76話 救出
森の中にある家に到着した私達は安全確認の為に先に家の中に入るとそこで血痕を発見したのでハンナさん達に気づかれないようスイムに消してもらったが、そこでスイムが突然ハンナさん達の両親がまだ生きていると言い出した
「2人が生きてるってどうして分かるのスイム?」
「私の能力の1つで体の一部を吸収することでその吸収した相手の居場所を追跡することが出来るんです。亡くなっていた場合は対象の場所は分からないので・・・」
先程床の血痕を吸収したらハンナさん両親の居場所を特定することが出来た。つまり2人はまだ生きているということになるのか
昨日から私が知っているスライムに対する認識がどんどん変わっていくな
「なら今すぐ探しに行かなくちゃ!」
「ただ吸収した血痕が数日前のもので今までそんな時間が経っているのを吸収したことがないので絶対とは言えないんですが・・・」
「いや、少しでも可能性があるなら探そう。でもこの事はまだハンナさん達には言わないでおこうね」
ここで2人に変に希望を持たせておいて後でやっぱり駄目でしたじゃ話にならないからな
適当な理由をつけて2人が家にいる間に両親を探しに行くしかないが・・・問題なのはここからどこまで距離があるか
ハンナさん達が既に数日が経過している。場所が分かってもここからどれ位距離が離れているだろう
時間がかかるようなら皆には一旦帝国の方に戻ってもらうしかないが・・・
「スイム、2人はここからどれ位の距離にいる?」
「そうですね。今も移動しているようなので正確には言えないですけどここからご両親がいる場所までは大体400・・・いや500キロといったところですかね」
500キロ・・・かなり遠くまで移動しているみたいだがそれ位の距離ならなんとかなるか。行きに全力をかければあとは転移して帰ってくればいいだけ
私達はハンナさん達に私用で少し出かける事を伝えた。私達の突然の行動に違和感を覚えただろうが、流石に両親を探しに行くとは夢にも思っていないだろう
親御さんの元には私とフレイヤとスイムの3人で向かうことにした。万が一があった時、戦える者がフィオナ1人しかおらず護る対象が多いから負担が大きくなってしまうだろうがその時はなんとか踏ん張ってもらうしかない
「フレイヤ、久しぶりに全力で飛んでいいよ」
「本当ですか!分かりました!」
フレイヤには今まで乗りやすさ重視で速度を抑えて飛んでもらっていた。それは本来の竜族の飛行速度が普通の人間には耐えられないものだからだ
今回は急を要する事態なのでそれを解禁する。普段飛んでいる高さより更に高度を上げていき、やがて雲の上に到達した
中途半端な高さで全力で飛行しようとすると飛んでいる他の鳥や魔物が障害となるからだ。それらが私達に向かって飛んできてぶつかりでもしたら致命傷になりかねない
「スイム、方向はどっち?」
「えっとぉ〜あっちです!」
「了解。行っきますよ〜!しっかり掴まってて下さい!」
フレイヤがこちらに合図を送るとスイムが指を差す方向に翼を大きく羽ばたかると、次の瞬間には景色が変わっていた
久しぶりのフレイヤの全力飛行。暴風とも言える強烈な風が私達を襲ってくる
私は慣れているがこのままではスイムが吹き飛ばされてしまうので、フレイヤの周囲に風の抵抗をなくす魔法を発動して更にそこへ飛翔速度を向上させる魔法をかけて更に速度を上げる
魔法の効果と風の抵抗を無くしたフレイヤの今の飛行速度はこの世界で最速と言っても過言ではないだろう
これなら目的の場所まで大した時間もかけずに辿り着くことが出来るはずだ
「ひぇ〜!死んじゃいます〜!」
「スイム、落ちたりでもしたら風に飛ばされて一巻の終わりだから私の服の中に入ってそこから指示をちょうだい!」
「わっ分かりました!」
