばしたと言ったな?いつ頃だ。」

「王城へ向かう直前なので数刻前の事です。」

「私も確認致しました。」

キザキが言った。

「奴隷商人風情が口を開くな!」

「よい。」

モンテの言葉を国王が止めた。

「では…、その鳥はどこへ行ったというんだ?」

国王がルーベルに尋ねる。

「私に心当たりがございます。少々よろしいでしょうか?」

ルーベルが国王に確認すると、頷いた。

「では、失礼して…。」

ルーベルは恐ろしいスピードで王室の扉の前にいたアーモを地面に叩きつけた。

「ガッ?!」

アーモは地面に仰向けに倒れた。

起き上がろうとするアーモの胸をルーベルが踏みつけ起き上がらせない。

「これは一体何事か?」

国王とモンテが驚きの表情を隠せず倒れたアーモを見ている。

「騎士団長ともあろう者がこの体たらくか…。情けない。」

ルーベルが呟いた。

はっと我に返ったモンテが大声を上げた。

「は、反逆者だ!衛兵!」

その言葉に応じ衛兵が続々と王室になだれ込んだ。

俺は剣をいつでも抜けるよう剣に手を掛けた。

「待て!」

国王の一喝でその場の全員が動きを止めた。

「ルーベル、事情を説明してもらえないか?」

国王は険しい表情でルーベルを見た。

ルーベルがアーモの服を漁りだした。

しばらくすると一羽の鳥の亡骸を発見した。

それを国王に見せると眉間に皺を寄せ、

「こ、これは…。」

「先ほど私が話した鳥に間違いありません。」

鳥の足から手紙を外し中身を開くとそこには何も書いていなかった。

「どういうことだ?」

国王が訊ねるとルーベルは話し出した。

「実はつい先日私は呪いの指輪を送られ殺害されかけました。」

「何?」

国王の顔に驚きの表情が浮かんだ。

「私の家の者に調べさせたところ、指輪自体はある貴族から受け取りましたがどうやら指示を出していた者がいるらしいと報告を受けました。」

全員が話しを黙って聞いている。

「なぜ私を狙ったのか。それは以前、王都で誘拐事件が起こっていたことに起因します。」

キザキの知り合いの奴隷商人が主犯として捕まった事件である。

「あの事件の時にここにいるレビンが誘拐されそうになった者を救助した際に騎士団員が強引に救助者を連れていこうとしました。その時、偶然私も通りかかり救助者は私が預かる形になりましたが、騎士団員はかなり強引に連れていこうとしたのが気になりました。」

確かに俺が何を言っても高圧的な態度で連れていこうとしたのを覚えている。

「その態度を見てからずっと騎士団が妙な事を企んでいるのではないかと考え私の兵で監視を行いました。その結果。騎士団内に不正な金銭の動きがあることに気づきました。恐らく誘拐事件の補助、もしくは見逃す代わりに金銭を要求していたのでしょう。」

国王は唖然とした顔で話しを聞いている。

「それを詳しく調べ結果が出る直前に呪いの指輪が私に届き迂闊にもつけてしまったことにより呪いを受けました。あれは間違いなく致死性のものでした。ここにいるユキナがいなければ私はその時に死んでいたでしょう。」

モンテも呆然と話しを聞いていた。

「私が回復させて貰えたお陰で調査の続きを家の者にさせることができました。結果としてこのアーモが誘拐事件、呪いの指輪の主犯だと断定できました。私に呪いの指輪を渡した貴族からも証言が取れております。」

