91話 雪遊び
王子王女に振り回されたあの日から数日が経ち、明日からは私が受け持つ新人冒険者達のダンジョン遠征が行われる
今日は座学のみで訓練の方は休み。生徒達には装備一式を入念に整備して明日に備えるよう伝えてある
なので今朝は普段より遅くまで布団に籠もり中。日を追うごとに段々と気温が下がっていっていて朝は温い布団から出るのが億劫になってくる
できれば一日中この中で過ごしていたいところだが、下の階からシエルが準備している朝食のいい香りが漂ってきているのでそろそろ起きなくては
布団から出て冷たい床を歩きカーテンを開けて外の景色を見ると、いつもの見慣れた風景が白銀の世界へと変貌を遂げていた
「うわぁ、どおりで寒いわけだ。雪が降ってるよ」
寝ている間に降り始めたのだろう。道や屋根が見えなくなる程の雪がぎっしりと降り積もっていた
この辺りは雪は降っても積もる程じゃないと聞いていたのにまさかレジティアで初めて迎える冬でここまでの大雪に遭遇するなんて
今日が休みで良かった。1日家の暖炉にあたりながらまったりと過ごすとしますかねぇ
階段を下りると暖炉で暖められた部屋に迎えられ、キッチンからは包丁の一定のリズム音が聞こえてきた
「おはようございますエレナ様、もうすぐ朝食の準備が終わりますのでお掛けになってお待ち下さい」
「おはようシエル。ありがとうね」
シエルに促されテーブルの椅子に掛けて朝食が出来上がるのを待つ。キッチンにはフィオナもいてシエルの朝食の他に何か作ってくれているようだ
ふと暖炉の方を見るとそこには暖炉の一番前を陣取るフレイヤがいた
「おはようございますご主人様ぁ・・・」
「おはようフレイヤ、相変わらず寒いのに弱いねぇ。まぁ今日は仕方ないか」
「フレイヤさんどうぞ〜。体が温まりますよぉ」
「助かるぞフィオナ〜」
朝食の前にフィオナが作ってくれた野菜をふんだんに使ったスープをいただき体を芯から温める
そこへ遅れて起きてきたラミアスが勢いよく階段を下りてくる。朝から随分と元気だな
「おはよう!皆、雪!雪なのだぁ〜!」
「おはよう。あぁそっか、ラミアスは雪を見るのは初めてなのか」
初めて見る雪にテンションが上がるラミアス。ちょうどシエルの朝食が出来たので一旦落ち着かせ、食べながら話を聞くことに
なんでもこの前友達から雪の遊びを教えてもらったようで雪が降るのを楽しみにしていたそうだ
この分だとまだまだ振り続けるだろうから学校の方は休校だろう。そういうわけで皆で雪遊びがしたいとラミアスから懇願された
今日は暖炉の前で本でも読みながら寛ごうと思ったが、ラミアスのあんな顔を見たら付き合わないわけにはいかないな
明日からはダンジョンに潜る為、暫く会えなくなるだろうしその前に気が済むまで遊んであげるとしよう
朝食を食べ終えた後、寒さに弱いフレイヤはいつの間にか暖炉の前に布団を敷いてそこで芋虫のようにくるまって暖を取っていた
完全に布団の虫と化している・・・仕方ないから4人で遊ぶとしよう
普段よりずっと寒いのでしっかりと服を着込んでから外へと出る。道にはまだ午前中だというのにもう踝位まで雪が積もっていた
「まずは雪合戦というのをやろう!」
「最初からハードなの選んだねぇ。じゃあ2組に分けようか」
ちょうど4人なので2対2で私とシエル、フィオナとラミアスに分かれで雪合戦開始
最初に雪で壁を作りその後ろでシエルが一定のリズムで程よい硬さと握りやすい大きさの全く同じ雪玉を淡々と作り上げていく
それを私が2人目掛けてどんどん放る。相手はラミアスなので当たっても痛くないよう軽く投げていく
対するラミアスも次々と投げてくるが、子供が投げる玉なので当たる訳もなく簡単に避けてみせた
「それっ!それっ!」
「ははっ、それ位じゃあ当たらないよ」
「ラミアスちゃん、私に考えがあります!」
雪で作った壁に一時隠れて作戦会議を始めるフィオナラミアスペア。少ししてまた同じ様に雪玉を投げつけてきた
作戦会議をした割に先程と特に変わった感じはない。一体なにをしてくるんだろう
持っていた雪玉が尽きたので一旦シエルの元に戻ろうとすると、足が何かに掴まれていた事に気がつく
見てみると足にロープ状の拘束魔法が仕掛けられていた。降り積もった雪のせいで気づくことができなかった
「ちょっ!魔法使うのはズルいよ!」
「問答無用!覚悟するのだ〜!わっとと!」
油断して身動きが取れなくなったところをラミアスが作っておいた大雪玉を持って私に突撃してきた
しかしサイズが大きすぎたのか途中でよろけて私の元に飛び込んできた
結局ラミアスの自爆に私も巻き込まれるような形になり雪合戦の勝負は引き分け
「ぷっ、あははは!つめたいなぁ!」
「どう?雪合戦楽しめた?」
「楽しかった!もっと色んな遊びしよう!」
楽しめたならそれはよかった。髪や顔の周りについた雪を払ってあげて引き続きラミアスの遊びに付き合った
坂のある場所に移動しソリを使って滑ったりひたすらかき集めた雪を固めて作った家で昼食を食べたり
最後には人数分の雪だるまを作って家の前に飾るなどして雪遊びで思いつくようなのをラミアスが満足するまで遊び尽くした
遊びから帰ってきた私達は風邪を引かないよう皆でお風呂に入って冷えきった体を温めることに
4人となると流石にキツかったがワイワイと賑やかなお風呂の時間を過ごした
「はぁ、楽しかったなぁ♪今度は学校の皆と遊びたいな」
「そうだね。明日から私とフィオナ、フレイヤはダンジョンに行くから数日家を空けちゃうけど、シエルと2人でいい子にしててね」
「任せるのだ!3人がいなくてもへっちゃらなのだ」
「それはそれで寂しいけど・・・シエルもお家の事色々よろしくね」
「畏まりました」
お風呂から上がった後はフレイヤが陣取る暖炉の横で明日の準備を始めた
私にとって2回目のダンジョン遠征でも生徒達にとっては初めての体験
無事に帰ってこれるように気を引き締めねば
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