8話 休日を満喫します
「いい部屋が見つかってよかったですねぇ♪」
「広くて綺麗だったし設備も充実してたね」
私達は今日物件を取り扱っているお店へと行き、新しい部屋を探していた
家賃は高くなるが、それでも設備がしっかりとしていて2人で住むのに十分な広さがある場所を選んだ
安い宿を利用すれば家賃は浮くが、そういった宿は鍵がついていなかったりお風呂がなかったりと女性2人が利用するには些か不便な点が多い
かといって設備がしっかりとした宿を選ぶと今度は宿泊費が上がるので結局賃貸の部屋にいきつく
私達が選んだ部屋は見晴らしの良い位置に建っていてバルコニーもあるのでそこで景色を眺めながらお茶をして寛ぐのも一興だろう
思いの外早く部屋が決まったことで明日の予定が空いたのでギルドで依頼を受けようかとも考えたが、ここ最近は働き詰めだったので明日は休みにしようと思いフィオナにその事を告げた
「でしたら明日は街の観光でもしませんか?私この街に来てまだ少ししか見れてないんですよね」
「そういえば私も全然この街の観光とか出来てないな。そうしよっか」
「でしたら明日の朝食は外で食べましょう!私行ってみたいお店があるんです♪」
明日の予定も決まりその日は新居でささやかな引っ越し祝いを行って眠りについた
翌日、朝早くにフィオナに起こされたので身支度を整えてお店へと向かい、到着するとこんな朝早くにもかかわらず既にお店の前には列ができていた
話によるとこのお店で月に1度、朝だけ出している20食限定のモーニングメニューが大人気らしく、朝早く来て並ばないと食べられないみたいで今日がちょうどその日らしい
私達はギリギリ滑り込みで間に合ったようで席に着くと早々に限定メニューとやらを注文した
「お待たせしました。雲パンと虹面鳥の卵で作ったエッグベネディクトになります」
雲のような真っ白なパンの上に虹面鳥という七色に輝く珍しい鳥からとれた卵とベーコンが乗せられていた
半熟の卵を割ると金色に輝く黄身がトロッと出てきてそれをパンにつけてベーコンと一緒に食べる
雲パンはその名にふさわしく、雲の様にふわふわとしていて濃厚な卵とベーコンの塩気が絶妙にマッチしていて幾らでも食べれそうだった
「ん〜♪口の中が幸せですぅ♪」
フィオナも口元に汚れがついているのも忘れて夢中になって食べている
普段食べてるフィオナのご飯も美味しいが、たまにはこういう珍しい素材を使った料理もいいな
また機会があったら2人で食べに来よう
朝食を堪能したあとは今度は私が行こうと思っていた図書館へと足を運んだ
魔法のインスピレーションを高める為に魔導書の借りようと思っていた
前世でも魔法は使えたものの、自分の得意な聖魔法以外は基礎的なものしか扱えなかったのでこの魔導書を読んで魔法の知識を取り込もうという考えだ
イメージが強ければ強いほど強力な効果を発揮するのでこの辺りにある魔導書を一通り借りていくとしよう
図書館で本を借りたあとは、フィオナが服を見たいとのことだったので服屋を目指した。するとその道中で泣いている女の子を見つけた
「迷子でしょうか?」
「みたいだね」
泣いている少女をそのままにすることも出来ないので声をかけようと私達が近寄っていくと、少女はビクッと肩を震わせて警戒していた
何か安心させられるような方法はないかと頭を捻らせていると先程魔導書で見た魔法を思い出したのでそれを試してみることにした
魔物や動物を一時的に使役することが出来る魔法を飛んでいる鳥達に向けて魔法を発動する。すると1羽の鳥がこちらに向かって降りてきて腕に止まった
「わぁ、すごーい・・・!」
少女はその光景を見て興味津々で鳥を見つめていた
上手く気も逸らせて警戒心が和らいだところで話を聞くとやはり母親と逸れて迷子になってしまったようだ
母親の特徴等を少女から聞き出して鳥に飛ばす。上空から探せばきっとすぐ見つかるだろう
鳥を飛ばしたあとは更に視覚を共有する魔法を使って母親を探した
少しして少女が言っていた特徴と合致する女性が慌ただしく動いているの発見した
恐らくあの人が少女の母親だろう。確認の為女の子にも視覚共有の魔法をかける
あの女性が母親で間違いないと確信し、少女をおんぶして先程母親を見つけた場所まで送り届けた
「お母さん!」
「ミア!良かった・・・」
少女と母親がひとしきり抱きしめ合うと、母親がこちらを向いて深々とお辞儀してから手を繋いで帰っていった
ああいう姿を見ていると母との思い出が蘇ってほんの少しだがホームシックになって両親に会いたくなった
昼食を済ませたあとも様々な所を見て回り、今まで行かなかった場所には目新しい物やお店があってそれを眺めるだけでも楽しむことが出来た
夜は落ち着いた酒場で2人でお酒を飲み交わした
普段仕事がある日は飲んでも軽く1杯程度で済ましていたが、この日は顔が赤くなるまで飲んだのですっかり酔っ払ってしまった
「エレナさん大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫らよ~。今日は楽しかったから沢山飲んじゃった。えへっ♪」
「えへっ♪って・・・いつもとキャラ違いますよ。酔うとこんな風になるんですね」
フィオナも同じ量を同じペースで飲んでいたが、かなりお酒に強いのか全く顔色は変わっていなかった
この辺りから記憶がないがどうやら酒場を出た後はフィオナに肩を借りながら帰宅したようだ
その道中でも酔っ払った私が物凄い絡んできたらしい
「フィオナちゃ~ん♪」
「ちょっ、流石にこんな公衆の面前で抱きつかれるのは恥ずかしいですよエレナさん」
そんなやり取りをしながら部屋に着いてベッドに倒れると早々に眠ってしまったようだ
次の日、二日酔いで頭がガンガンした状態でフィオナからその話を聞かされお酒は当分控えるよう心に決め、当然依頼を受けられる状態じゃなかったのでもう1日休暇を取ることにしてゆっくり眠りについた
思わぬところで醜態を晒してしまったが、色々なところも見て回れたし満喫できた休日であった
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