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55話 ミノタウロスとの戦闘

下層で休息を挟みつつ色んな魔物と戦闘を重ね、1人1人が着実に経験を積んでいっていた

そのお陰で連戦もこなせるようになり、下層での戦いも様になってきている

しかしもうそろ王都へ戻らないといけない。今回ダンジョンにやってきた生徒達の他にもまだ2組残している

この組だけならもっと日数をかけてじっくりとやっていって更に下層を目指してもいいが、その子達のダンジョン訓練も付き添う必要がある


まだ出来たばかりの施設で講師も不足がちな状態なので全て私が同行しなくてはいけないのだ。ここからダンジョンを出る時間も考えてこの下層で戦闘を行えるのはあと1回といったところか

現在中間位置にいるから出口の方へ戻りつつ出くわした魔物と戦う感じでいいか



「しっ!何か来る。これは・・・こっちに向かって来てるのは1体だけだ」


「1体だけ?これまでの魔物と違うってことか?」


「分からない。でも警戒した方がいい」



警戒しているこちらに魔物は私達が向かっていた出口の方からどんどん近づいてくる

そして姿を現したのはホブゴブリンより大きく4mはある身丈に隆起した筋肉。鋭く尖った2本の角と牛の顔をした魔物



「ミノタウロス!」



こんなところでミノタウロスと出くわすとは・・・

ミノタウロスは本来こんな浅い階層ではなくずっと下の階層に現れる魔物だが、稀に上層の魔物に混じっていることもある

まさかこのタイミングで来るなんて。まだこのレベルは生徒達には早すぎる


ミノタウロスが他の魔物と決定的に違うところ、それは武器を持っているという点だ

人間が振り回せるような可愛い代物ではなく、ミノタウロスの体半分はありそうな大斧

あれを振るって来るだけでかなりの脅威になる。新人冒険者の装備では心許ない

ここは私が出ていって倒すしかないようだな



「フレイヤ、フィオナ。2人は皆を守ってあげて。私が・・・」


「ちょっと待ってくれ!」



倒してくる。と言いかけたところでタクトが制止してくる



「あいつと戦わせてくれないか?」


「いや、あれは今までの魔物とはレベルが違うよ」


「あぁ、雰囲気であれがヤバいのは俺でも分かる。俺達が束になっても勝てないかもしれない・・・けどこれは成長できる機会かもしれないんだ。多少危険でも挑戦したいんだよ」


「私達もお願いします!戦わせて下さい!」



生徒達の目は真剣そのもの。その心意気を汲み取ってはあげたい気持ちはこちらにもあるが流石に今回は・・・うーん



「ブモォォォォォ!」



戦わせるべきか考えあぐねていると痺れを切らしたミノタウロスがこちらに突進してきた

大斧を目一杯振り回して薙ぎ払いの攻撃を放ってくる。しかしそれが私達に当たることはない

フレイヤが大斧を片手でミノタウロスの攻撃を受け止めていた



「ご主人様が今話してるんだぞ。少し静かにしていろ」



ミノタウロスが大斧を動かそうとするも赤竜族のフレイヤの力には当然敵わず、ビクともしない

そのままフレイヤはミノタウロスを壁際まで殴り飛ばして生徒達との距離を離してくれた



「頼む!危ないと感じたら割って入ってもらって構わない!」


「お願いします!」



その見極めが結構難しいんだけどな・・・けどここまで言われたら無下にするわけにもいかないか



「分かった。無茶はしないようにね」


「「ありがとうございます!」」



話が纏まったタイミングでフレイヤに吹き飛ばされたミノタウロスも立ち上がってきて、再度こちらに攻撃を仕掛けようと構えに入っていた



「後衛!ありったけの魔法を食らわせてやれ!」



後衛部隊全員がそれぞれ使える最大火力の魔法、付与(エンチャント)された矢をミノタウロスに放った

しかし放った攻撃はミノタウロスが使う大斧に阻まれ、命中した攻撃も大したダメージにはならなかった

こちらの攻撃が止むと今度はミノタウロスが反撃してきた。前衛部隊の元まで一気に距離を詰めて大斧を振るってくる



「攻撃くるぞ!盾隊頼んだ!」



ミノタウロスの攻撃を盾役全員で受けるも、完全には受け止めることはできず力で押されて盾役の生徒達は吹き飛ばされてしまう

けど今の攻撃で相手に隙が生まれた。そこを前衛部隊全員で取り囲んで攻撃を仕掛ける

しかしこれもかすり傷程度でミノタウロスを怯ませる程の攻撃には至らなかった



「くそっ!こんなにやってもダメなのか!」


「諦めるな!もう一度いくぞ!」



それからもミノタウロスと生徒達による総力戦は続いた

攻撃は命中して着実にダメージは入っている。けど小さいダメージではミノタウロスの猛攻を止めることは出来ない

この状態が続くようなら先に限界が来るのは生徒達の方だろう


私の予想は当たり、限界を迎えた生徒が1人また1人と戦闘不能になっていきこちら側の戦力はどんどん低下していった

流石にこれ以上はまずいか。そろそろ加勢に・・・



「まだだ!まだいける!」



タクトの叫びは辺り一帯に木霊する

そして単身でミノタウロスに突っ込んでいった

ミノタウロスは向かってくるタクトに再び薙ぎ払いの攻撃を放ってくる

それを身を転がすようにして躱し、大斧を振り切った右手首目掛けて思い切り剣を振り下ろした



「ぐっ・・・!おおおおお!」


「ブモォォォォォ!」



タクトの渾身の力を込めた一撃は手首の腱を斬ることに成功した

しかし今の一撃を放つのに残っていた体力全てを使い果たしてしまったようで、もう剣を構えるのすら難しいようだ。この辺りが潮時か・・・

怒り狂ったミノタウロスは大斧を左手に持ち替えて目の前にいるタクトを仕留めにかかっていた

そこへ私が割って入り、ミノタウロスの大斧の軌道を逸らして回避した



「お疲れ、あとは私に任せてゆっくり休んで」



それだけ伝えてまだ動ける生徒と共にタクトを下がらせ、ミノタウロスとの戦闘に備え柄に手をかける



「ブモォォォォォ!」



怒りに任せ無作為に大斧を振り回して迫ってくるミノタウロス

私はそれを最小限の動きで全て避けてミノタウロスの体を足場にしながら顔の辺りまで移動し、首元目掛けて居合を放った

着地し、剣を鞘に収める頃に遅れてミノタウロスの首が地面に落ちる。これで私達の勝利だ

生徒達からは歓喜の声があがり、皆安堵の表情を浮かべた

余韻に浸っている暇は無い。傷を負った生徒達の回復をしなくては

幸い皆命に別状はないが骨が折れたりした者もいるからこちらも骨が折れそうだ



「かっけぇ・・・」



周りが治療活動に当たっている中、立ち上がる事が出来ないタクトはエレナのその圧倒的な戦いぶりが目に焼き付いて離れず、1人そう呟いていた


読んでいただきありがとうございます!ダンジョン訓練編はこれにて終了です

「よかった」「続きが気になる」など思っていただけたら幸いです

少しでも気に入ってくれた方ブクマ、評価、感想等々頂けると大変励みになります!

次話投稿時間はTwitterの方で告知させて頂きます。よろしくお願いします!

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