「う、嘘だーーーーーーー!」

ここでアーモが大声をあげた。

「国王、信じてください!このアーモ、その様な裏切り行っておりません!」

「しかし、こちらには証拠があるんだ。」

ルーベルはにやっと笑った。

アーモは真っ赤な顔で何やら叫んでいる。

「衛兵!アーモ騎士団長を牢獄へ連れていけ!証拠を確認して処罰を決める!」

アーモは暴れながらも衛兵に連れて行かれた。

残されたのは俺たち4人と国王、モンテのみとなった。

モンテは頭の整理が出来ておらず視点が定まっていない。

「国王、この度は緊急時とはいえご無礼大変申し訳ありませんでした。」

ルーベルに続き俺たちは頭を下げた。

「よい、お主たちのお陰で犯罪者を捕らえることが出来た。まさか家臣から出るとは思わなかったがな。」

少し悲しそうな顔で国王が言った。

「この大変な中誠に恐縮なのですが、国王に報告したい事が御座います。」

「何だ?」

国王は疲れた表情で答えた。

「ここからは国王以外には聞かれたくないので人払いをお願い致します。」

国王はモンテのほうを向き部屋から出るよう手で指示を出した。

モンテは放心状態のまま部屋を出て行った。

「ありがとうございます。」

国王と俺たち4人の本当の話し合いが今から始まる。

 玉座の間では話しづらいだろうという国王の気遣いにより城内の一室を使うことになった。

国王の後に続いて進むと何の変哲もない壁の前で国王が止まった。

国王が壁に手をかざすとそこに扉が現れた。

「こんな仕掛けが城内にあったのですね…。」

ルーベルが関心した様子で扉を見ながら言った。

「隠し部屋や逃走用の通路はいくらでもある。ここはその一つで防音も抜かりない部屋だ。」

中に入るとそこには何の変哲もない部屋だった。

およそ城の中とは思えない造りでキザキ商館の応接室に似ていた。

国王が上座に座り会議は始まった。

「まず、ルーベルよ。アーモの件に関しては申し訳なかった。」

国王が頭を下げた。

「やめてください!国王が頭を下げることはありません!」

ルーベルが珍しく慌てて国王に言った。

「アーモに関しては黒い噂は確かにあった。しかし証拠が掴めず様子を見ることしかできなかった。その結果、貴公には多大な迷惑を掛けてしまった。謝罪くらいさせてくれ。」

国王は弱々しい笑顔でルーベルに言った。

「それで、最初から話してくれるか?」

まずは前回王都に訪問してから再度西のダンジョンへ行って再び四天王メディウスに会った事、その後国王の命により東のダンジョンへ行き今度はもう一人の四天王シーザーに出会ったこと、そこで勇者の英雄譚の続き…人間による勇者殺害を聞かされた事、その後、ルーベルの呪い事件、西のダンジョンで全ての四天王との会談を行ったことを話した。

話終わると国王は頭を抱えていた。

「それで…、国王命令にも関わらず東のダンジョン後すぐに報告が無かったのは何故だ?」

ルーベルが俺のほうを見て話すよう目配せしてきた。

「私が信頼できる者を集めて会談に臨むという事になりました。私がその時に信頼できいると思ったのは主人のキザキさんとユキナさんだけでした。キザキさんの判断を仰いだところルーベル様が国や国王様に対しても影響力があり貴族の中で一番信頼できるという事になりルーベル様に報告に行く事になりました。そこでルーベル様の呪い事件があった為王国内に信用できない者がいることを考慮して国王へ報告の前に確実に信頼出来るメンバーで魔王軍と会談を行うことにしました。」

国王は黙って最後まで話を聞いた。

「事情はわかった。それでレビンよ。お前は本当に魔王軍との共存が可能だと考えているのか?」

国王に問われ少し考えた。

「難しい話だと思います…。直接話してきた私達ですら魔王軍の…特にメディウスの真意がわかりません。もしかしたら国王様と魔王の会談が実現したとしてそこで魔王軍が攻撃を仕掛けてくる可能性も捨てきれません。」

俺は正直に話した。

「ですが、本当に実現したとすれば今まで続いてきたこの理由の無い戦いが終わり無駄な犠牲が出ない世界に繋がるかもしれません。魔王軍にも言われましたがこの幼稚で浅はかな考えが実現する数少ないチャンスだと考えております。」

