96話 神聖魔法
「到着しましたご主人様、この辺りでいいですか?」
「うん、このまま魔物の上を飛び続けて」
フレイヤの背中に乗って魔物の軍勢がいる場所まで飛んでやってきた
報告通りそこには大量の魔物が発生していた。不可視化の魔法でこちらが見えないようにしながら様子を窺う
殆どの魔物は後ろに控えてもらっている兵士の人達や冒険者でも対応できる大した事のない魔物。しかし所々に手に負えなさそうな強力な魔物の存在も100体程確認できた
その1体1体が金等級に相当するであろう魔物だ。あれが王国内に入ってしまったら一溜まりもない
飛行系の魔物はいない。空中は気にせず地上にだけ集中すればいいのはかなり助かる
これだけの数がいて1体も動くことなく待機しているということはやはり何者かに使役されているとみて間違いないだろう
その犯人はここからでは見当たらない。ここの様子を窺える距離にはいると思うが、魔物の気配が邪魔をして上手く感知出来ない
とにかく相手が動き出す前にこちらも早々に準備を始めなくては
私達は一度戻ってリヴィアさんと同行させているフィオナがいる冒険者ギルドへと向かった。ギルドに行くとそこには兵士を取りまとめている指揮官もいたので同席してもらい打ち合わせを行うことに
始めは私の存在を訝しんでいた指揮官だったが、帯剣している聖剣を見せるとあっさりと容認してくれた。こういう時は身分証のような役割をしてくれる便利な剣だ
打ち合わせは時間もないのでザックリと済ませた。私が最初にとある魔法を発動させて魔物の数を減らすので残った魔物の処理を兵士、冒険者達に任すこととなった
先程と同じように不可視化に魔法で姿を消し、周りには私がやったとは気づかれないようにして2人には私だということは口外しないよう口を酸っぱくして言っておいた
「おい!エレナ先生!」
打ち合わせを終えて早速持ち場につこうとギルドを出ると聞き覚えのある声に呼び止められた
振り向くとそこにはタクトとその仲間達が立っていた
「やぁ、久しぶりだね。調子はどう?」
「お陰様で順調だ。今回あんたも参加するんだよな?俺達も一緒に戦うぜ。色んな依頼をこなして俺達は更に強くなったんだぞ」
タクトのパーティも今回の戦いに参戦するというのか。実力、装備共に確かに強化されているようだがまだあれだけの数の前に立たせるわけにはいかない
意気込んでいるところ悪いとは思うが魔物の数はできるだけ減らしてあげなくては
フレイヤに再度魔物の元まで飛んでもらい、地上に降ろしてもらって早速あの魔物達を殲滅する準備へと取り掛かった
「フレイヤ、今から詠唱をするからその間に魔物が動きだすようだったら邪魔してこないよう防いでくれる?」
「分かりました!ご主人様の邪魔はさせません!」
今から発動する魔法には詠唱が必要。詠唱中は集中しなくてはいけない上に動くことが許されない為、詠唱が終わるまでの間はフレイヤに近づいてくる魔物の対応を任せる
「天にまします生を司る誕生の女神ルキナスよ、我が名はエレナ。神なる力の一端を我が身に授けたまえ」
この魔法は自身が信仰している神から力を分けて貰うことで発動することが出来る神聖魔法の一種。かつての仲間カルラが得意とする魔法の1つでもある
信仰が強ければ強い程効果を発揮する。詠唱というよりは祈りに近いかもしれない
私個人にそこまでの信仰心があるわけではないが、女神ルキナスに直接会い生を受けたこの体ならそれなりの威力は期待できるはずだ
詠唱をしなくてもあの魔物達を一掃出来るほどの威力を発揮してくれる魔法を知ってはいるが、この辺り一帯が火の海と化して自然や生態系に影響を及ぼしてしまうので威力は多少落ち時間はかかるが周囲に影響を及ぼさない方を選択した
詠唱を唱えていると先程まで待機していた魔物の軍勢が遂にに動き出した
「ご主人様の邪魔をするな魔物風情が〜!」
こちらに近づいてくる魔物はフレイヤが指示した通り殲滅してくれている。詠唱はまだもう少しかかるがその調子で倒してくれていればなんとか間に合いそうだ
万が一突破して城壁に辿り着いてもフィオナに兵士や冒険者達も控えてくれている。私は魔法発動に集中しなくては
詠唱が終盤に入ると私の体は温かい光に包まれていき、体に力が溜まっていくのが分かった
どこか懐かしい気持ちになってくる。転生時にも味わった感覚だ
(特別サービスで力を多めに貸して差し上げますね)
一瞬ルキナス様のような声が聞こえた気がしたが幻聴だろう
いくら力を借りたからといってそんなホイホイと出てくるわけが無い
準備が整い、私は最後の詠唱を唱える。フレイヤも頃合いを見て退げさせる
「悪しき存在をその聖なる光によって包囲し滅せよ"神聖天墜!"」
詠唱を終えて魔法を発動すると上空から一筋の光が魔物の元にゆっくりと落ちてくる
やがてその光が地上に到着するとか細かった光が一気に膨れ上がっていき、魔物の軍勢を包み込んでいく
光に取り込まれた魔物が次々と跡形もなく霧散していき、瞬く間に数を減らしていった
これなら周囲に被害が出ずに魔物だけを殲滅することできる。しかしあの光の柱は一体いつまで広がり続けるんだろうか・・・私が想定していたものよりずっと高い威力になってしまった
当初は半分くらい倒せれば上出来だと思っていたんだがこれは全滅させてしまいそうな勢いだぞ。もしかしてさっきの声は本当に・・・?
ようやく光の柱が消えて辺りの状況を確認すると魔物の軍勢は殆ど消滅されていた。運良く攻撃から逃れた魔物が数十体程いたが、もう王都を襲うだけの戦力は残されていない
一先ず危機は去ったがこれで終わりではない。残された魔物の後始末は任せ、私は魔物を使役していた人物の捜索にあたった
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