71話 奴隷救出
私は今警備の者に案内されて奴隷が捕らえられている檻の場所まで向かっている。ここにやって来るまでの間、計9人の警備員を確認した
そのうちの半数は休憩中なのか机で酒を呑みながら賭け事を行っている
今まで侵入者などやって来たことがないのだろう、警備を勤めている者達も気が緩みきっている。これなら簡単に制圧する事が出来そうだな
ここは私が制圧して上にいる警備や主犯格である者達はリザさんやフレイヤ達に任せるとしよう
少し歩くと私の前に警備員と違う服装をした者が現れた。見なりからして多分奴隷を管理しているだろう中年の男が私を手厚く出迎えてくれた
「これはこれはエミール様。お待ちしておりました」
「うむ、楽しみにしていたぞ。早速案内してもらおうか」
「畏まりました。ではどうぞこちらへ」
男に案内された場所には大小様々な檻がいくつも置かれていて、その中の2つの檻の中に3人が閉じ込められていた
捕らえられている人は皆亜人でしかも全員が女性
犬人族2人に兎人族。この3人が本日の商品ということらしい
「こちらが本日の商品でございますがこちらの兎人族の方が先程売れてしまいまして・・・エミール殿はお得意様なので今回こちらの犬人族の姉妹をセットでお安くさせていただきますよ」
物のような言い方をするこの男に怒りを覚えたが、一旦落ち着かせて犬人族の姉妹を見る
姉の方は年頃だが妹の方はまだ若いな。それでも捕まえるのは成長するまで下女として働かせるかそういう趣向の持ち主かのどちらかだろう
檻に入れられている人達を見ていると、視界に何やらプルプルしているものが入ってきた
(スライム・・・?)
奴隷として捕まっている人達の中に何故かスライムが一体檻の中に入れられていた
通常スライムは水色だがこのスライムは桃色をしている。多分隷獣として捕まえられたんだろう
通常隷獣は番犬的な役割をさせるかもっと見栄えする魔物を捕まえるものだが、このスライムは愛玩目的で捕まえたのか
あれを助けるべきかは一先ず置いといて今はこの男達を対処する方が先だ
「いかがでしょうかエミール殿?」
「あぁそうだな・・・こいつ等の他に捕らえた者はいないのか?」
「申し訳ありません。以前より一層国からの目が厳しくなっていて外から連れてくるのも一苦労でして・・・」
この人達の他に捕らえられている者はなし。ここを管理している者が言うのだから間違いないはずだ
それが聞ければあとはこの人達を救う事だけに集中すればいい
警備の人数にも変化なし。仕掛けは終わっているからあとは効果が現れるのを待つだけ
「分かった。ではこの2人を貰うとしよう」
「ありがとうございます。では料金はあちらで頂きます。ささっ、どうぞこちらへ」
「お姉ちゃん・・・」
「大丈夫よ。私が守ってあげるから・・・」
買われると分かった犬人族の姉妹は2人で抱き合って体を震えさせている
自分も怖いはずなのに必死に妹を庇っている姿は見るに堪えない。早く助けて安心させてあげたい
地下にある別室で私が成りすましている男から頂戴しておいたお金でやり取りをしていると、突然男が苦しみだした
「うっ!?なんだ、体が痺れて・・・」
男は苦しみながら痙攣を起こして地面に伏してしまった
そろそろ頃合いだと思ってたがいいタイミングだ。ここに入った時から発動していた遅効性の毒がようやく回ってきたようだな
部屋を出て警備の者達を様子を窺うと同じように苦しんでバタバタと倒れていくのを確認できた
毒といっても一時的に身動きが取れなくなる程度のもの。まぁ長時間そのままだったら後遺症が残るか最悪死に至るだろうが・・・そこはこいつ等運次第だろう
「よし、一通り片付いたな」
この場所にもう敵の気配は感じない。こっちはもう大丈夫だから上の方はリザさんから事前に預かったアイテムで合図を送って任せるとしよう
捕らわれている人達を開放する為に男のポケットに鍵がないか漁っていると、顧客リストと思われる紙が鍵と一緒に出てきた
ここに書いてある者達を捕らえれば連れて行かれた他の人達を救うことが出来るかもしれない。これは後でリザさんに渡すとしよう
檻の鍵を開けてあげると3人は戸惑っていた。それもそのはず、先程まで自分達を買おうとしていた者が手を差し伸べてきても怪しさ満点だ
私は急いで元の姿に戻って誤解を解いた
「怖がらせてごめんね、貴女達を助ける為に忍び込んでいたの。もう大丈夫だから安心して」
「ほんと・・・?ありがとうウサギのお姉ちゃん」
「これには触れないでくれると助かるかな・・・」
さて、この人達の安全を確保するのに外に出なくちゃいけないが・・・このスライムはどうするか。危険性は少ないだろうがここで解放するわけにもいかないしとりあえず"空間保管"に入れといて後で考えるとしよう
魔物だけど檻に入ってるし入れといて問題ないだろ
捕まっていた人達の枷を外していると上の方が騒がしくなってきていた
恐らくフレイヤ達が上でやり合っているんだろう。やりすぎで建物を倒壊させないといいが・・・
地下には入って場所の他に別の道があり、そこを進んでいくと店の裏口に出ることができた
しかしそこにも敵が待ち構えていた。例の馬を使わない箱に檻を詰め込んでいる
あそこにこの人達を入れて買い主に届けるつもりだったんだろう
人数もそこまででないしさっさと片付けてしまおう
「離れてて。ここは私が・・・」
「いや、ここは私に任せてもらおうか」
隠していた剣を取り出して構えようとすると、別の扉からリザさんが乱入してきた
もう中の奴らを制圧してここまでやってきたのか。銀の階級は伊達ではないようだ
そもそも私は潜入を任された身だし、敵を倒す役目は譲るとしてお手並みを拝見させてもらうとしよう
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