25話 職人探し
「アミュレットだぁ!? ンなモン教会のヤツらに頼みやがれッ!!」
「お守りなんぞチマチマ作ってられるほど、ウチぁヒマじゃねぇんだ!!」
「お嬢ちゃんよォ、俺をナメてんのか? あ"ぁ?」
「ほら帰った帰った!!」
取り付く島もないとは、このことか。
ロザリアはガックリと項垂れていた。
かれこれ10人もの職人達から手酷くお断りされてしまったのだから、無理もない。
冒険者ギルドへ出入りするようになって、荒くれ者や乱暴者には慣れたつもりでいた彼女は、しかしここに来て厳しい現実に直面することとなった。
なにせロザリアが出会ってきた男達は、なんだかんだ言いつつ美しいロザリアには割りと好意的かつ紳士的に接してくれていた者ばかりだったのだから。
それが、ここの職人はどうだ。彼らは物作りに魂を売った男達ばかり。ロザリアの美しさには目もくれない。
依頼された品物が、己の腕を奮う価値があるか否かという判断基準しか持っていないに違いない。
そして、その基準でいうとロザリアからの依頼は受けるに値しない、というだけの話。
「お金が足りる足りない以前のお話でしたわ……」
まさか引き受けてすらもらえないとは思ってもみなかった。
失意に暮れるロザリアは、しおれた花の如くしょんぼりと俯きながら歩く。
──それが良くなかったのだろう。気付けば見知らぬ道を歩いていた。
「まぁ、ここはどこかしら?」
先ほどの通りよりも道幅が狭く、しかし路地裏のような陰鬱な雰囲気もなく、どちらかと言うと住宅街といった風情が感じられる入り組んだ道だ。
ちらほらと人通りもあるため、試しに話しかけてみれば案の定ここは住宅街だと言う。
「ほら見えるかい、あの緑の屋根の家。
あそこを右に曲がって道なりに行きゃあ、もとの通りに戻れるよ。
そんで、左に曲がりゃあアタシ達が普段使ってる店や工房が並んでるのさ」
ずんぐりむっくりなドワーフの女性が親切に教えてくれた。
ここで好奇心に駆られたロザリア。彼女が普段使う店や工房とは…?
「表のヤツらは仕事を選り好みしやがって、アタシらが使う包丁だの鍋だのを作っちゃくれないんだ。だからそういうのは裏の工房連中に頼むって決まってんのさ」
曰く、この女性が表と呼ぶ大通りに軒を連ねる工房は、たしかに腕のいい職人が揃ってはいるし客も多いが、それゆえにプライドが高く態度は悪く、客からの依頼を選り好みして、武器だの装飾品だの見栄えが良く価格が高い品物しか作らないのだと言う。
「昔は気のいい連中ばかりだったってのに、どうしてこうなっちまったんだか…。
豪華なモンばっか作って、今じゃあそれしか作れねぇんだ、アイツらは。
お嬢ちゃん、あんなヤツらに依頼したら金銀宝石でギラギラした下品な仕上がりになっちまうから、気をつけな!」
「まぁ、ご心配ありがとうございます。でもご安心なさって、ご婦人。
私、たった今10件の工房からお断りされてきたばかりですのよ」
「まァー!! かわいそうに、アンタ頼むところ間違えたんだよ!
さっき教えたろ、アタシらが使ってるって工房ってヤツ。そっちに頼みな!
そこの連中はどいつもこいつもホンモノの職人さァ。
アンタが欲しいモン、きっと作ってくれるに違いないから」
「そうさせていただこうかしら? ご親切に、ありがとうございます!」
なるほど専門が違ったのか、そりゃお断りされるよね。
ロザリアは納得した。
アミュレットはペンダントのように首から下げる物なので、アクセサリーなどの装飾品と考えて、そういった品を得意とする工房へと足を運んだのだが、そこで軒並み断られてしまった理由は、そもそも依頼内容がお門違いだったのね、とロザリアは腑に落ちた。
ロザリアはかつて貴族の令嬢であったため、そういう事情ならばすんなり納得できる。
最近では平民の店に慣れてしまってすっかり忘れていたが、そういえばお店とは本来そういう専門家が営むものだったっけ。
ドレスの店、アクセサリーの店、靴の店、手袋の店、化粧品の店、香水の店…。
それぞれに専門が違っていて、それゆえに深い知識と確かな技術を持ち、非常に高いレベルのオーダーにも応えてくれる──ロザリアにとって、店とはそういうものだった。
ご婦人の話を聞く限り、表通りに軒を連ねる工房や職人も同じように感じられた。
職人の国として有名になるにつれ、きっと様々な客がやって来ては色んな品々の依頼を受けてきたのだろう。
そうして知識が増え、技術が研ぎ澄まされ、やがて多岐に分かれて、それぞれの専門家となったのだろう。
そんな専門家達の中に、アミュレット専門がいなかった、というワケだ。
なるほどね。それなら仕方ないよね。ロザリアはウンウンと頷いて気持ちを切り替えた。
さっきのご婦人としては、金物なら金物全般、革製品なら革製品全般を扱える者こそが真の職人だという。そして、教えてくれた先にはそんな職人がゴロゴロいるんだとか。
「行ってみましょう」
そこならばきっと、ロザリアが求めるアミュレットを作ってくれる人がいるに違いない。
期待に高鳴る胸を押さえて、彼女は緑の屋根の家を左へと曲がった。
皆さんは、ドワーフ女性といえば合法ロリ派ですか?
それとも作中みたいなずんぐりむっくり派ですか?




