87話 寒い日はお風呂に限る
ラミアスが学校に通い始めてから一ヶ月が経とうとしていた。あれからもクラスの子達と仲良くやれているようで、学校から帰ってきた後は友達と遊びに行くようにもなっていた
勿論遊んでるばかりではなく帰ってきた後は課題をこなしたりその日やった授業の内容の復習をしたりと勉学の方もきちんと取り組んでいる
今度皆とお泊り会をすることを凄く楽しそうに話していたからちゃんと学校生活を満喫しているようで何よりだ
私の方はというと講師として反対に生徒に教える立場なわけだが、こちらも順調に生徒達が成長していっている
武器の練度が皆最初の頃に比べると見違える程上達していた。ダンジョンに挑める日も遠くないだろう
そんな生活が過ぎていき季節は冬を迎え始めていた。つい先日まで紅葉を見せてくれていた樹は葉を全て落として枝のみが残っている
そして今日も今日とて訓練の日々。こういう季節は体が温まりにくいからいつもより入念に準備を行ってから訓練を開始していく
冬は日が沈む時間が早いので暗くなってきたら明かりを点けて訓練を再開する
かじかむ手で武器を握り模擬試合を次々に行っていく。場所によってはこれ以上の寒さの中で戦闘が始まることもあるので、こういう状況下でも戦えるようにするにはある意味いい訓練かもしれない
日が完全に沈みきるとその日の訓練は終了。暗くなると吐く息が白くなるまでに気温が下がってくる
「あぁ〜今日も寒かったぁねぇ・・・・」
「こういう時はあっつ〜いお風呂に入りたくなるよねぇ」
お風呂か。そういえば王都に最近新しい大衆浴場が出来たとかで宣伝していたな
そして手元には都合良くその優待券が。リザさんがその大衆浴場を経営している人と知り合いらしく、私を含めた講師の分を融通してくれたようだ
この券は1枚で5人まで入れる。私達の人数とピッタリだ
後日その券を見せて皆を誘ってみると全員二つ返事で誘いに乗ってくれたので、私達はそれぞれの予定を合わせて皆で大衆浴場へとやって来た
「おぉ!中々大きい浴場ですねご主人様」
「なんでも色んな種類のお風呂があるらしいよ」
「へぇ〜それは楽しみですねぇ♪」
ここはお風呂だけでなくマッサージや食事等も出来るようなのであとでそちらも利用してみよう
流石にお風呂以外のサービスは別料金となってしまうようだが、ここには無料で入らせてもらうのだから少しくらいはお金を落とさないとな
脱衣所へと向かい浴場の扉を開ける。すると熱気や香りと共に様々なお風呂が私達を出迎えてきた
「おぉ!お風呂がたくさんだな!どれから入ろうか!」
「まずは体洗ってからね。それと他のお客さんもいるんだから騒ぎすぎないようにね」
逸るラミアスを落ち着かせ、体をよく洗わせてから湯船へと向かわせる
「ご主人様、このマグマ風呂というのに入ってみましょう!」
フレイヤが選んだのはマグマ風呂なるいかにも熱そうなお風呂
マグマのように赤く変色させたお湯にとろみをつけ、下から空気を送ることでマグマを再現しているみたいだ
温度も他のお風呂と比べて20度位高く設定されているらしい。確認の為手で軽く触れてみる
「熱っ!これはちょっと私には無理かな。茹でられちゃうよ・・・というかこんなの誰が入るんだろ」
「そうですかね?ちょうどいい位ですけど」
火山地帯の近くにあるお風呂に入っていたフレイヤにとってはきっとこれくらいがちょうどいいんだろう
普段家で入る私達のお風呂の温度だとぬるいからいつも自分で適温にしてから入ってるんだよな
フレイヤはこのマグマ風呂が気に入ったようなので私は他を見てみるか
「エレナさーん。これ気持ちいいですよぉ」
フィオナは何やらボコボコとお湯が激しく動いているお風呂を選んだようだ。看板に書かれている説明文を読んでみると、これはジェットバスというものでお湯と空気を同時に送り込み勢いよく噴射させているお風呂のようだ
「あ"あ"あ"あ"・・・・凝ってる場所に当たっていいですねぇ」
どうやら噴射している所に凝っている箇所を当てればマッサージの効果もあるようで、肩凝りが酷いフィオナにはちょうどいいようだ
血行も良くなって美肌効果をあると書かれているが、今回は遠慮しておくかな。隣で暴れ回っている胸を見ながら入っているとなんだか虚しくなってきそうだし・・・
「エレナ!こっちに来てみろ!凄いぞ!」
「ラミアス様、お風呂場を走っては危険ですよ」
ラミアスに呼ばれたのでついて行ってみると外に繋がると扉があり、そこを開けると露天風呂となっていて目の前には明かりで照らされた王都の城が一望できるようになっていた
「へぇ、これは確かに凄いね」
「だろだろ!一緒に入ろう!」
「どうぞエレナ様」
「ありがとうシエル」
シエルが持ってきてくれたお酒をちびちびとやりながらお城を眺めゆっくりと浸かる
普段から見慣れた景色も見方を変えれば趣きがあっていいものだな
他にも色んなお風呂があるみたいだしこれからはこうしてちょくちょく入りに来るのもいいかもしれない
それから長い事お風呂に浸かっていたらラミアスがのぼせそうになっていたので上がることにし、専門のマッサージ師によるアロマオイルを使用したマッサージをお願いすることにした
「ではオイル垂らしますねぇ。少し冷たいでーす」
「はーい・・・ひゃっ!」
背中に冷たくドロッとしたオイルを垂らされマッサージが行われていく。マッサージで筋肉が刺激され代謝が良くなっていくのが分かる。暫くすると段々と体が温かくなっていった
アロマの香りでリラックスもできてとても心地よい
そのまま目を閉じているとどうやら眠ってしまっていたようで、気づいたらマッサージを受けているのは私だけになっていた
他の皆はどうやら先に戻ったようだ。私ももう戻るとしよう
「すみません寝ちゃったみたいで・・・もう大丈夫です。ありがとうございました」
「そうですか?せっかくですから特別マッサージを受けていって下さい。サービスしますので」
「特別マッサージ?」
そう言うとマッサージ師の人は私がまだ受けるとも言っていないにも関わらず勝手にマッサージを始めてしまった
まぁサービスと言ってたしいいかと思い体を委ねることに
しかし異変に起こったのはその後すぐの事だった。さっきまでの人と明らかに違うのはマッサージを受けていてすぐ分かった
最初はこれが特別マッサージなのかと思ったが、なんというかこの人の手つきは人の肌の感触を確かめるようないやらしさを感じる
ふくらはぎから太もも、腰から肩甲骨の順に触られていく
そして手が私の胸のあたりに近づいくるのを感じた私は流石に変だと思い声をかけようと振り返った
「あの、このマッサージちょっと変じゃ・・・何やってるんですかリヴィアさん」
「いやぁ、マッサージ師の数が足りないと思ったからちょっとした手伝いをね?」
振り返って私の目の前にいたのは顔を紅潮させ涎を垂らすのを堪えているリヴィアさんの姿が。どおりで手つきがいやらしいと思った。皆がいなくなったのはこの人から被害を受けない為だったのか
とりあえず未だに私の体を触り続けているリヴィアさんを沈めてから皆と合流し、食事を思う存分楽しんだ後帰路についた
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