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58話 魔王の娘と同居します

突如私達の前に現れた魔王の娘を名乗る少女ラミアス

お腹を空かせていたようだから慰労会で貰った余り物の料理を出してあげると、あっという間に平らげてしまった

相当お腹を空いていたのかまだまだ食べたりない様子で、空いたお皿をこちらに差し出しておかわりを要求してきた



「もごもごもご・・・ッゴク!おかわりっ!」


「気に入ってくれたみたいですね♪準備するのでちょっと待って下さい。シエルさんも手伝ってくれますか」


「畏まりました」



フィオナとシエルは家にある材料で追加の料理を作りにキッチンへ消えていった

ラミアスも食べて少しは元気になったようだし料理が出来るまで話を聞いてみるか



「ラミアス、私がこの街にいるってよく分かったね」


「ここに来るまでの間に人間がお前の事を話しているのを盗み聞いた。聖剣を所持する者がこの街にいると。勇者(あいつ)が使っていた剣を持っているということはお前が勇者エイクなんだろ!」



どうやらこの子の中では聖剣を持つ者は勇者という認識になっているようだ

まぁ勇者だったというのは間違っていないんだけど・・・フレイヤみたいに魔力の波長を感知して来たというわけじゃないのなら言いくるめることができるかも



「確かにこれは勇者が使っていた聖剣だけど私は勇者じゃないよ。勇者は魔王との戦いでずっと昔に亡くなっているから」


「生き残っていたとしても200年以上も前の話だぞ。人間の寿命は長命でも90か100程度だから生きている筈がない」


「は・・・?ちょっと待て200年!?我が寝ている間にそんな年月が経っていたというのか・・・」



私をフォローするフレイヤの言葉にラミアスは唖然としていた

こちらも彼女の言葉に引っかかる部分があった。彼女は魔王が倒されてから今までずっと眠っていたというのか

一体どういう訳なのかと考えているとラミアスがブツブツと何か呟いているのが聞こえてきた



「確かに魔王城が瓦礫の山に変わり果てていたし魔族の反応も全くなかった。まさか本当に・・・?」


「おいちんちくりん、どうしてお前だけ200年以上も眠っていたんだ?」


「ち、ちんちくりん言うな!これ以上お前らなんかに話すもんか!ふんっ!」



理由を聞こうとするとそっぽを向いて拒否してきたラミアス

それを見たフレイヤは作戦を変え、フィオナ達がいるキッチンの方を指した



「そうか、それは残念だ。ちょうど料理が出来たようだから食わせてやろうと思っていたのに・・・」



見計らったようなタイミングでフィオナとシエルが出来上がった料理を持ってきて、それをこれ見よがしにラミアスの眼前に持っていって見せつけた



「正直に話せば好きなだけ食べさせてやるぞ。いらないというのなら私達が食べてしまうだけだがな」


「くっ、卑怯だぞ!・・・・・・分かった話す!話すから食べさせてくれ!」



やはりこの魔王の娘、ちょろい

料理に釣られて我慢が出来なかったラミアスは覚えている事を私達に話してくれた

魔王が倒された後、散り散りになった魔王軍はラミアスだけでも生かそうととある場所に封印して眠らされていた様だ

今まで見つからなかったのはその場所が魔族だけにしか見つける事ができない特別な隠し部屋で、更に外からは分からないような細工が施されていたかららしい

それで封印が解けたのがここ最近で、目覚めて外に出てみると魔王城は跡形も無くなっていて周辺に配下の気配もなし

途方に暮れて歩いていたら人間の村を見つけ、そこで難を凌いでいた際に私の話を聞きつけて勇者だと確信し、レジティア方面に向かう馬車をこっそり隠れながら乗り継いでここまでやって来たということのようだ


それから今度は私達の話を聞かせ、ここが200年以上経った世界で魔族は自分以外におらず目的だった勇者さえいないという事実に直面したラミアスは、立ち上がり扉の方へ俯きながらトボトボ歩いていった

その姿が見ていられなくて私は彼女を引き止めた




「体も汚れているみたいだし家に泊まっていきなよ。行く当てもないんでしょ?」


「・・・本気で言っているのか?我はお前らが忌むべき存在である魔族の王の娘だぞ」


「そんなの関係ないよ。こんな夜更けに行く当てもない小さい子を外に放り出すわけにはいかないから」



それを聞いたラミアスは少しの逡巡の後、私の元まで戻ってきて袖を掴んできた



「し、仕方ないから泊まってやろう。感謝するのだな!」


「はいはい、じゃあお風呂に入って綺麗にしてあげるよ」



私はラミアスの手を引き、お風呂場に連れて行って今までの汚れを落とすように念入りに洗ってあげた。こうして見れば年相応の可愛らしい女の子だ

魔王を倒した事が間違いだったとは思わない。それは今のラミアスを見ても揺らぐことはない

倒していなければいずれ人族は滅んでいただろうしラミアスのように親を失う子がたくさん出ていただろう

けどこの子が私の元にやってきたのも何かの縁だ。これは私の我儘(わがまま)になってしまうかもしれないが、魔王を倒した者の責任としてラミアスが望むのなら共に暮らすことも厭わない



読んでいただきありがとうございます!

「よかった」「続きが気になる」など思っていただけたら幸いです

少しでも気に入ってくれた方ブクマ、評価、感想等々頂けると大変励みになります!

次話投稿時間はTwitterの方で告知させて頂きます。よろしくお願いします!

※誤字訂正しました

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