94話 一年の終わり
ダンジョンから無事に帰還してきた後は日程を少し空けて他のグループとの遠征を行い、全ての組のダンジョン遠征が終了した
その間留守番をしてくれていたシエルとラミアスには王都で色々と買ってプレゼントを贈った
私達がいない間何事もなくやれていたようで一安心
それからは特に何か起きることもなく平穏な日々を送り、あっという間に2期目の生徒達が卒業の日を迎えた
殆どの者がこれから冒険者としての道を進んでいく中、王子とケイティは冒険者にならずに元の生活に戻る事を決めていた
王子の方は剣の腕を磨きたかったのと私に結婚を申し込む事が目的で、優先すべき王族としての業務がある為両立する事は難しいということで断念
ケイティは元々冒険者として活動するつもりはなかったらしく、町に戻ってまた普段の仕事に戻るようだ
ケイティに至っては私に会いに行くというそれだけの理由でわざわざ王都にやってきたのだからある意味凄い行動力ではある
今度帰省した時には土産位は送ってあげるとするか
そして2期目の卒業生を送り出してから更に数日が経ち今年最後の日、私達は今王城の宴会場にいる。何故王城にいるのかというと、国王直々の招待状が家に送られてきたからだ
国王が主催しているその年の終わりに開かれる宴に王子の恩師として、そして王女の友人(?)として招待されたのだ
国王からの招待状を断るわけにもいかず、皆で美味しいものでも食べようと計画していた位で大した予定もなかったので行くことに決めた
「皆さん、バッチリ決まってますねぇ♪とても似合ってますよぉ♪」
「フィオナもね。こういうのは分からないから任せて正解だったよ」
王城での宴会ということで普段の服装は論外。それに呼ばれているのは私達だけでなく貴族も多い為、悪目立ちしないようきちんとした正装をしなくてはならなかったのでフィオナに頼んで全員分のドレスを選んでもらった
勿論普段給仕服を着ているシエルにも今日はもてなされる側なのでドレスを着させている
しかしいつもの癖が抜けないのか、食器類を用意したり飲み終わったグラスを片付けたりとせっせと働き始めたので急いで止めた。これが職業病というやつか
しかしこういった女性らしい格好も好むところではないが、初めの頃に比べたら大分慣れてきたな。慣れていいものか複雑な気持ちではあるが・・・・
「はわぁ・・・どの料理も凄く美味しそうだなぁ!」
「まだ食べちゃ駄目だよ。王様が来るまで待ってないと」
「もう随分待っているぞ。早く来てもらわないとせっかくの料理が冷めてしまうじゃないか」
「お偉い方は色々とやることがあって忙しいんですよ。きっともうすぐ来ますからそれまでは飲み物で我慢しましょうね」
目の前の料理を見てお腹を鳴らすラミアスを我慢させていると、入口の扉の方から見覚えのある2人が入ってきて目が合った
「エレナさん!皆さんも!来てたんだね!」
「シスカ、久しぶりだね」
以前護衛の仕事に就いた時王都までの道のりを共にした貴族の娘シスカ
そしてその父親でありレジティア領主のグランツ伯爵。隣にいるのは奥さんだろうか?大人しそうな感じだが綺麗な人だ
「おぉ、久しぶりだね3人とも。娘の護衛の時は世話になったね」
「グランツ伯爵お久しぶりです。その節はどうも」
伯爵と世間話をしていると、伯爵の隣にいたシスカがラミアスの事が気になったのか駆け寄ってきた
「ねぇねぇ、お名前はなんていうの?」
「私はラミアス。貴女は?」
「私はシスカ!ねぇあっちで一緒に遊びましょう!」
シスカがそう言うとラミアスが一瞥してきた。遊びたがっているようなので部屋を出ないことと周りに迷惑をかけない事を約束させてから遊びに行かせてあげた
それから少ししてようやく国王が顔を出した。皆の拍手に出迎えられながら席まで移動し、グラスを片手に一言頂戴した
「今日は私の招待に応じてくれたこと感謝する。今宵は思う存分楽しんでくれたまえ。乾杯!」
国王の言葉で一斉に乾杯を行いグラスの音色が部屋中に響き渡る
これでようやく料理に手を伸ばせる。ラミアス程ではないがいい香りを漂わせておいてお預けは辛いからな
蓋が開けられると先程から漏れ出ていた香りが蒸気と共に舞い上がってきて鼻腔を刺激してきた
流石王城で出される料理なだけあって使われている材料もかなり上等なものだろう
ただこういう宴会の場では欲張って取りすぎると目立ってしまうので取る量と他の料理とのバランスを考えなくては。じゃないと・・・
「フレイヤさん取りすぎですよぉ。お肉盛りすぎて塊みたいになっちゃってるじゃないですか。他の方の事も考えないと~」
「ケチ臭いことを言うな。こういう所はいくら食べても次々と料理が運ばれてくるのだから好きなだけ食べてやればいいんだ」
「エレナ様、この場ではあれがマナーなのですか?」
「あれは悪い見本だから見習わないようにね。他人のフリ他人のフリ」
あれと一緒にいたらこちらまで変な目で見られてしまう。フレイヤの事はフィオナに任せて私はシエルを連れてひっそりと頂いていよう
「見つけました!エレナさん!」
「セ、セフィリア様」
料理にありつこうとしたところで声をかけられ、振り向くとそこにはセフィリアと王子の姿が
乾杯した時には国王の隣りにいたのに他の貴族達への挨拶を後回しにして・・・・息を切らしてまで私の所へ一目散にやってきたのか
「もう・・・リアとお呼びくださいと言っているではないですか。けどこの場では仕方ないですね。1番に声をかけることができて良かったです。これから暫くは貴族の者達の挨拶で囲まれてしまうので一旦失礼しますね。また後ほど、行きますよお兄様」
「えっ?いやまだ私はエレナさんとはなして・・・・あぁ!耳を引っ張るんじゃない!エ、エレナさん!必ず強くなって貴女を迎えに行きますから~!」
それだけ言い残すと王子はセフィリアと共に貴族達の元へと姿を消した
やれやれ、これで今度こそ料理を食べることが出来る
私はシエルを連れて王城のシェフ達によって作られた料理の数々を堪能させてもらった
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