67話 体、戻りました!
アポストロスの乱入で一波乱あったものの、途中で立ち去ってくれたお陰で私はなんとか無事に泉に入ることが出来た
泉に浸かって少し待っていると透明だった泉が黒く濁り出していき、まるで体内にある毒素が抜けていくような感覚が体に伝わってきた
やはりここが目的の泉で間違いなかったようだ
そして徐々に体にも変化が現れ、少しずつ体が大きくなっていって数分で元の姿に戻る事が出来た
「良かった、元に戻れたよ」
「良かったですー!色々ありましたがこれで一件落着ですね!」
体に異常も見当たらないしちゃんと力も元に戻ったようだ。これで安心して帰ることが出来る
さて、魔物に襲われないうちにさっさと着替えないと
空間保管から服を取り出して着替えを済ませる
フィオナから借りた服はどれも可愛すぎる。やはり自分のが一番落ち着くな
ササッと着替えを終えたらアポストロスに眠らされ、涎を垂らしながら気持ちよさそうに寝ているフレイヤを起こしに行った
「ほら、フレイヤ起きて」
「・・・・・ん、ハッ!ご主人様!元に戻ったんですね!良かったです!そういえばあいつはどうなりました?」
「よく分からないけどどこかに消えていったよ。もう帰るけど立てそう?」
「はい、問題ないです。すみませんご主人様、負けてしまいました・・・」
どうやらあれに負けた事にフレイヤは酷く落ち込んでいるようだ
相手が相手だから全然気にしていないんだけど、本人は全力を出したにも関わらず手も足もでなかった事を気にしている様子
こういう時慰めるべきか触れないでおくべきか迷うところだが、フレイヤの場合は・・・
「次遭遇した時の為にもっと強くならなきゃね。期待してるよフレイヤ」
「ご主人様・・・!不肖フレイヤ!一層訓練に励んでいきます!」
こうして発破をかけてあげればすぐ元気を取り戻す
まぁあんな化け物と再び相対するなんて御免だしそう都合よく何度も出逢うことは無いだろう
「でも使うなって言ったブレスを使ったのは良くないよねぇ」
「あぅ・・・ごめんなさい」
フレイヤを軽く叱ってこの話は終わり。用も済んだので私達は転移でエルフの里へと帰還した
もう少し世界樹を外から眺めたかったが、またいつ襲われるか分からないし今回は諦めるとしよう
里に到着すると外はもう日が暮れ、皆夕食の支度に取り掛かり始めていてフィオナの家からも中からいい匂いがしてきた
扉を開けると夕食の準備を手伝っていたラミアスとシエルが私達を出迎えてくれた
「おかえりなさいませ。無事戻れたようで安心しました」
「無事元に戻れたのだな!小さい姿のままだったら私の妹にしたのにな」
「ただいま、流石にあのままは勘弁かな」
私達が話しているとキッチンの方からフィオーラさんも顔を出してきた
「おかえりなさい、今日1日大変だったでしょう。お風呂の準備も出来ているから上がったらご飯にしましょう」
「ありがとうございます。そうさせてもらいます」
フィオーラさんの言葉に甘えて先にお風呂に入らせてもらい、サッパリしてから食卓に着いた
今日はお昼も食べずにぶっ続けで泉を探していたからもうお腹がペコペコだ
「お待たせ~たくさん食べてちょうだいね」
フィオーラさんが持ってきた料理はシチュー。美味しそうだとお皿を覗いてみると中にはキノコが入っていた
昨日キノコで痛い目にあったばかりだから流石に食べ辛い・・・
手を出さず渋い顔でシチューを眺めているとフィオーラさんがそれに気づいた
「大丈夫よぉ、ちゃんと人にも害が無いものを選んだから心配しないで」
「そ、そうですか・・・じゃあ遠慮なく」
フィオーラさんに促され一口啜る。キノコのエキスが全体にいき渡り中に入っていた鳥の肉はサッパリとしていて優しい味が胃の中にゆっくりと流れていった
エルフの里で作られたパンは硬めに焼き上げられているが、シチューに浸して食べるとよく染みて自然と次のパンに手が伸びた
入っていたキノコも特に問題ないようで安心した。これならいくらでも食べられそうだ
「くっ・・・ふふ」
「フレイヤ?」
「あーっはははは!くくくっ・・・はははは!!!」
突然高らかに笑い出したフレイヤに一同困惑。何がそんなに面白かったのか
フレイヤのお皿を見るとシチューは既に完食済み。それを見て嫌な予感がした
まさかこのシチューの中にまた何か入ってたんじゃ・・・
「あっ、このキノコ竜族が食べると一晩中笑いが収まらなくなるやつだわ。ごめんなさいね♪」
「あはははは早くっ!ぷぷっ!戻して・・・・ひぃひぃ」
自分の頭を軽く小突いて舌を出して謝ってくるフィオーラさんに思わず溜息を吐く。この親子は・・・
解毒の魔法をフレイヤにかけてようやく笑いが収まった
よく確認して食べないとまたどんな毒にかかるか分からないぞこれは
ロシアンルーレットのようなシチューを食べ終わり落ち着いた私達は1日の疲れが急にやって来てベッドですぐ眠りについてしまった
それから一週間程滞在し、エルフの里を出る日がやってきた
紅葉狩りや秋の味覚も堪能させてもらい、エルフの人達も良くしてくれてとてもいい場所だった。キノコに少し苦手意識は覚えたけど・・・
初日の方にトラブルが発生して大変だったがいい休日を過ごす事ができて本当に良かった
「お世話になりました」
「また遊びに来てね。フィオナもいつでも帰ってきなさい」
「うん♪またねお母さん」
フィオナの両親に別れを告げ、私達は里を出た
今度来る時は来年の春だろうか。花を咲かす事で辺り一面が桃色一色になるようだからそちらも是非見てみたいものだ
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