「しかし、勇者殺害の話も魔王軍の真意もそうだが事実確認が出来ないことが多すぎる。一歩間違えればこの国は落とされ他国への被害にも繋がる事態になるぞ。」

「国王様、よろしいでしょうか?」

キザキが口を開いた。

「なんだ?」

「これは実際、西のダンジョンで行われた会談のときに出た話なのですが四天王の一人メディウスはしきりにレビンに興味を抱いていました。会談以前からのようです。」

「それがどうしたと言うんだ?」

キザキは国王に近寄り何かを耳打ちした。

「それは事実なのか?」

国王が驚きの表情を浮かべた。

「確かな証拠はありません。ただ、可能性があるという話です。」

「…。」

国王は暫く考え込んだ。

「何を言ったのだ?」

ルーベルがキザキに聞いたがキザキは横に首を振って答えなかった。

「わかった。ルーベルよ、この者たちを北の都市キシオナの聖地に連れて行け。」

「聖地…ですか?」

ルーベルは困惑した顔を浮かべた。

「キザキが言ったことが事実なら行けばわかる。」

国王は立ち上がり全員に言った。

「これは国王命令だ!ただちに聖地へ行け。そこからはキザキに任せる。皆キザキの指示を聞くように。」

「はっ!」

全員が膝をつき頭を下げた。

キザキは国王に一体何を言ったのだろう…。

疑問は増えるばかりだが、一同はすぐに準備を整え馬車で北の都市キシオナへ向かった。

 キシオナへの道中何度もルーベルがキザキに国王に何を言ったのか聞いたがキザキは答えなかった。

よほどの事なのだろう。

キザキはルーベルを絶対的に信頼しているにも関わらず話さないというのは余程のことだ。

「どうなっちゃんですかね…。不安です。」

ユキナは暗い顔をしていた。

この度でほとんどしゃべる事の無かったユキナは一体何を考えていたのだろう。

不安や愚痴を言う相手もおらず、出てくる会話の内容は国家機密レベルのものばかり、1人で抱え込むには重すぎる内容だ。

「ユキナさん、大丈夫…なんて軽々しくは言えないですけど皆いますから。決して一人にはしません。」

精一杯考えて出た言葉がこれだけだった。

自分の不甲斐なさに落ち込みそうだ。

しかしユキナは先程より明るい顔になり

「そうですよね。皆様いらっしゃいますもんね…。」

そう言ってこちらに笑顔を向けてくれた。

強い人だ…。

改めてユキナへの気持ちが強くなった。

「そろそろ着くぞ!」

キザキの言葉に前を見るとそこには大きな聖堂があった。

 キザキを先頭に聖堂に近づくと兵士が出てきた。

「何者だ?」

兵士が警戒した視線をこちらに向ける。

「これを。」

キザキが紙を渡すと兵士は驚いた顔をした。

「こ、これは…。失礼しました。」

兵士は慌てて聖堂に入っていった。

しばらくすると神官のような恰好をした一人の男が出てきた。

「これは本当なんですか?」

男がキザキに確認する。

「それを確かめるために来ました。」

キザキが答えるとふっと男は笑顔を見せた。

「それはそうですね。不躾に失礼しました。私はヒューイと申します。この聖堂を守る立場にある者です。」

優しい笑顔が印象的な男性だ。

「して…、試したい方というのは?」

「レビン!」

俺はキザキに呼ばれてすぐにキザキの横に立った。

「こちらの者です。」

キザキが俺を紹介するとヒューイは俺をじっと観察した。

「奴隷…ですか…。」

ヒューイの顔が曇った。

「何か問題でも?」

キザキが尋ねるとヒューイが苦い顔で答えた。

「奴隷を聖堂に入らせることは禁止されています。いくら国王命令とはいえ…。そもそも奴隷にそんな資格があるとは思えません。」

先程の優しい印象から一転して事務的な口調で話す。

「国王命令が聞けない…ということですか?」

