47話 手乗り地竜
雌の地竜の相手を任せたフレイヤが激しくぶつかり合う。竜種同士の戦いは凄い迫力だな
パワーはお互い一歩も譲らず互角。雌地竜の体をガッチリと掴み動きを止めた
「どきなさい!同じ竜種でありながら人間側につくというの!」
「私は人間にではなくご主人様に仕えているのだ!このおばさん!」
「おばさんですって!?このガキンチョ!絶対潰す!」
何やら別のことで揉め始めたようだけど・・・あの様子ならあちらは任せておいて心配なさそうだ
「よそ見とは随分と余裕だな!」
私はこちらに集中しなくちゃな
雄の地竜が魔法を発動すると無数に鋭い岩の棘が地面から現れて襲ってきた
あんなの一発でもまともにくらったら致命傷は間違いない。飛び出してくる岩の棘をギリギリのところで避けていきながら地竜に接近していく
地竜の突進力は中々のものだが細かい動きはこちらの方が上回っている
踏み潰そうとしてくる前脚を滑り込みながら躱して胴へと潜り込んで一撃を入れ、そこへ更に後方にいるフィオナの魔法攻撃を地竜にくらわせる
しかしどちらの攻撃も堅牢な鱗に軽く傷がつく程度で、地竜自体にはダメージは入らなかった
聖剣を以ってしても地竜の鱗を貫通させるというのは一筋縄ではいかなそうだ
「先程の男よりも格段に手強いようだな。しかしその程度では我に傷をつけるのは不可能だぞ。エルフの娘もそれなりの魔法は使えるようだがひよっこエルフではこの程度か」
「ひよっことはなんですかひよっことは!これでも300歳は超えてるんですよ!じゃあこれならどうですか!」
攻撃が通らないと判断するとフィオナは戦い方を変えて足止めの方へと移行し、氷の魔法で地竜の四足を凍らせて一時的にだが動きを封じ込めた
動きを止めた地竜に再び胴体部分に潜り込んで攻撃しようとすると、自身の体に当たることもいとわずに岩の棘でこちらに反撃を仕掛けてきた
自分の防御力なら当たったとしてもダメージを負うことはないということか
地竜の反撃に対応しつつ、先程攻撃した箇所に何度も攻撃を入れていく
「何度やっても無駄だ。いい加減・・・むぅ!?」
先程まで何事もなく受けていた地竜は私の攻撃に初めて顔を歪めた
数回に渡る攻撃でようやく地竜の鱗を破壊することができた。一度の攻撃で鱗の防御を破る事は出来なくとも同じ箇所を繰り返し攻撃して打ち砕くことなら可能だ
「よしっ、このまま・・・うわっ!」
この勢いで次の攻撃に入ろうと前へ踏み込むと突如地面に窪みが発生し、いきなり足場がなくなった私は窪みの底にそのまま落とされてしまった
地竜の魔法で地形を変えられ、窪みに落ちた私を仕留める為に間髪入れず大岩を落としてくる
落ちてくる大岩は窪みを埋める程の大きさで、バランスを崩して出遅れたせいで避けるのは間に合いそうにない
久々だがアレを使うしかないか
「聖剣技 :聖十字架!」
聖剣を持った者のみ使用する事が出来る剣技の1つ聖十字架。大岩に十字架の風穴を開けて難を逃れる
しかし凌げたのはいいが反動が大きすぎる。体が軋むような痛さがやってくる
幸い数秒程で収まったがやはり勇者時代の体じゃないと多用するのは難しいか。今の私の体ではあと1回使うのが限界といったところか
「中々しぶといな。ではこれならどうだ!」
そう言うと地竜は竜種の十八番、ブレスを放ってきた
突風と共に礫を飛ばしてくる広範囲ブレス。防御壁を私とフィオナで2層張り、町にも被害が出ないよう発動してなんとか防ぎ切る
礫1つ1つが鋭利な刃物のようで、防げてなければ体中穴だらけになっているところだった
「これも防ぐか。だがこれは流石に防ぎきれまい。隕石墜落!」
地竜が魔法を唱えたと思ったら突然頭上が暗くなり、上を見るとこちらに目掛けて隕石が落ちてきていた
そんな魔法まで使えるのか。てかやりすぎ!ムキになって卵の事忘れてるんじゃないか?
卵を任せているシエルはここから離れているけど下手すれば卵にも被害が及ぶぞ
今使える手段であれを防ぐ方法は・・・あ、あれだ!あれならこちらに被害を出さず、かつ相手に攻撃することも出来る
「魔法反転!」
「なにっ!?」
相手の魔法攻撃を跳ね返すことができる反転魔法
こちらに落ちるはずだった隕石が地竜に直撃する。流石の地竜もあの隕石をくらっては無傷は済まないだろう
「ぐ、ぐぅ・・・」
土煙の中から姿を現した地竜の体は傷だらけになっていた
自前の鱗の硬さと地形を変えて作り出した壁のお陰で致命傷とまではいっていないようだが、かなりの深手は負わせることができたようだ
これだけ傷を負わすことができれば十分だろう。回復される前に早く済ませなければ
弱った地竜に対して私は体を小さくする魔法を使用して地竜を手乗りサイズへと変えた
竜種レベルだと相手の魔法を抵抗してくるのである程度弱らせてからでないと効果を発揮させることができない
すっかり可愛らしくなった地竜が手の平で暴れ出した
「お、おい!なんだこれは!早く戻せ!」
「あとで必ず戻しますから。少しの間だけ我慢して下さい」
こちらの方は片付いた。フレイヤの方はどうだろうか
フレイヤと雌地竜が先程戦っていた場所を見るとあちらもフレイヤの勝利で決着がついていた
「ご主人様ー。こちらもなんとか終わりましたぁ」
「おつかれ・・・って凄いボロボロだね」
「大した傷じゃないですけど凄い暴れて大変でした~」
集中していて気づかなかったがあちらもかなり派手にやっていたようだな
雌地竜にも同じく小さくなる魔法をかける。これで一先ず動けるようになっても反撃されることはない
反撃されたとしてもこの大きさなら痛くも痒くもないけど
私達は小さくした2頭をカゴに入れ、卵と一緒に地竜の住処へと移動を始めた
読んでいただきありがとうございます
「よかった」「続きが気になる」など思っていただけたら幸いです
少しでも気に入ってくれた方ブクマ、評価、感想等々頂けると大変励みになります!
次回更新はTwitterの方で告知させて頂きます。よろしくお願いします!




