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40話 魔物との対話

コルトの町を出て私達はシュベルスト山脈の(ふもと)までやってきた

町から少し進んだ場所から既に雪は降り始めてはいたが、この麓は結構な強さで吹雪いている

気温は恐らく氷点下を優に超えていてるだろう。きっと町で感じた寒さが可愛く思える程だ



「ご主人様!ご主人様がかけてくれた魔法のお陰で全然寒くありませんよ!」


「ちゃんと効いてるみたいでよかった」



こうなることを予想して(あらかじ)め自身とフレイヤに対して耐寒の魔法を使用しておいた

お陰で吹雪の中でも凍える心配せずに移動することができる


現在私達は今ニクスコングの捜索をしている

ニクスコングの毛皮は雪と同じように白いので群れで行動しているとはいえ分かりづらく、この吹雪のせいで視界も悪い為余計見つけにくい

なので生体反応を感知する魔法を常時発動し、複数の反応がある場所へ向かうという作戦で探すことにした

そして探し始めて1時間が経過しようとしたところで数十規模の群れの反応を感知した



「見つけた。フレイヤ、北に少し行った所からかなりの数の反応があったからそこに行ってみて」


「分かりました!」



反応があった場所へと移動すると予想していた通りニクスコングの群れが歩いているのを確認した

数はおよそ30〜40匹。先頭を歩いている一際大きくて毛の色が灰色の奴はこの群れのボスといったところだろう

こちらが相手の存在を確認した後、少し遅れて相手もこちらに気がついたようだ

私達は射程圏内の場所まで群れへと近づいた



「ギャオ!ギャオ!」



威嚇のつもりだろうか、こちらに向かって胸を勢いよく叩いている

なおも近づいてくる私達に対してニクスコング達は岩魔法で槍のように鋭い石を生成して一斉に投石を行ってきた

私はすぐさまフレイヤを覆う程の障壁を展開させてその攻撃を全て防いだ

ニクスコングはあの膂力を使って主に肉弾戦を仕掛けてくる魔物。今の投石の攻撃自体珍しく少し意表を突かれたが、その攻撃を防ぐことができれば空を飛んでいるこちらをこれ以上攻撃する手段はないはず



「フレイヤ、ブレスお願い」


「はーい!」



フレイヤのブレスを群れに向かって放つも死に物狂いで逃げるニクスコング達に避けられる

今度は私も加わって攻撃しようとしたその時、こちらを制止しようとする声が聞こえてきた



「ちょちょちょ!ちょっと待って下さい!」



どこからか野太い声が聞こえてくる

フレイヤを見るが当然私ではないと首を横に振る

ここには私達以外誰もいないのに一体どこからだ?



「お願いします!どうか話を聞いて下さい!」



再び声が聞こえてくる。今度はハッキリとだ

声がした先にはニクスコングの群れ。その群れの中でこちらに両手を大きく振っているボスの姿があった

予測するにどうやら声の主はニクスコングの親玉のようだ



「あいつらって喋ること出来ましたっけ?」


「私も初めて見たかな」



上級の魔物ならいざ知らず、言葉を話すなんてニクスコングなんて珍しいな

ボスに習って他の者も手を振って降伏の意思をこちらに示してくる

対話が出来るならと一先ず私達は群れの元まで降りていった

この間も警戒は解かない。言葉を喋ることが出来る知能があるなら罠の可能性もあるからな

フレイヤには軽く威圧をさせておき、ボスと会話を始める



「こっちに話しかけてきたのはそこの君?だよね」


「は、はい。話を聞いてくれてありがとうございます」



思っていたより随分と低姿勢だ

ボスと会話を重ねていくとどうやら先程の胸を叩く行為は威嚇ではなく降伏の意味を示していたようだ

竜がこちらに近づいてきた時点で勝ち目はないと察して降伏をしたが、それでも近づいてくる姿を見て降伏が受け入れられなかったと判断してこちらに攻撃をしてきたらしい

分からなかったとはいえ申し訳ないことをした

話をしている感じ敵意もないようだし何か罠に嵌めようとしている様子も見られないしとりあえず警戒は解いても問題なさそうだ



「それでどうしてここよりずっと先の雪山にいるはずの君達がここにいるの?」


「俺らも最初はそこを住処に生活してたんですけど、ある日俺らの縄張りに化け物がやってきて追い出されてしまったんです」



その化け物のせいで住処を失ったこの群れは他の場所に縄張りを築こうとしたが、化け物のせいで既に数が減らされていたせいで他のニクスコングとの縄張り争いに負け、仕方なくここまでやってきたという

その化け物は四つ足の巨体。長い尻尾に白黒の縞模様という特徴をしていると話していた

特徴的に該当する魔物は知っている。だが私の知っているその魔物は神話級の魔物だ

きっと何か別の魔物と見間違えたんだろう



「じゃあ君達は下にある町に下りてきたりはしないんだね?」


「勿論です!俺らはここでひっそりと暮らせることが出来ればそれでいいんです」



念の為真偽を確かめる魔法をかけてみるが、嘘は言っていないようだ



「そう。まぁ町を襲ったりしなければこっちもどうこうしたりはしないから」


「ホッ、助かりました」



さて、平和的に話ができたお陰で大した時間も要さずに済んだし本来の目的に移るとするか

正直こちらの方が大変だ

これだけ雪が降っていると洞窟を見つけるのも苦労するはず・・・



「そうだ。この辺りで洞窟って見たことある?」


「洞窟を探しているんですか?それでしたら今俺らが使っている住処が洞窟の中なんで案内しましょうか?」


「本当?助かるよ」



依頼のついでに受けた話だったが、人の言葉を話す魔物との出会いのお陰でスムーズに事が進みそうだ

私達は早速群れのボスに案内してもらい住処だという洞窟を目指した




読んでいただきありがとうございます

「よかった」「続きが気になる」など思っていただけたら幸いです

少しでも気に入ってくれた方ブクマ、評価、感想等頂けると大変励みになります!

次回更新はTwitterの方で告知させて頂きます。よろしくお願いします!

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