52話 ダンジョン突入
新人冒険者の剣術講師を始めて数週間が経った
成長の速度にムラはあるものの、皆順調に腕を上げていっている
中にはどうしても剣の扱いが苦手で伸び悩んでいる者もいたので、そういう人には他の武器の適正を見つけてあげ、その人に合った戦い方を教えてあげた
槍術、弓術、武術等々・・・装備費用が無くて困っている者には私が魔法で武器を生成してあげた
お陰で脱落者を出さずに今のところやっていけている
「おはようございますお姉様」「お姉様本日もいいお天気ですね」
「お、おはよう・・・そうだね。暑いから熱中症には気をつけてしっかり水分とってね」
このお姉様という敬称付きの呼び名は私に対してのもので、誰がそう呼び始めたか分からないが女生徒の間で少しずつ広まってきている
なんでも風の噂では私の愛好会なるものも最近密かに発足されたらしく、会員数が日に日に増えていて呼び名が定着するのは時間の問題だろう
恥ずかしいので普通に名前呼びかせめて先生でお願いしたい・・・
そんなことを考えながらいつものように訓練場へ向かっていると、前方から見慣れた人物がこちらに向かって歩いてきた
「やぁ、おはようエレナ嬢」
「ゲッ・・・リヴィアさん、おはようございます」
「第一声がゲッというのは傷つくなぁ」
リヴィアさんはちょくちょく様子を見にここへやってきてはすれ違いざまを狙い懲りずに人のお尻を触ろうとしてくる
仕事はしっかりこなす人なのでこれだけ無くなってくれれば完璧なんだけどなぁ・・・
「まぁいいか。今日は伝える事があってやってきたんだ。来週あたり君が受け持っているクラスと他のクラスとの混合でダンジョンに入り経験を積ませたいと思っているんだよ」
ダンジョンとは魔力が多い場所に突発的に発生した地下迷宮だ
魔力が満ち溢れているダンジョンは魔力が源で生み出される魔物の環境に最適で、倒しても一定の時間が経過すると再び復活する特異な場所
下に行けば行くほど魔力の質は上がっていき、それに比例して魔物の強さも増していく
なので新人冒険者には戦闘経験を重ねる場所としてもってこいの場所なのだ
「ダンジョンですか・・・確かに皆着実に力はつけていますがまだちょっと早くないですかね?」
「無論あの子達だけを行かせるのは危険だから君にもダンジョンに入ってもらうよ。それに行くのはここから一番近い場所で比較的危険度が低い場所だから下層に行かなければまず間違いは起きないよ」
そう言ってダンジョンの場所が記されている地図を私に渡してきた
きっと念入りに調べ生徒達の今の実力と照らし合わせて決めた場所なんだろう
「じゃあ念の為私の仲間も護衛として呼んでもいいですか?」
「勿論呼んでもらって構わないよ。そうだね、あの子達が来るなら私も同行を・・・」
「あっ、それは結構ですので。それでは授業がありますのでこれで」
ダンジョンに行くとなったら泊まりがけとなる。何をされるか分かったもんじゃない
訓練場に行くと既に各々自主的に鍛錬に励んでいたので一度集合させて先程リヴィアさんに伝えられた事を生徒達にも伝えると、待ってましたと言わんばかりの盛り上がりを見せた
ここに来てから毎日座学と剣術の訓練できっと刺激が足りないと感じていたんだろう
先程リヴィアさんが言っていた私が教えている剣術クラスとは別のクラス、魔道クラスというのがあり、そこのクラスと今回混合でダンジョンへ潜ることとなる
流石に2クラス合わせた人数だと大所帯になってしまうので何組かに分けて行動することになるだろう
また、魔道クラスとは今まであまり接点がなかったので、事前にお互いの実力を把握しておいた方がいいということになり、当日を迎えるまでに何度か合同訓練も行うことにした
そんなこんなで準備を進めているうちにあっという間に時は過ぎ、ダンジョンへ向かう日がやってきた
護衛として来てくれたフィオナとフレイヤも生徒達に紹介した
予想はしていたがフィオナは男性人気が凄まじく、フレイヤは女性陣からマスコット的存在として人気を集めて可愛がられていた
「馬車に荷物は・・・大丈夫だね。じゃあ出発するよー」
馬車に積まれている食料や野営に使う道具諸々不足している物がないかしっかりと確認させ、ダンジョンへと馬車を走らせた
近くまで転移で移動することも可能だったがこの移動も訓練の一環。これからの事を考えて出来るだけ私達は手を出さないして見守るつもりだ
数時間程馬車で移動すると地図に載っているダンジョンへと到着した
リヴィアさんから貰った許可証を兵士の人に見せて開けてもらい中に入っていく
「いよいよだな。どんな魔物が出てくるか楽しみだぜ」
「ちょっとはしゃいでないでちゃんと集中してよ。どこから来るか分からないんだから隊列を乱さないの」
「少しくらいいだろう堅い奴だなぁ」
逸る気持ちを抑えされないタクトとそれを戒める女生徒
些か緊張感が欠けているようだがまぁ緊張して何も出来ないよりはマシか
「しっ!何かくる」
先頭を任せていた一番気配に敏感な生徒が何かを感じたようで後続を停止させ、戦闘態勢に入るよう指示を出した
前方から複数の足音がどんどんこちらへ近づいてくる
それを聞いて全員真剣な顔つきへと変わった
「来たぞっ!ゴブリンだ!」
現れたのはゴブリンの群れ。ダンジョンでは1番弱い魔物だ
数もこちらと同数程度で初戦にはちょうどいい相手だな
生徒達の初実戦。後ろでしっかりと見させてもらおう
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