63話 子供に戻りました
「いやぁ助かったよ。お陰で命拾いした」
「いえ、無事で何よりでした」
長老を襲おうとしたキング・ボアは無事討伐した
私の方を全く気にする素振りもなく長老にしか目がいってかなかったので、真上から首目掛けて剣撃をくらわせてやった
大型の魔物な為一撃では完全に首を落とすまでには至らなかったが、着地後風の魔法で作り出した風の刃でキング・ボアの頭と胴体を切り離すことができた
長老さんがいい囮役となっていて隙だらけだったからすんなり倒すことが出来たが、こちらの存在が気づかれていたらもう少し手こずっていただろう
「ところで何故このような場所に人族の娘が?」
「あぁ、それはですね」
「長老~!大丈夫でしたか?」
「おぉフィオナか。帰ってきていたんだな」
「心配しましたよぉ。怪我も大したことなさそうですしご無事でなりよりです」
長老がキング・ボアに襲われていた理由は長老が縄張りにうっかり入ってしまい、しかもキング・ボアが好んで食べる木の実を取ってしまった事が原因らしい。だからこちらに目もくれず長老さんを狙っていたのか
なんにせよ無事で良かった。長老さんも救えて欲しかった肉も調達することも出来て万々歳だ
長老さんとも合流することができたので怪我を治した後は皆で里の前まで転移で帰還した
シエル達が待っている場所に戻ってくると、そこには先程塀の上から顔を見せてくれたアリアとセリアがラミアス達と一緒になって遊んでくれていた
「おっ!帰ってきたな」
「あっ!長老も一緒だー!」
「一緒だー!」
どうやら私達が山菜採りに行っている間に仲良くなったようだ
子供というのは距離を縮めるのが早いなぁ
キング・ボアから長老を助けたことによって私達はスムーズに里の中に入ることができた
里の中を歩いていると周りにいたエルフ達からの視線が集中した
けどそれは忌避の目を向けられているという訳ではなく、単純に珍しいと思ってのもののように感じた
それにしても流石エルフ。どこを見ても美男美女だらけだ
そして思っていた通り皆スレンダーだな。フィオナの家系だけが特別なのだろうか
「皆、この者達はフィオナが連れて来た仲間だ。そして私がキング・ボアに襲われている所を救ってくれた。私の客人として迎えるので失礼のないようにな」
「おぉ、あのキング・ボアを」
「では今夜はそいつを使って宴だな!」
長老の客人として迎えられた私達は里の人達からも手厚い歓迎を受ける
昔のイメージではエルフは厳格な者が多い印象だったが、私が思っていたよりも柔和な人達が多かった
倒したキング・ボアを使って宴も開いてくれるようだし楽しみだ
「申し遅れた。私は長老のセルシオ。先程は本当に助かった。ゆっくりしていってくれ」
「エレナです。少しの間ですがお世話になります」
倒したキング・ボアの毛皮を剥いで食べやすいように肉を切り分け、剥いだ毛皮はエルフの人達が冬に備える為に使用するらしいので使う予定もなかったから全てあげることに
火にじっくり炙られたキング・ボアの肉は少々弾力はあったが臭みがなく旨みが凝縮されていて美味しかった
薄切りにしキノコ等色々入った熱い出汁にサッと潜らせて火を通し、山菜と一緒に口に入れることによってあっさりと食べられていくらでも入っていった
「エレナさんどうぞ、さっき取ってきたキノコですよ」
「ありがとう。んっ!美味しい」
焼いたことによって噛んだ瞬間キノコのエキスが口いっぱいに溢れ出してくる
エルフの里で育てている豆を使用して作られたという塩辛いソースとバターがキノコにとてもよく合って持ってきたお酒と一緒にたくさん食べた
夜が更けたところで宴も終わり、食べきれない残りの肉は保存食として持ち帰ることにしてその日はフィオナの実家に泊まらせてもらうことになった
美味しい料理を堪能できて他のエルフ達とも仲良くなれて実に楽しい夜だった。里に来ることができて本当に良かった
翌朝、目覚めると体が少し怠く感じた
お酒はそこまで飲んでいなかったので気のせいかと思い、着替えようと立ち上がると足が服に引っかかってしまい転んでしまった
「ったたた・・・ん?・・・えっ?体が・・・縮んでる!?」
ピッタリだった筈の服、下着が全て脱げて素っ裸。そこで自分の体に異変が起きていたことにようやく気がついた
昨夜までなんともなかった筈の体が朝になったら子供の体へと変わっていた
事態に驚いた私はとにかくベッドで寝ている皆を起こそうと声をあげた
「ちょっと起きて!大変なんだよ!」
「んん〜・・・どうしましたかご主人様」
まだ眠そうな顔をして目を擦りながらフレイヤがこちらを見てくる
私の姿を見て一瞬目を見開いたが、少ししてまた毛布を被って眠ってしまった
「なんだ、夢か・・・」
「夢じゃない!早く起きて!」
思い切り背中を叩いてやったが全く起きる気配がない
体に比例して力まで低下してしまっているようだ
必死に揺すって目を覚ました皆は私の姿を見てようやく事態を把握してくれた
昨夜の楽しさから一転、気分はどん底である
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