72話 一件落着
裏口にいた敵の相手は中からやってきたリザさんに任せ、私は捕らえられていた人達を守る事に専念して様子を見守ることにした
残念なことに道は一通で外から見えないよう塞がれている。私だけならともかくこの3人を連れて突破するのは難しい
とりあえずリザさんにはささやかではあるが支援魔法だけかけさせてもらおう
「おっ悪いね。さぁあんた達、私は手加減が苦手だから来るなら相応の覚悟をして来な」
「くそがっ、中にいた奴等は何やってんだ」
「商品はできるだけ傷つけるなよ!」
その言葉を皮切りに敵がリザさん目掛けて攻撃を仕掛けてくきた
敵は5人。うち1人は遠距離武器を持っているようだが・・・あの武器はなんだろうか
初めて見る武器だ。長い筒に・・・何かを詰め込んでいるのか?
未知の武器に警戒して剣の柄に手をかけた瞬間、爆発音のようなものが聞こえたと思ったら突然目の前に何かが現れたので私はそれを反射的に切り落とした
地面に落ちた物を見るとそれは先程の長い筒に詰め込まれていたものだった。鉛玉をあの筒で飛ばしてきたのか
あの爆発音は筒の中で実際に爆発を起きていたみたいだ。私を狙ったのは最初に倒して捕らえていた人達を使ってリザさんの注意を分散させようとしたのだろう
中々の速度だったがあの程度なら問題なく斬れるし脅威ではないな。ただ後ろにいる人達には危ない代物だから障壁を発動しておこう
リザさんは拳にガントレットを嵌めて武術で戦うゴリゴリのインファイター
遠距離武器との相性が悪いしあれに好き勝手やられるのも面倒だ。任せろとは言われたがあれだけでも無力化させておこう
「あれを斬るとかどんな反射神経してんだよ。なら今度はあっちの大女の方を・・・あ?な、なんだこりゃ!」
男がリザさんの方に狙いをつけようと構えると、その武器はボロボロと崩れ始めた
物体を脆くさせる魔法で相手の武器破壊した。これで遠距離の脅威は去ったな
あとはリザさんに任せるとしよう
「こっちもモタモタしてらんないね!」
敵を倒しながらそう言うリザさんの構えには見覚えがあった。リザさんの構えは昔の仲間の構えと瓜二つだったのだ
「アレン・・・?」
左手を前に突き出し右手を頭の上に持ってきた独特の構え。手の先に魔力を集中させて威力を底上げし、相手の防具を貫通して破壊する武術
あの武術はアレンの我流で本人以外使っているのを見た事がなかったが・・・私が死んだ後に後継者でも見つけたんだろうな
こうして再びあの構えが見れたのは素直に嬉しかった
それからリザさんが次々と敵を倒していって、序盤以降私の出る幕はなかった
倒し終わったタイミングでリザさんがやってきた扉からリザさんの仲間とフレイヤ、フィオナが集まってきた
中の敵の拘束も終わり、こうして私達は奴隷として捕まっていた人達を救う事に成功した
しかしまだやり残していることがある。あの顧客リストに載っている者達を捕まえて買われた人達を助けてあげなければならない
けどここからは国の仕事だ。ギルドと連携して解決してくれることを祈るばかりだ
「ふぅ、これで一件落着だね」
「エレナ達のお陰でスムーズに事が運んで助かったよ!ギルドに報告が終わったらパーッと飲みに行こうか!」
「いいですね」
従業員として働いてた時はお客に食べさせてばかりで自分は全く食べられずに生殺しにされていたせいでお腹はペコペコだ
サクッと報告済ませようとギルドの方に向かおうとすると、フレイヤが私を止めてきた
「ご主人様、その前にその格好をどうにかした方が・・・」
フレイヤに言われて自分の服装がお店の衣装のままだったのをすっかり忘れていた
フィオナはちゃっかり着替えてるしこれじゃまるで私がこの衣装を気に入ってるみたいじゃないか!
大衆に恥ずかしい姿を見られ、私は脱兎のごとくその場から消えて急いで服を着替えた
着替えを済ませた後は今回参加したメンバー全員でギルドを訪ね、ギルドマスターがいる部屋へと向かう
扉を開けるとそこには虎の姿をした大柄な男が仁王立ちで待ち構えていた
「おぉ、お前ら。今回の件ご苦労だったにゃん」
「全く潜入なんて向いてないんだから金輪際私達にこんな仕事回すなよな。今回は助っ人のお陰で助かったがな」
「助っ人?そういえば後ろにいる嬢ちゃん達はなんだにゃん?」
後ろにいた私達は前に出て自己紹介を始めた
目の前まで行くとその迫力は一層増す。獣人というだけあって今まで出会ったギルドマスターの中で1番実力を持っていそうだ
獣人は人の姿に近い亜人と違い限りなく獣の姿に近い人種で、種族によるが戦闘に長けている者が多い
中でもこのギルドマスターは戦闘獣という戦闘特化の種に属する
傭兵でよく雇われていたのを思い出すな。けどなんで語尾ににゃんってつけてるんだろう・・・
「初めまして、私達はグランデリア王国から来ました。私はエレナと言います。今回縁があってリザさん達の仕事に参加させてもらいました」
「そうか、うちの者達が世話になったにゃん。俺はギルドマスターのライヒムだにゃん」
「よろしくお願いします。・・・あの、1つ聞きたいんですがその語尾はなんですか?気になってしまって」
「あぁ、俺はよく見た目が怖いって言われるからな。愛嬌よくしようと思ってつけてるんだにゃん」
そう言いながらニカッと歯を見せて笑いかけてくる
1本1本が刃物の様に鋭利な歯。子供に見せたら号泣ものだろうな
もっと色々と直すべき箇所があると思う・・・
その後私達は用意された椅子に腰をかけて今回の報告を淡々と済ませ、リザさん等に頼まれた仕事を無事終わらせることができた
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