6話 検証結果:キャンピングカー=チート
「あなた、とんでもないチートですのねぇ」
しみじみと呟きながら、ロザリアはキャンピングカーの車体を撫でた。
時刻は夜明けを少し過ぎた頃。
タイマーは再びカウントダウンを始めていた。
「昨日車体に擦り付けておいた泥が消えておりますわ。
つまり、リセットは車内のみならず車外にも及ぶということ」
昨晩シャワーを浴びて大量に消費したはずの水や、エアコンをガンガン稼動させて消費したはずの充電は、何事もなかったかのように満タンだ。
「リセット時に吸い上げられた魔力の量は昨日と同じ程度。
どれほど消費しようと必要な魔力は変わりませんのね、省エネですわ」
わざと車から離れた位置に置いた某カップ麺のゴミは消えていた。
代わりに、風で舞い込んだまま放置していた木の葉が1枚、出入口の外に落ちている。
「カップ麺はストックの棚に戻って、私が摘んだお花はテーブルの上。
わざと別々にして、車の中と外に分けた宝石とバッグもそのまま。
…もとから車内にあった物はたとえ離れていてもリセット対象で、私が自分の意志で持ち込んだ物は対象外、ということかしら。そして…」
ロゼリアは自分のお腹に手を当てた。
コルセットいらずの薄いお腹が、今は少しだけ膨らんでいる。
「…やっぱりお米のレトルトとカレー味のヌードルでは多すぎましたわ…。
でも、おかげでお腹の苦しさが分かりやすいこと。
リセットの瞬間に車内に残っていても、食べた物…正確には、お腹の中に入った物は対象外。それに対して、食べきれず残してしまった物はリセット対象なのですわ」
ほんの数分前に食べたカレーヌードルのカップとお米の容器は、あたりまえのようにインスタントの棚の中へ戻されてある。
「時間についても、タイマーがゼロになる直前まで対象に含まれるのね」
昨日書き散らしたメモ帳を片手に、項目をひとつひとつチェックしながら満足気に頷くロザリアは、外に出て朝日を浴びながらスンッと表情を消して、冒頭に戻る。
「いくら私が可哀想とは言え、神様ちょっと奮発しすぎではございませんこと?
こんなチートなキャンピングカー、反則だと言われても反論できませんわ!
これちゃんとオオツカ様から許可を頂いてますの?」
いそいそと助手席側にまわり、ダッシュボードの車検証を確認する。
「…そう、オオツカ様が納得なさっているのなら問題ありませんわね」
キャンピングカーの所有者は大塚義則名義だが、使用者の欄にはしっかりとロザリアの名が記載されていた。
「改めまして、ありがたく使わせていただきますわ。
神様とオオツカ様に、この胸いっぱいの感謝を捧げます…」
キャンピングカーはロマンなのです…