9話 216年ぶりの再会
二日酔いも治り私達は数日ぶりにギルドへと赴いた
フィオナが二日酔いに効く薬草粥を作ってくれたお陰で体も軽くなったので結果オーライということにしておこう
受付へ進みいつものお姉さんに声をかけようとするとこちらに気づいたお姉さんが先に声をかけてきた
「あっ、エレナさんにフィオナさんちょうど良かったです。少しそこで待っていてもらえますか」
「えっ?あぁ分かりました」
そう言い残して2階へと上がっていき、何事かと思いつつも言われた通り待機していると戻ってきたお姉さんと一緒にギルドマスターがやってきた
何か嫌な予感がするぞ・・・
「エレナにエルフの嬢ちゃん、久しぶりだな」
「お久しぶりですギルドマスター」
「どうも~」
ギルドマスターの姿は何度か見かけてはいたものの、こうして話すのは久々で何気に試験以来かもしれない
「早速で悪いがお前達に頼みたい仕事があるんだ」
話を聞くところによると、農作物を盗む輩がいるので捕らえて欲しいという村からの依頼がきたらしい
それ位なら引き受けても構わないが、盗っ人を捕まえる程度ならわざわざ冒険者を雇わなくてもいいような気がするが・・・
「私は受けても問題ないと思うけどフィオナはどう?」
「エレナさんが良ければ私も構いませんよ!」
「決まりだな。場所はここから南に向かったエルド村という所で1日程で到着するはずだ。馬車の方はこちらで手配して門の所に待機させているから準備ができたら声をかけてやってくれ」
南か・・・私の村とは真逆だな。もし近かったら帰りにでも寄ろうかと思ったがまたの機会だな
私達はギルドをあとにして早速準備を始めた
といっても数日分の食料を空間保管に入れるだけ。馬車に積み込む必要もないので調達する時間だけで済む
門の前まで行き、ギルドマスターが手配してくれた御者に声をかけて出発した
気を利かせてくれたのか御者の人も女性の方でエルド村まで気兼ねなく旅することができた
村までの道のりは敵が出ることなく平和そのもの。順調に進んでいき翌日の昼前にはエルド村に到着したので私達は村長の家を訪ねて話を伺った
農作物の被害は予想以上で、村の資金源ともなっている野菜畑が軒並み荒野と化していた
当然村人達は犯人を捕らえようとしたが、人間とは思えない逃げ足で逃げられてしまうので村人達は作戦を変えて足跡を辿り住処を特定することにしたらしい
それで特定出来たはいいものの、犯人が潜伏している場所は森の奥にある洞窟でそこにはたくさんの魔物がいて危険だということで村人達はそれ以上近づけず、どうしたものかと悩んだ挙げ句ギルドに依頼を出したという訳のようだ
聞いていた話より大事になっているが、ここまで来た以上この村の人達を放っておくわけにはいかない
犯人はほぼ毎夜この村にやってくるというので、警備に備える事にした
「よし、初めてにしては上出来かな」
私は魔法で村全体を結界で覆い、この村に危害を加えるようとする輩が結界に接触すると警告音で知らせてくれる効果も付与させた
捕まえられればいいが果たしてどうだろうか。話を聞く限りでは身体能力は相当なものだろう
油断したらこちらが返り討ちになってしまうかもしれないから気を引き締めていこう
「来ますかねー。泥棒さん」
「お腹が空いたら自ずとやってくると思うけど・・・って話してたら早速来たみたいだね」
脳内でアラーム音が鳴り響く。結界に引っかかってくれようだ
フィオナにもその事を知らせ発生地へと向かうと、畑で人影が動いているのを確認した
「こらー!人の物を盗むなんて駄目ですよー!」
「・・・!」
村長の話通りやってきたのは1人のみ。生憎月が出ていない為顔までは分からないが、小柄な体格というのは見てとれた
フィオナの声でこちらに気づいた犯人は逃亡を図り、森の方へと走っていく
こちらも当然全力でそれを追いかけるが、距離を縮めるどころかどんどん離されていってしまい視界に留めるのでやっとだった
なんとか洞窟に入っていく姿は確認することは出来たが、あの速度・・・速さだけなら前世でも五本の指には入るだろう
やはり侮れない相手だと再認識し、最大限警戒しながら洞窟の中へと入っていく
「まっ、待って下さ~い。ハァハァ・・・速すぎますぅ」
「大丈夫?これから洞窟の中に入るよ」
遅れてやってきたフィオナにも暗がりでも見えるようになる魔法をかける
洞窟の先には魔物がいるという話だったが、魔物が現れるどころか気配すら感じなかった
もしかしたら犯人が全て倒してしまったのかもしれない
あれだけの動きが出来るのなら不思議ではないだろう
暫く洞窟の奥へ進んでいくと明かりがある場所にやってくる
上の部分が空洞になっていて月明かりが洞窟を照らしていた
「あー!見つけましたよ作物泥棒!」
フィオナが指さす方に目を向けるとそこに先程の犯人が待ち構えていた
月明かりで照らされた犯人の正体は私より幾許か幼い見た目した少女だった
その姿に一瞬気を緩めかけたが、少女の身体を見て気を引き締め直す
この少女は赤竜族だ。腰の辺りからは竜の尾をぶら下げていて、頭には角が生えている
勇者だった頃の私の騎竜も赤竜族だったのですぐ分かったが、赤竜族はここよりもずっと南に位置する山岳地帯で生活しているはずだ
何故こんなところまでやってきたのか謎だが、それ以上に先程からこちらが戦闘態勢に入っても少女は構える様子もなくこちらを・・・いや、私を凝視しているのが不可解だった
何を企んでいるのかと警戒していると少女が口を開いた
「やっと会えた・・・」
「えっ?」
「ご主人様ー!」
「おわっ!?」
「エレナさん!?」
身構える私に対して凄まじい速度で躊躇なく飛びついてきた
何かの作戦かとも勘繰ったが、少女からはそのような気配は全く感じない
それよりこの聞き覚えのある声に呼び方・・・私は抱きつかれたまま少女に問いかけた
「もしかして君・・・フレイヤ?」
「そうですフレイヤです!会いたかったですご主人様!」
なんと少女は前世で幾度も修羅場を共にした騎竜のフレイヤだった
竜の姿ならいざしらず、人の姿なんて一度も見たことがなかったので気づけるはずがない
思わぬ形でフレイヤとの再会を果たして色々問いただしたかったが、再会に喜ぶフレイヤが落ち着くまで暫く身を委ねることにした
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