「ひゃっ!ちょっ、服の中に入ってとは言ったけど変なとこは触らないで!変な声出ちゃったよ!」
「〜〜!」
スイムがスライムの姿に戻り服の中へと入って来ると、スライムの独特な感触とひんやりとした体が敏感な箇所に触れて柄にもない声を出してしまった
謝るような仕草で何か言っているようだがスライムの姿に戻ったら喋れなくなるのを忘れていた
方向を教える位のことならこの状態でも問題なさそうなのでこのまま移動を続ける
それからスイムの指示に従いながら飛行を開始して1時間もしないうちに目標との距離がかなり近づいてきたようなのでフレイヤに速度を落としてもらい、高度を下げて望遠の魔法でスイムが指差す方向の辺りを隈なく探した
すると1台の自動車が道を走っているのを発見した。周りに護衛の様な者達がいて自動車の後ろには荷台のようなのが連結されている
一見なんの変哲もないように見えるがスイムが正しければあそこにハンナさん達の両親がいる
いきなり襲いかかって間違っていたら取り返しがつかないし迂闊に声をかけて警戒されても仕方がない
「あんまりこの魔法は好きじゃないんだけど・・・"看破の魔眼"」
看破の魔眼は見たものの本質、実体を暴くことが出来る魔法だ
名前から年齢、職業。発言の1つ1つまでありとあらゆるものを見破る事ができ、それは魔法も例外ではない
あの荷台に何かしらの魔法がかけられていてもこの魔眼の前には無意味ということ
ただこの魔法は自分が知りたい情報だけでなく知りたくないものまで強制的に見せてくるので私はこの魔法を好まない
誰しも見られたくないものはあるもの。自分がやられたと思うと軽く悶え死ねる
今回は緊急なので四の五の言ってられない。早速対象に視線を向けるとスイムの能力が間違っていなかった事が証明された
幻惑の魔法で周りからは普通の荷台にしか見えないようにしているが、実際は檻になっていて中には犬人族の大人の男性、女性の2人が枷を付けられ捕らわれていた。ハンナさん達の両親だ
周りにいる奴等も身なりを良くしているが盗賊の類。けど姉妹を連れ去った者達とは無関係のようだ
偶然負傷していた2人を見つけて捕まえて金に換えようとしていたのか
「スイムお手柄だよ。これで親御さんを助ける事ができる」
「はぁ〜良かったですぅ。私は戦闘に関しては戦力外なのであとはお任せしますね」
スイムは再びスライムになって私の服の中に隠れた
ここからは私達の役目だ。フレイヤは空から、私は地上からの二手に分かれて行動を開始した
まず始めにフレイヤが自動車の目の前に現れて停止させて奴等の目を引かせる
「竜だと!?どうしてこんな所に!」
「全員戦闘態勢だ!早くしろ!」
目論見通り敵の視線はフレイヤに集中したので気を取られている間に私が檻の方へと潜り込んで鍵を破壊する
「助けに来ました。大丈夫ですか?」
「あ、あなたは?」
「私はハンナさんの知り合いです。ハンナさんの親御さんですよね」
「ハンナ!?ハンナとネルは無事なのですか!」
「2人は無事です。今は私の仲間と一緒に自宅にいます。あとちなみにあそこで暴れている竜も私の仲間なので安心して下さい」
盗賊達は明らかにどこかから盗んだであろう銃でフレイヤを倒そうとしているがあの程度の豆鉄砲じゃ傷すらつかない
私が出るまでもなく盗賊達は全滅。無事姉妹の両親を救う事ができた
母親の方は斬られた傷を治してもらったようだが、父親の方は応急処置程度で弱っていたのですぐさま治療を行ったので大事には至らなかった
食事も碌に与えられていなかったようなので軽食を渡し、落ち着いたところで転移を使って私達を待っている皆の元へと帰還した
泣き腫らして落ち込んでいたネルも無理に平静を装うハンナさんもこれで元気を取り戻すだろう
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