65話 世界樹の中
ロデリオさんから聞いたあらゆる症状を治すという泉を目指して私達は世界樹へと向かった
出立の際にロデリオさんから聞かされたが、なんでも最近世界樹の近辺に得体の知れない魔物の存在を感知しているらしい
姿までは確認出来ていないらしいが、とてつもない魔力を感知しているようだ
魔力を多く有しているエルフの人達がそう言う程だから相当なものなのだろう
なので万が一を考えて世界樹には私、フィオナ、フレイヤの3人で行くことにしてシエル、ラミアスには再び留守番をしてもらうことにした
せっかく世界樹に行くのだから2人も連れて行きたかったが危険な魔物がいると聞いては連れて行くわけにはいかない
幸いラミアスはアリア、セリアの2人が遊び相手となってくれるようだしシエルはフィオーラさんの手伝いをするみたいなので安心して向かうことができる
「じゃあ行ってくるね」
「行ってらっしゃいませ」
「気をつけるのだぞー」
エルフの里からすぐそこにあるように見えても世界樹まではここから少し時間がかかるようなので、地上からの移動より危険が少ない空からの移動で目指す
まぁ地上から移動しようにもこの体ではあの険しい道のりは難しいので、どの道おぶってもらわないとまともに進むことが出来ないからこちらの方が気が楽ではある。文字通りお荷物状態で少し申し訳ない
朝方に移動を開始し、日が昇り始めた頃に私達はようやく世界樹に到着することが出来た
遠目で見た世界樹も十分迫力があったが眼前で見る世界樹のその迫力は比にならない
視界が世界樹に埋め尽くされる。何千、何万年の時を過ごして成長を遂げたその姿に思わず圧倒されてしまった
「エレナさんこっちです〜」
フィオナの声で当初の目的を思い出して急いで駆け寄る
フィオナがいる根元の方に近づいていくと、そこの場所だけ大きな空洞が出来ていて中に入れるような形になっていた
結局ここまでの間にロデリオさんが言っていた魔物を発見することはできなかった
空から警戒して見ていたがそれっぽい魔物は見当たらなかったし、この辺りにも痕跡はなく魔力も感じない
世界樹周辺からは離れてしまったんだろうか。それならそれで安心して泉を探すことが出来るので助かるが
まぁ遭遇したとしてもまともに戦えるのはフィオナとフレイヤのみで今回私は戦力外
手放す事が出来ない聖剣を持ち歩くだけで精一杯だ。現状盾に使う位しか出来ないので凄く邪魔臭い・・・
空洞から世界樹の中に入っていき、暗い中を明かりを点けながら暫く進んで抜けるとそこは広大な密林となっていた
どういう原理か分からないが世界樹の中は明るく、今まで見た事のない植物達がたくさん存在している。緑、黄、赤、その他にも様々な色が目の前に広がっていて同じ森でも外の森とは全く違った印象だった
外の見た目に違わず中もかなりの広さな上、天井があるということはダンジョンのように何層かに分かれているようだ
捜索は大変そうだが広大な分フレイヤも空が飛べる事ができるので、引き続き空から移動しつつ泉を探すことにしよう
空から地上の様子を見ていると見慣れない植物に混じって植物系の魔物がそこかしこに点在していた
「ご主人様、あれ見てください」
飛行中、フレイヤに言われ下を見てみるとそこには徘徊している魔物がいた
外でも見かける魔物、私達と同じ場所からこの中に入って来たのだろう。食料を求め正面にある果実がなっている植物に向かっているようだ
魔物が目の前までやって来て手を伸ばし果実に触れた瞬間、植物が大きな葉2枚を使ってその魔物を一飲みしてしまった
魔物は抵抗しようと必死に暴れているが葉から出ることは出来ず、植物が出した酸のような分泌液によって溶かされた
あれはイータープラントという魔物で甘い果実で相手をおびき寄せ、油断したところを先程のように葉で相手を飲み込んで酸で溶かす魔物だ
世界樹の影響なのか、ここにいる殆どはあのような植物系の魔物が多く割合を占めているみたいだ
「フレイヤ、間違っても魔物と戦う時はブレスとか使っちゃダメだからね。世界樹が燃えたりでもしたら洒落にならないから」
「もうご主人様ってば。流石に私もそんな事しませんよぉ~」
そうは言いつつもいざムキになると忘れて絶対使いそうなんだよな・・・よく見ておかなくては
結局最初の場所には泉は見当たらなかったので上の層に移動することにした
上の層から滝のように水が落ちてきている場所があり、そこの空洞から上へと向かうことができた
水が落ちてきていたからこの層ならと期待したが、ただの池のようで毒や呪いを治す泉とは到底思えないものだった
更に上へ上へと目指す。道中飛行系の魔物に襲われたりフレイヤが巨大な蕾のような魔物の蔓に足を掴まれ食べられかけたりしたが、なんとか登って来ることができた
これでも世界樹の大きさから考えてまだ半分程度といったところだろう
魔物も結構強くなってきている。今のところは何とかなっているが、これ以上となると私を庇いながら戦うのは難しくなってくる
そろそろ見つけたいところだが・・・
「ん?エレナさん、あれなんでしょうか」
フィオナが指す場所に目を向けると一部窪んでいる場所があった
不思議に思いつつも何の変哲もないただの穴だと思い目を逸らそうとした瞬間、ほんの一瞬その窪みから光が反射したのを確認した
「フレイヤ、あそこの窪みに近づいて」
フレイヤに近寄ってもらいもう一度窪みの場所をよく見ると、そこはただの窪みではなく水が溜まっている場所だった
あまりに綺麗な水で近づくまでそこにあるのが気づけなかった
もしかしたらここが目的の泉かもしれない。確認する為に私達は地上へ降りることにした
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