48話 酒は飲んでも飲まれるな
「はぁ、疲れた・・・長い1日だったなぁ」
私達は地竜と卵を山の住処へと連れて行った後、しっかりと謝罪して事の経緯を知っている限りの情報を用いて説明した
抵抗の出来ない地竜も少し冷静さを取り戻したようで、こちらの話をしっかり聞いてもらうことができた
卵を盗んだガイン達のことはこちらでしっかり処罰するという約束を交わしてから地竜夫婦を回復させて元の姿に戻した
人間が近くに住んでいる山だと今回のような事がまた起こってしまうかもしれない
卵が孵った後でもいいから他の山に住処を変えることを勧めると地竜の方も納得してくれた
地竜の件が片付いたら次に吹き飛ばされたガインの容体を確認する為先程の場所へと戻った
ガインは取り巻きの男達による懸命な治療のお陰で意識を取り戻していた
けど重傷のせいかまだ上手く口が使えないようで頷くか首を振るかで会話をしていた。大人しいのなら都合がいい
今回の件を報告する為、私は転移門を王都へと繋げて王都のギルドに連中を連れて行って処分を下してもらうことにした
その前にこの平地だった場所を元に戻さなくてはいけない。地竜との戦闘で凸凹もいいところだ
町の人達からすれば平地だった場所が気づかないうちにこのような無残な姿に変わり果てていたら気味が悪いだろう。気づかれる前に急いで戻して何事もなかったかのように平地へと戻した
そして王都へとやって来た私達は取り巻きに案内させてギルド本部へ足を踏み入れた
王都のギルドに行くのは今回が初めてだったから正直ガインのような輩が他にもいるのではないかと心配していたが、その心配は杞憂に終わった
剣舞祭の功績のお陰で私の顔は知れ渡っていて、皆私の顔を見るなり暖かく迎え入れてくれたのでアウェイ感を全く感じなかった
「そんな事があったなんて・・・ご協力感謝します」
ギルド職員にガイン達を突き出し今回の件を説明した
私の話とガイン側の話に食い違いがないかの確認を行う為に別室へと移動させられた
嘘や誤魔化しが出来ないよう尋問の時に使われる"真実の天秤"を使用していた為、上手く喋れないガインの変わりに取り巻き達が自白した
その結果ガイン達の処分は階級降格。そして1ヶ月の間冒険者稼業の一切を禁止にされ、それまでの期間は王都の下水処理をするよう命じられた
町の人達を危険に晒したのだ。これ位の甘い処分で済んだだけ有り難く思うべきだろう
長い拘束時間からようやく解放され、王都から村に戻って来た頃には夜もすっかり更けてしまっていて、家に着くと既に両親は床についていた
寝ている2人を起こさないよう私達は静かに自室へと移動して晩酌を始めた
今日は本当に大変な日だった。こんな日は呑むに限る
帰り際王都のお店で買っておいたお酒を開け、グラスに注いで一気に飲み干す
「エレナさん飲みすぎじゃないですか?酔っ払ってまた変な事になっても知りませんよぉ」
フィオナの制止を聞かずに1杯また1杯とペース良く飲んでいくとものの数杯でとても気分が良くなっていった
3人が6人に増えて9人、12人・・・たくさんの分身が目の前に現れる
「らいじょうぶらいじょうぶ。ぜんぜんへいきらよ~」
「もう酔ってるじゃないですか・・・ってあんな強いお酒の瓶空にしちゃったんですか!こんなのグビグビ飲んでたらそりゃそうなりますってぇ」
「大丈夫ですかご主人様?」
フィオナとフレイヤの言ってる事の半分も聞き取れなくなってしまい、そこで私の意識は途切れてしまった
「ん・・・朝か。ったたたた」
窓から差してくる陽の光で目が覚め、同時に二日酔いが襲ってきた
結局あの後どうなったのか・・・凄く気分が良かったのは覚えているがそれ以降が全く思い出せない
外を眺めると今日も快晴。朝の涼しい風に当たりたくなり窓を開けようとベッドから出て立ち上がると、窓に自分のあられもない姿が映った
自分が裸だったことにようやく気がつき、慌てて窓から離れてベッドに戻る
「ん、んぅ。あっ・・・エ、エレナさん・・・おはようございます」
隣で眠っていたフィオナが目を覚まし私と目が合うと頬を赤らめ、目を逸らしながら挨拶をしてきた
その姿を見て嫌な汗がダラダラと出てくる。私と同様、フィオナも一糸まとわぬ姿で眠りについていたようだ
フィオナだけでなかった。よく見るとフレイヤにシエルまでもが素っ裸でベッドに横になっている
どうして皆裸なんだ・・・昨夜一体何があったというのか。意を決して皆に聞いてみることにした
「昨夜の記憶が全くないんだけど・・・どうして皆裸なの?」
「どうしてって・・・エレナさんが無理矢理私達の服を脱がしたんじゃないですか」
「あんな激しいご主人様は初めてでした・・・」
「まるで野獣のようでした」
一体私は3人に何をしたんだ・・・一線を超えるようなことはしていないと信じたい
以前酔ってフィオナに絡んでしまった件以降酔わないよう呑む前に魔法をかけていたのに・・・今日くらいはという考えが甘かったか
まさかここまで自分が酒癖悪いとは・・・もう魔法なしでお酒を呑むのはよそう
「皆朝よー。昨日は随分と遅かったみたいね。朝食できてるから早くおりてきな・・・さい」
待った!と言う前にドアを開けられ、あられもない姿の女性4人が1つのベッドで寝ていた所を母に見られてしまった
どう弁明すべきか頭をフル回転させていると、母は私が想像していたような言動とは裏腹に何故か納得したような表情をして呟いた
「やっぱりねぇ・・・」
「えっ?やっぱり?」
「前々から変だとは思っていたのよ。エレナから全く男の話も出てこないから・・・やっぱり女の子が好きだったのね。大丈夫よ、私もお父さんもそういうのは理解してるつもりだから」
・・・うん、もうそういうことでいいか。女性の方が好きというのは間違いないし
昨日からの疲労と二日酔い明けのせいにして私は考えることを放棄した
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