「そこまでは言っておりませんが…。卑しい奴隷を聖堂に入れるのは…。」

はっきりしない答えが返ってくる。

「では、この者を見てどう思いますか?」

そう言い、ユキナをヒューイの前に立たせる。

「え、えっと…。」

ユキナは困った表情で俺のほうを見た。

「ただの奴隷の女性ですね…。」

ヒューイは変わらず事務的に答えた。

「では、この者が巫女だとしてもその態度でいられますか?」

「巫、巫女様…だと…?」

ヒューイの表情が一変した。

焦りと動揺が容易に伝わってくる。

「なぜ巫女様が奴隷に?貴様は一体何をしているんだ?」

ヒューイがキザキに掴みかかる。

そのヒューイをルーベルが押さえつける。

キザキがヒューイの前に立ち話し始めた。

「詳細は機密事項のため話せません。ただ、聖堂は巫女を神の次に崇めるべき対象としているはず、それを奴隷という立場にしているのは大変心苦しいですが今は黙ってご理解頂きたい。」

ヒューイは納得のいかない顔を浮かべているが国王の書簡と巫女の出現で必死に納得しようとしている。

「正直…、納得はしていませんし、快く受け入れることはできません。ただ、国王の依頼と巫女様の出現は何かの前触れかもしれません。お入りください。」

ヒューイは聖堂の奥へと俺たちを案内した。

聖堂の中は広く祈りなどを行なっている者たちもいた。

その脇を通り抜け応接室に通された。

「そこの椅子を移動させて頂いてもよろしいですか?」

俺は言われた通りに椅子を移動させるとそこには何の変哲もない床だった。

ヒューイは構わず壁のタイルを何度か触った。

すると椅子のあった場所に地下道への入口が現れた。

城といいやはり要所には隠し通路などが当たり前のようにあるようだ。

ヒューイが先頭を行き俺たちが後に続いた。

「俺たちどこへ向かってるんですか?」

俺がキザキに尋ねるとキザキは軽く笑みを浮かべ答えてくれなかった。

暫く進むと道が開けて森の中に出た。

脱出口か何かだったのだろうか。

そんなことを考えていると開けた平野に出た。

そこには台座の上に剣が刺さっていた。

俺はその剣を見た瞬間急に心臓が強く打つのを感じた。

「ぐぅっ!」

俺は堪えきれず地面に膝をついた。

「レビンさん?」

心配したユキナが俺に駆け寄る。

ユキナが俺の肩に触れた瞬間、剣が強い光を放った。

「これは…!」

ヒューイが叫び声に近い声を出した。

「ああ、巫女様…。本物だったのですね…。」

ヒューイは涙を流しながらユキナに跪いた。

ルーベルとキザキは強烈な光を放つ剣を見ていた。

「レビン、動けるか?」

「はい!」

俺は声を振り絞って答えた。

正直、意識を保っているのがやっとだ。

「この剣を抜いてみろ!」

もはや誰に言われているかもわからない。

俺は朦朧とした意識の中で剣に近づき剣に触れた。

剣はほとんど力を入れずに抜けた。

しかし、そこで俺は意識を失ってしまった。

「やはり…お前がそうだったのか。」

キザキがぽつりと呟いた。

その言葉を聞き、ルーベルとユキナがキザキを見た。

「これは一体?」

ルーベルが尋ねるとキザキは二人を見て言った。

「今レビンの抜いた剣は英雄譚に出てくる勇者の剣です。」

一同がその言葉に固まった。

「と…いうことは…レビンさんって…。」

ユキナが必死に声を絞り出すとキザキは頷き

「ああ、勇者だ。とにかく聖堂でいったんレビンを休ませてください。」

ヒューイは慌てて聖堂のほうに走って戻っていった。

「一体どうなってるんだ…。」

ルーベルが呟くとキザキは

「今は一旦全員休みましょう。」

そう言いヒューイのあとに続いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