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23話 キャンピングカー持ち運び問題

ちょっと間が空いてしまいました…。

私生活の方が忙しくなりつつあるので、今後もちょくちょく投稿の間隔が空くかもです┏〇゛ペコ

「船上に咲く一輪の花、キュア・ロザリア…」


 ヨシノリ・オオツカは、テレビ番組をBGM代わりとして適当に流しておくタイプだった。

 そのため、記憶の中で繰り返し聞こえたセリフをなんと~なく覚えてしまったロザリア。


「中々よろしいのではなくって? 今度から私の偽名にしましょう」


 ロザリア・シュネー改めキュア・ロザリアが爆誕した瞬間であった。


「キャンピングカー立派すぎ問題」を、車体を小さくするという反則ワザとも言える方法で乗り切った彼女は今、川の流れに揺られながらの船旅をのんびり楽しんでいた。…他の乗客や船乗り達から注目されているとも知らずに。


 やれ美人だの女神だの、ロザリアを礼賛するざわめきは、しかし彼女の耳に届かない。

 公爵家の令嬢だったロザリアは、注目の的となることも噂の渦中にいることも慣れっ子なので、いちいち気にしないのだ。


「小さくするも大きくするも、思いのままだなんて。

 神様もオオツカ様も、どこまで私に甘いのかしら。ありがたいことだけれど」


 親からもこんなに甘やかされたことはないのに。

 なんだか面映くて、クスリと笑みをこぼした彼女は考える。


「どこかでいい職人を見繕って、小さくしたキャンピングカーを入れておける物を作らせましょう」


 ヨシノリ・オオツカが一時期ハマってコレクションしていたミニカーと同じか、あるいはもう一回りほど小さなこのキャンピングカーを、うっかり無くしてしまったらと考えるだけで胃が痛くなってしまうほどの不安感に襲われるロザリアは、これを急務として隣国に渡ったらすぐに行動しようと決意した。


 幸い、エンリオ小国郡は10もの小さな国々が集まって協力体制を敷く土地。

 エルフの国や獣人の国、商人の国や冒険者の国、そんな中にドワーフ達による職人の国があるのだと、同じ船に乗っているやたら鼻の下を伸ばした親切な商人が教えてくれた。


「スナーヴル国…、遠いのかしら?」


 ドワーフを代表に据えた職人の国、スナーヴル。

 国民のほとんどが頑固なドワーフか、ドワーフと見紛うほど頑固な人間だというその国には、物作りを生業とした工房が数え切れないほど軒を連ねてひしめき合っているらしく、そこでならきっと良い職人が見つかるはずだ。


「どんな入れ物を作らせようかしら」


 ほわんほわんほわわ~ん、とロザリアは想像する。


 まず箱は論外だ。箱ごと落としてしまえばは意味がないのだから。

 落とさず持ち運びできることを、絶対に譲れない条件だと職人へ伝えよう。

 であれば、どんな形にすべきだろうか。


「入れ物に金具を付けて、キーホルダーにするのはどうかしら?」


 幼き日のヨシノリ・オオツカがパーキングエリアに立ち寄った際に、必ずと言っていいほど親にねだって買っていた、自分の持ち物へ取り付けることができる装飾品だ。

 それならば、ロザリアが家から持ち出したバッグにチャームとして付けておけるのでは?

 必要最低限の物だけをバッグへ入れて、そのままキャンピングカーを持ち運べるという寸法だが、しかしこれには1つ問題が。


 …それは、バッグを紛失したら終わりだということ。


「いけませんわっ!

 これでは箱と同じで、落としたり盗まれたりする危険が考えられますもの」


 キーホルダーは駄目だ。そう判断したロザリアはこの案を秒でボツにした。


「うぅ~ん…、なにがいいかしら。

 落としにくい物、盗まれにくい物、身に付けられる物、…はっ!」


 これだ!! ロザリアは閃いた。


「アミュレットですわ! アミュレットならば全て解決ですわっ!」


 アミュレット。つまりお守りだ。


 木の板に神の紋章を彫刻し、皮紐を通してペンダントの形にするのが一般的なそれは、平民でも簡単に手に入れることができるほど安価な品であり、通常は首から下げて服の中へそっと隠しておくもの。


 平民に混じって歩く機会が増えてからというもの、財布をスられた、荷物を奪われた、という話ならばいくらでも耳にしたが、アミュレットを取られた…なんて話は聞いたことがない。そりゃそうだ、お守りなど盗んで売ったところで二束三文にすらならないのだから。


 さらに。アミュレットをロケットペンダントの形にして、亡くなった人の遺髪を納め故人を偲ぶ者や、小さなピルケースとして大事な薬を持ち歩く者もいるため、尚更ロザリアが出した条件にピッタリなのだ。


 小さいといえど、ミニカーを胸元にぶら下げると思えばちょっとゴツいかもしれないが、キャンピングカーの重要性を考えれば、そんなもん些事である。

 今はとにかく安全に、この小さなキャンピングカーを持ち運びたいのだ。


「決めましたわ。アミュレットにしましょう!」


 アミュレットというからには神の紋章を掘り込む必要がある。

 しかしロザリアの心は決まっていたため迷わない。


「旅人を守護し、旅路を照らしてくださる旅の神の紋章にしましょう」


 ヨシノリ・オオツカも、キャンピングカーのダッシュボードに交通安全のお守りを入れていたのだから、ロザリアもそれに倣おうというのだ。

 なにより、自由に旅することを選んだ彼女にこそ、旅の神のアミュレットは相応しい。


「そのためにもまず、お金を稼がなくてはいけませんわ」


 船に乗る際にキャンピングカーの運搬料金が浮いたとはいえ、それでも衣食住に困ることのないロザリアが所持しているお金は基本的に少ない。

 職人へオリジナルのアミュレットを依頼することを考えると、ちょっと心許ない気がする。


 やんごとない身分の令嬢だったロザリアは、お金のことに詳しくない。

 詳しくないが、以前ちらほらと聞いたことがあるのだ。

 アクセサリー1つで平民が1年間遊んで暮らせる、と。


 アクセサリーがどの程度のランクの物を指すのかは知らないし、平民の生活費がいかほどかも分からないが、少なくとも現在のロザリアの所持金では足りないことだけは分かる。


 よくある板切れに紋章を掘っただけのアミュレットならともかく、職人に頼んでオリジナルを作らせるからには、もうちょっとあった方がいいよね…と考えたロザリアは、大河を無事に渡りきったらすぐ冒険者ギルドへ駆け込もうと決意した。

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