42話 風邪引いちゃいました
「ゴホッ!ゴホッ・・・!ゔぅ・・・」
「ご主人様ぁ・・・大丈夫ですか?」
「うーん、これは多分夏風邪ですねぇ」
「体温を測定したところ38.5度あります。高熱ですね」
私は今日、生まれて始めて風邪を引いた。原因はこの前自分で作り出した冷風機にある
あれからずっと愛用していて夜も使用していたのだが、油断してお腹を出したまま寝てしまったようで朝起きたら体が怠く、頭痛と喉の痛みが襲ってきた
魔法で治してみようと試みたが、この高熱では上手く扱う事ができないようなので大人しく寝てることにした
今までただの一度も風邪なんて引いたこともなくて自分には無縁だと思っていたのに・・・これからはもう少し自重して使った方がいいな
「寝てれば治るだろうから・・・私の事は気にせず皆は普段通りにしてていいから」
「ご主人様の命の危機に普段通りになんてしてられませんよ!看病しますから安心してください!」
命の危機って大袈裟だな・・・引いたのは初めてだが風邪なんて1日ゆっくり寝てれば勝手に良くなるだろうからそこまで心配しなくても大丈夫だろうに
といってもフレイヤは聞き入れそうにない様子だし・・・まぁこういう時は素直に甘えるとするか
「それじゃあ薬を買ってきてくれる?」
「分かりました!」
そう言うや否やフレイヤは物凄い勢いで薬を買いに出ていった
伝える前に行っちゃったけどちゃんと薬屋の場所は分かってるんだろうか・・・
「じゃあ私は氷枕でも作ってきますね」
「ごめんね。ありがとう」
「私も今日は特にやること決めてなかったので気にしないで下さい」
フィオナに氷枕を作ってもらっていると数分前に出ていったばかりのフレイヤが汗まみれで薬を持って帰ってきた
どうやら薬屋の場所は分かっていたみたいだが・・・どんだけ急いで買ってきたんだ
買ってきてもらった薬を飲み一寝入りしようとベッドに横になるも、時間が経つにつれて朝の状態より酷くなっていき、汗も出てきて中々寝付けずにいた
風邪つら・・・まさかここまで辛いものだったなんて風邪を完全に舐めていた
それになんだろうかこの孤独感は。普段は1人でも全く気にならないのに・・・体が弱ると気持ちまで弱ってしまうのか
初めての孤独感を味わいつつ1人寂しく寝ていると、フレイヤが水の入った桶と布を持って部屋にやってきた
「ご主人様、体を拭きに来たのですが・・・体起こせますか?」
「あ、ありがとう・・・」
フレイヤの顔を見てホッとした自分がいたことに少し情けなく感じた
怠い体を何とか起こし、汗で湿った服を脱いで濡れた布で背中を拭いてもらう
濡れた布が汗の汚れを綺麗にし、火照った体を冷ましてくれたことでほんの僅かだが気分が楽になった
拭いている最中何やらフレイヤの息が荒く身の危険を少し感じたが、踏みとどまったようなので何も言うまい
体が吹き終わり着替えも済むとフレイヤは部屋から出ていき、再び1人の時間がやってくる
拭いてもらったお陰で汗の気持ち悪さは無くなったが具合は一向に良くならず眠ることもままならない
薬も飲んだのに効いてる感じもしないし・・・本当にこのままポックリと逝ってしまうのでは・・・
私はくだらない事で悶々としてはそんな事はないと否定し、それでもまた同じ事を考えるということを延々としていた
それから暫く経ち時刻がお昼を少し過ぎようとした頃、下の方からいい香りが漂ってきた
何やら下で楽しくやっているような声も聞こえてくる
いいなぁ、私もその中に入りたい・・・
少し拗ね気味にそんな事を考えていると扉を叩く音が聞こえてた
「失礼しますエレナ様。お粥を作ったのですが食欲はありますか?」
「私達3人で作ったんですよ!」
「わざわざお粥作るのに3人もいらないと思ったんですがフレイヤさんが聞かなくて」
先程の賑わいはそういう事だったのか
皆で私の為にご飯を作ってくれるなんて・・・今の私がそんな事されたら泣いてしまうじゃないか
「有難く食べさせてもらうよ」
「ではエレナ様、あーんをして下さい」
「あ、あーん・・・」
どこでそんなのを覚えてきたのかシエルは掬ったお粥を冷まして私の口元に近づけてきた
他の2人に見られながらで多少恥ずかしかったが、力が上手く入らない今の状態では零しかねないので甘んじて受け入れる
「うん?なんか少しだけど喉の痛みが和らいでるような気がする・・・これってお茶?」
「フレイヤ様が薬を買いに行かれた際に風邪の時に飲むと効くという茶葉も一緒に買ってこられたので、それと薬草を使って薬膳茶粥にしました」
「そうなんだ。ありがとねフレイヤ」
「うぇへへ♪ささご主人様、私のもあーんで食べて下さい!」
正直味はよく分からなかったが、3人の気持ちが嬉しかったので一口また一口と口に運んでいく
始めは食欲がなかったが喉の痛みが緩和されたお陰で完食する事ができた
すると今度はフィオナがスライムに似たような形と見た目をした何かも皿に乗せて持ってきた
動くとぷるぷるとしていてスライムそのものに見えてくる
「えっ、フィオナ何それ食べ物なの・・・?」
「これは果汁を特殊な粉で固めた"ぜりー"というものです。食べやすくて風邪の時とかにいいらしいですよ」
恐る恐る食べてみるとサッパリとした味わいでツルンとしているので喉にスルッと入っていってとても食べやすかった
見た目はアレだが風邪の時に食べるといいというのは本当のようだ
一通り食べ終わってベッドに横になるとお腹が膨れたからか薬が効き始めたからか、さっきまで眠れずにいたのに急にウトウトとしてきて目を瞑るとすぐ眠りについた
ー翌朝ー
「完全復活」
「良かったですご主人様〜!」
「体温も正常。ご無事で何よりです」
買ってきてもらった薬が効きしっかりと食事と睡眠をとったお陰で熱は無事下がり、頭痛や喉の痛みもなくなって私はすっかり元通りになっていた
「もう今度からはお腹出して寝ちゃ駄目ですよ〜」
「はい、気をつけます」
今思い出すと見られていないとはいえあそこまで弱気になっていた自分が恥ずかしい
私はもう二度と風邪になるまいと心に誓い普段の生活へと戻っていった
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