62話 山菜採りの最中に
エルフの里へとやってきた私達一行は今、樹の杭で作られた塀の前にいる
扉は堅く閉ざされていて、外からは開けられない仕組みになっているように見える。迂闊に触って反感を買いたくはないのでここはフィオナに全任することにしよう
フィオナが塀の方まで行き、扉を叩くと少し時間をおいてひょっこりと顔を出してくる2人の幼いエルフを発見した
こちらの姿を確認すると嬉しそうな顔をして手を振ってきた
「あっ!フィオ姉だ!おーい!」
「フィオナ姉やっほー!」
「ただいまアリア、セリア。早速で悪いんだけど私のお母さんを呼んできてくれる?」
「分かった!待ってて!」
「待ってて!」
フィオナの頼みを聞き入れ、2人はフィオナの母親を呼びに消えていった
「今の子達は?フィオナの妹?」
「いえいえ、お隣に住んでる双子の姉妹です。あの子達が生まれた時から一緒だったから本当の妹のような感じなんですよね」
2人が消えてから暫くして内側から門を開ける音が聞こえてきた
そして中からまた新たなエルフが現れ、こちらに向かって歩いてきた
「あ、お母さん!ただいま~!」
「おかえりフィオナ。」
親に甘えるフィオナ。新鮮だ
普段敬語口調で話しているフィオナだけど親と話す時はあんな感じなんだな
それにしてもあれがフィオナの親御さんか。流石エルフ、一児の母だというのにあの若さ
フィオナのお姉さんと言っても全く違和感がない
そしてあの胸・・・なるほど、フィオナは母親の遺伝を強く受け継いでたんだな
「ところでフィオナちゃん、後ろにいる人達は?」
「あっ、どうも。私はフィオナさんと一緒に暮らしているエレナといいます。こちらがフレイヤ、シエル、そしてラミアスです」
「あらあらそうなの。初めまして、私はフィオナの母フィオーラです」
穏やかそうな人で良かった
皆こんな感じだと助かるんだけどな
「お母さん、皆を里に入れたいんだけど」
「ん~、フィオナちゃんのお仲間さんだから入れてあげたいのは山々なんだけど、長老に許可を貰わないといけないのよねぇ。けど肝心の長老が今外に出てていないのよねぇ」
「えぇ~・・・じゃあ入れてもらうこと出来ないのぉ?」
「ごめんなさいねぇ」
どうやら里に入るには長老の許可が必要だが、その長老が今は不在のようだ
これじゃあいつ入れるか分からないな
「どうする?長老さんが来るまでここで待ってる?」
「あっ、じゃあただ待ってるの退屈ですし森に入ってキノコとか色々採ってきますか?」
山菜採りか。出発の時に聞いてから気になってたし時間潰しにもいいかも
里の人達の分も採っていってあげれば少しは喜んでくれるかな
「えー!我もう足がパンパンで動けないぞ!」
「うーん・・・ラミアス1人置いてくわけにもいかないしなぁ」
「では私がラミアス様と一緒にここで待機していますので皆様はどうぞ行って来て下さい」
「いいの?ありがとうシエル。じゃあ悪いけど少しの間だけここで待っててね」
シエルと歩き疲れたラミアスに荷物を預けて塀の前で留守番させ、私達3人は山菜採りへ向かうことにした
「この辺りは詳しいの?」
「勿論です!小さい頃からこの森は庭のようなものですからね。ここから少し行った所に自生してる場所があるのでそこに行きましょう」
先程の場所よりも一層樹の根が張ってて足場の悪い険しい道のりだ
シエル達を連れてこなくて正解だったな。ある程度の身体能力がないとここを通るのは難しいだろう
そこから暫く進んだところでフィオナが足を止めた。どうやらここが目的地のようだ
フィオナに連れてきてもらった場所には確かたくさんの山菜が自生していた
見た事のないもの、明らかにヤバそうなものまで様々だ
薬草の知識を少しかじった程度だからどれが食べていいものか分からないからフィオナに聞きながら採ることにしよう
「2人共この辺りは魔物も出ることもあるので気をつけて下さいね」
「分かった。このキノコは食べられる?」
「それは食用だから大丈夫ですね。食べられますよ」
「フィオナ、これはどうだ?」
「それはただの草ですね・・・」
それから私達は黙々と山菜採りに励み、そこら中に生えていたお陰もあり一時間程で籠が一杯になる程の量を収穫することができた
過剰に採りすぎると来年来た時に採れなくなってしまうとのことなので、それ位にして塀の前で待っている2人の元に帰ることにした
採取中も魔物が出てこないか警戒していたが結局現れることはなかった。帰りに魔物でも獣でもいいから現れてくれたら今日の夕飯は鍋で決まりなんだけどな
行き帰り往復で2時間、採取に1時間。日も沈んできたことだしそろそろ長老という人も里に帰ってきただろうか
里の目の前で野宿なんてのは流石に避けたいところだが・・・
「今の音は・・・?」
樹がなぎ倒されるような音と微かな悲鳴がこちらまで聞こえてきたので、私達は急いで音がした方へ向かった
音がした場所はそこまで遠くなく、数分程で到着した。そこで目にしたのは魔物と魔物に襲われているエルフが1人
魔物はキング・ボアという10m近くある大型の魔物で突進と鋭く伸びた牙を用いて攻撃してくる魔物だが、あの太い樹までなぎ倒してしまうなんて凄い威力だな
魔物の方を観察していると、フィオナが襲われいるエルフの顔を見て声をあげた
「あれは・・・長老じゃないですか!」
あれが里の長老か。背中には籠を背負っている
私達と同じように山菜採りでもしていたのか。それをキング・ボアが嗅ぎつけて襲ってきたのかもしれない
脚を怪我しているみたいだから早く助けてあげないと
私は長老を救出すべく剣を抜き、今にも襲いかかろうとしているキング・ボアに攻撃を放った
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