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73話 かつての仲間の子孫

「うぇ~いお疲れ~!」


「お疲れ様でした」




ギルドマスターライヒムさんへの報告を済ませた私達は、シエル、ラミアスとも合流して皆で打ち上げをすることとなった

地下にいた男から手に入れた顧客リストもライヒムさんに預けた。今回捕らえた奴らからも情報を吐かせ、売られてしまった人達を国と連携して救出してくれることだろう




「あれも、これも・・・どれも凄く美味しいよお姉ちゃん!」


「こらネル、少しは遠慮しなさい。あのこの度は助けて頂いただけでなく食事までご馳走になってしまったて・・・本当に私達も参加して良かったんでしょうか?」


「気にしないでどんどん食べて下さい。お腹空いてるでしょう」




犬人族のハンナさんとネル。2人ともまともな食事を与えていなかったのだろう、お腹をキュウキュウ鳴らせていたので放って置くわけにもいかずこの打ち上げに誘った

同じく捕らわれていた兎人族も誘ってみたが、その人には旦那さんがいるらしく一刻も安否を知らせたいと飛んで帰って行った

こちらの姉妹はここから少し離れた森の中に家があるらしく、今から向かっても到着するのは深夜になってしまうので明日の朝帰る予定となっている




「2人共今日は好きなだけ食べて、ゆっくり休んで。2人で帰るのは危険だから明日は私達が送って行くね」


「早く親に会えるといいな」


「そう・・・ですね・・・」




姉妹に対してリザさんがそう言うと、姉のハンナさんが歯切れが悪い感じで返答してきたので聞いてみると両親は姉妹を捕まえる時に帰らぬ人となってしまったらしい

いつものように家で寝ていると2階の窓から忍び込んできた例の男達がやってきて、(さら)われそうになったので必死に抵抗していたら異変を感じた両親がやって来て身を呈して守ってくれたが、武器を持っている者に勝てるはずもなく両親は斬り伏せられてしまった

そこで気を失ってしまい気づけばあそこにいた、とのこと。妹の方は先に気絶させられていたのでその場面を目撃してないらしいので不幸中の幸いとでもいうべきか・・・

なのでこれからどうすべきか迷っているみたいだ。攫われた森の家で姉妹2人暮らしていくのは厳しそうだしその時の記憶が蘇りそうだな




「どこか頼れる伝手とかは?」


「いえ、ここにはたまに山で採れたものを売りに来る位で親しい間柄の人は・・・」


「うちらのコネが利くのは鍛冶師か道具屋位なもんだがどちらも過酷な重労働だ。嬢ちゃんにやらせるのはちょっと難しいな」




妹もいるとなると住み込みで働ける場所を探すか、それも難しいなら他の村か街に移り住むしかないか?

しかし訳アリの姉妹を果たして受け入れてくれる所がいくつあるか・・・

そこで1つの考えを思いついた私はハンナさんに提案をしてみた




「もし良ければなんだけどさ、私達がいる街に来ない?」


「皆さんの街にですか・・・?」


「私達の街の教会に併設されてる孤児院で果物を育ててるんだけどね。それの手伝いをしてくれないかな?」




孤児院なら働きながら住む場所も確保される。それに妹さんと同じ年代の子達がたくさんいる場所なら多少なりとも両親がいない寂しさを紛らす位のことはできるかもしれない

とはいうものの、生まれ育った場所を離れる選択を強いることはできない。私ができるのは提案と教会のシスターに口利きすること位だけだ




「すぐに決めるのは難しいだろうからすぐに答えを出さなくていいよ。妹さんとよく話し合って決めて」


「はい・・・」


「まぁ湿っぽい話は一旦置いとこうや。今は楽しく食べて楽しく呑む!姉ちゃんこっちにオススメの酒と料理大盛りで追加な!」


「あいよー!」




リザさんが店員に追加注文をしたところでこの話は一旦保留にし、皆で食事を楽しむことにした

日中も帝国の料理を楽しんだが、王国では見かけないような珍しい食材を使った料理の数々と食べたことのない味付けは新鮮で、どれも美味しくて皆興味を惹かれた

興味といえば先刻目の当たりにしたリザさんのあの武術。一撃の鋭さと正確無比な精度はアレンにはまだまだ遠く及ばなかったが、構えは本当にそっくりだったな




「リザさん。リザさんのあの武術は誰から教わったんですか?」


「ん?あれは小さい頃から親父に教わってたもんだが、それがどうかしたのか?」


「あっいや、私の知ってる武術とよく似てまして。その武術はお父さんが一から?」


「いや、この武術の生みの親は私の先祖で代々受け継いできたんだ。私の代は女しか生まれなかったから長女の私が引き継いだ」


「その生みの親の名前って・・・」


「その感じを見るに誰がこの武術を生み出したか大方予想がついてるみたいだな。お察しの通り、うちはあの勇者の仲間だったアレンの家系だよ」




なんと・・・あのアレンが結婚していたのかぁ

端正な顔立ちで強さも兼ね備えていたアレンは女性の方から群がってきただろうが、堅物な上に女性が触れてきただけで卒倒してしまいそうになる程女性相手には難儀していたから結婚は難しそうだと思っていたのに・・・故郷だったとはいえ世界は狭いものだ

今まで考えてなかったがカルラ、セーニャにもきっと子孫がいるんだろうなぁ

いや、セーニャは魔女(ウィッチ)だからもしかしたら寿命とか伸ばしてまだ生きている可能性はあるかも

カルラは聖女様だったから子孫がいるかも怪しいな

また時間が出来ればかつての仲間がいた場所を巡ってみるのもいいかもしれないな


アレンの結婚相手は酒場で働いていた一般人で、男勝りな気の強さに惚れたらしくアレンの方から交際、結婚を申し込んだらしい

見目麗しく着飾った女性よりきっとそういう女性の方が合っていたんだろうな

結婚後も子宝に恵まれたらしく、幸せな家庭を築けていたようでなによりだ

200年以上経ってまさか仲間の子孫と出会う事になろうとは思いもしなかったが、私の知らないアレンのその後を聞けてよかった




読んでいただきありがとうございました!

「よかった」「続きが気になる」など思っていただけたら幸いです

少しでも気に入ってくれた方ブクマ、評価、感想等々頂けると大変励みになります

次話投稿時間はTwitterの方で告知させて頂きます。よろしくお願いします!

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