7話 パーティ結成で初仕事です
「エレナさーん!無事冒険者になれましたー!」
「おめでとうフィオナ」
同居生活を始めて一ヶ月。フィオナは2度目の冒険者試験を受けて見事合格した
元々能力は十分備わっていたから当然といえば当然だが、共に生活していく中でお互いを知って仲良くなっていったので自分が合格した時より嬉しかった
他愛もない話をしたり時には冗談を言ったりと1人でいた時とは真逆の楽しい日々
フィオナと過ごしていく内に自然と笑みを浮かべるようになっていった
家族以外でこんなに気を許して話したことはなかったので友達の素晴らしさを実感した
一方私の冒険者業も順調だったが、少し前に階級が1つ上がり新人という枠から外れたことによって次の人の為に寮を出ていかなければならなかった
なのでフィオナとは別々になってしまう・・・寮に入るのは強制ということではないのでこのまま新しい住まいでも生活を共にしたいと思っているが、もし断られてしまったらどうしようという思いがよぎって今日この日まで聞き出せずにいた
しかしこの機会を逃したら次はないと腹を括り思い切って気持ちを告げようと口を開きかけた瞬間、フィオナが先に話し始めた
「エレナさん、新しいお部屋はどこにしましょうか」
「えっ・・・?」
「あれ、もしかして私の早とちりでした!?冒険者になれたからエレナさんとパーティを組んでこれからも一緒に暮らすものかと勝手に・・・」
どうやら私の心配は杞憂でフィオナも同じ気持ちだったようだ
しかも言おうとしていたパーティの件まで先に言われてしまった
仮にも元勇者が情けないものだな
「私もフィオナと一緒だと嬉しいな。これからもよろしくね」
「もぉ驚かせないで下さいよー!じゃあ早速依頼を選んできますね!」
そう言うとフィオナは受付と向かっていった
パーティとして初の依頼。一体どんなのを選んでくるんだろうか
言っても冒険者になりたてだからそこまで難しい依頼はないだろうし、私とフィオナの実力なら失敗はまずないだろう
少ししてフィオナニコニコしながら戻ってきた
何かいい依頼でも見つけたんだろうか
「お待たせしましたー♪」
「おかえり。どんな依頼を受けてきたの?」
「これです!」
渡された依頼用紙の内容を見てみるとそこには接客業と記載されていた
新人冒険者の依頼には魔物討伐や採集以外にもこういった依頼も任されることもあって他にも引越しの手伝いや下水の処理等々
装備等が整っていなくて危険と判断された新人にはこういった依頼が振られる
便利屋のようなものなので当然人気のない依頼だが・・・フィオナはそれを持ってきたのだ
「私、一度接客やってみたかったんですよねぇ」
まぁフィオナが選んだ初めての依頼だし任せるとするか。それにたまには違った依頼を受けるのも新鮮でいいかもしれない
用紙に書かれているお店へと向かうと入口には準備中の札がかけられていていたので裏口からノックして入った
「すみませーん。ギルドから依頼でやってきた者ですがー」
「はいは〜い、待ってたわ〜私はここの店長のハルク。今日はよろしくねん♪」
奥から私達を出迎えてくれたのは女口調だがムキムキで厳つい男性店長のハルクさん
見た目と話し方のギャップが凄すぎて入るお店を間違えたかと思ったがここで合っているようだ
「本当に助かったわぁ。今日シフトに入っていたホールの子2人が風邪と急用で休んじゃったから急遽ギルドに依頼したんだけど、まさかこんなかわいい娘達が来るなんてツイてるわ♪」
ハルクさんに更衣室まで案内されると箪笥から制服を取り出してきて私達に渡してきた
渡された制服を広げてみると可愛いらしい制服で下はなんとスカートだった
「あの・・・すみません、この制服以外ってないですか?」
「ウチの制服はこのタイプしかないわよぉ。着替え終わったら厨房に来て頂戴ねぇ」
本当にこれを着るしかないのか・・・断りたいところだがフィオナが初めて受けた依頼だし、途中で依頼を放棄すると今後に響くからなぁ
まさかこんな所で人生初のスカートを穿く羽目になるなんて・・・
男向けの服しか着たことがないので自分に似合っているのかも分からないし、このニーソとかいうのも脚に密着してなんか変な感じだ
制服に着替え終えるとフィオナに変な所がないか確認してもらった
「ど、どう?変じゃないかな?」
「バッチリ似合ってますよ!」
「フィオナも似合ってるね。でもやっぱり変な感じ・・・凄いスースーする」
「私はちょっと胸の辺りがキツいですねぇ。もう少し大きいサイズがないか聞いてきます」
フィオナの胸元を見ると今にもはち切れそうで谷間が見えていた
あのままお客さんの前に出たら違うお店になるところだったな
その後は店長の指示に従いながら開店準備を淡々と進めていくが、動く度にスカートがひらひらと動いて物凄く気を使った
世の女性はよくこんなのを穿いていられるな・・・
そしていよいよ開店の時間を迎えた。今更だが接客業なんて初めてだから少し緊張するけど言われた通りにやるしかない
少しして早速1人目のお客さんがやってきた
「いらっしゃいませー♪」
「い、いらっしゃいませー」
ぎこちないながらも精一杯の笑顔を作って接客する
フィオナは流石自分からやってみたいと言うだけあってテキパキと動けている。私も頑張らなくては
開店してから1時間も経たないうちに次々とお客さんが店に入ってきて瞬く間に満席となった
店長が言うには混むのはお昼時だという話だったが、その時間帯になる前から列が外の方まで出来上がっていた
「店長、まだお昼前なのにすっかり満席になっちゃいましたよ」
「どうやらエレナちゃんとフィオナちゃん目当てのお客さんが集まってるみたいね」
他の人にはここで働くことは話していないしどうやって広まったんだろうか?
注文をとろうと周りを見渡していると最初に来て帰っていった筈の1人目のお客さんがまた店に来ているのを見つけ、その人の話し声が聞こえてきたので耳を澄ます
「な?言っただろ。めっちゃ可愛い子達が接客してくれる店があるって」
「あぁ、まさかここまでとは思わなかったぜ。あの白髪の女の子に踏んでもらいてぇ」
どうやら始めのお客さんが私達の事を広めて回ったようだ
なんか変な層のお客さんまで来てしまっているが・・・
その日は1日中働き詰めで慣れてない作業ということもあり、普段魔物を倒すよりずっと体力を使ってヘトヘトになった
ハルクさんは過去最高の売り上げが出たと喜んでいて、私達を正式に雇いたいと言ってきた
本職はあくまで冒険者だが、報酬もかなり色をつけてくれたしフィオナは楽しそうに働いていたのでたまにならやってもいいかもしれない
出来れば制服の改善はお願いしたいところだが・・・
2人での初仕事はこうして無事終わりを迎え、その日は適当な宿で休むことにした
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