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4話 冒険者になりました

「着いたよお嬢さん。ここがレジティアの街だ」


「乗せてくれてありがとうございました」


俺が村を出て暫く進んだ所で森の中から悲鳴が聞こえたので声がした方へと向かうと行商人が狼の群れに襲われていた

そこを助けてあげたらお礼にと街まで乗せてくれるとのことで、目的地も同じだったからお言葉に甘えて乗せてもらうことにした

荷台には7歳位になる娘も乗っていて、俺がたまたま近くを通っていなかったら最悪な事態となっていたかもしれないので冒険者をしっかり雇うよう釘をさしておいた

道中は行商人の娘、ニーナが俺に興味津々な様子で色々と話かけてきてくれたので退屈せずに済んだ

そんな2日間を過ごし、俺は無事街に到着することが出来た


「バイバイお姉ちゃん!」


ニーナがこちらに向かって手を振っていたのでそれに笑顔で応える

快活な可愛いらしい少女だ。またどこかで会えたら色々話を聞かせたいものだ


レジティアの街には人が多く行き交っていた

町にもそこそこの人はいたがやはり人口の密度が違う

その中を進んでいきギルドに到着して中に入ると、周りの視線が俺に集中した

周りを見てみるとむさ苦しい男だらけ。冒険者は男の割合が圧倒的に多いので女性が入ってくるだけで注目されるのだろう

男達の視線を浴びながら試験の申し込みを済ませる為に受付へと進む


「すみません、今度行われる試験を受けに来たんですが」


「はい、それでしたらこちらの用紙に記入をお願いします」


必要記入事項を書き込んでいき受付のお姉さんへと渡し無事申し込みは済んだ

試験は明日の朝から行われるらしい。この街の散策といきたいところだがそれはまた今度にしよう

俺は手頃な宿を探してその日は部屋で(くつろ)いで明日に備えた


翌日、試験会場に行くとそこには3、40人程の受験者が集まってきていた

ここでもやはり圧倒的に男の割合が多い。女性は見た感じ俺を含めて2、3人といったところだろうか


「ではこれより試験を始めます。皆さんそれぞれの部門に別れて下さい」


試験内容は2つで剣術と魔法の部門に別れて試験を行う

俺が受ける剣術部門は基礎体力測定に試験官との模擬戦

魔法部門は始めに魔力を測定し、その後更に攻撃魔法部門、回復や補助といった支援魔法部門に別れて自分の魔法を披露していく

俺以外の女性は皆魔法部門の方へと行ってしまったようだ

剣術等の接近戦は身体能力が重要視されるから圧倒的に男の割合が多くなるが、魔法士の方は魔力量と魔法のセンスで決まるので男女差は発生しない


基礎体力測定でそこそこの成績を残し、模擬戦の順番を待つ

俺の後ろに控えている男達が何やらヒソヒソと話をしているのが気になるが、今は試験に集中しよう


「次15番。前へ」


順番がやってきたので前へ出る

開始地点へと行くと試験官が俺を見て心配してきた


「次はお前か。随分華奢だが・・・大丈夫か?」


「問題ありません。お願いします」


この試験官の戦い方を今まで見ていたが、動きは早いけど基本力任せでゴリ押ししてくる一番扱いやすいタイプだ

相手より力や体格で劣っていたとしても戦う術はいくらでもある

開始の笛が鳴ると同時に試験官が先程までと変わらぬ勢いで仕掛けてくる

今までの受験者ならそれを防ぐか避けるかで精一杯だったようだが、この程度なら問題ない

相手の隙を誘う為、敢えて体勢が崩れたように見せかける

こちらの狙い通り試験官はその隙を狙って大振りの一撃を繰り出してきた

ここまで来れば既にこちらのペース。大振りしてきた攻撃を剣で軌道を変えていなし、その流れのまま相手の喉元に剣を突き立てる

俺と試験官の勝負は一瞬で決着がついた


「ま、参った。降参だ」


「そ、それまで!」


うん、父さんが作ってくれた剣にもすっかり慣れたな

軽いがしっかりとした作りでこの体でも扱いやすい

きっと俺に合うよう考えて作ってくれたのだろう。有難いことだ

俺が一礼して去ろうとすると周りがざわめき出した


「嘘だろ・・・ギルドマスターがこんなあっさり敗れるなんて」


「あの嬢ちゃん何者だ?」


ギルドマスター?この男が?

ギルドマスターならば魔王の幹部クラスと対等に渡り合える実力を兼ね備えているのが普通だったが・・・いや、以前と今とでは状況が異なるし基準が変わっていてもおかしくない

ギルドマスターが試験官を務めるならもっと周りが何か言ってもいいだろうに

もしかしてさっき後ろで男達が話していのはその事だったのか?

するとギルドマスターが俺に声をかけてきた


「まさかこんな嬢ちゃんに負けるなんてな。これだけ強ければもっと有名になっていてもおかしくない筈なんだが」


「昨日この街に来たばかりでそれまではずっと村で生活してましたから」


「そうだったのか。なんて村だ?」


「カステルという村です」


俺が村の名前を告げると周囲がまたどよめき始めた

今度はなんだ・・・俺が住んでいた村は平凡な村でそんな驚くような事はないと思うんだが

ギルドマスターが皆を代表して俺に話しかけてくる


「カステルの村の方から頻繁に人攫いの悪党達がここに送られて来ていたんだが、そいつ等皆口を揃えて言っていたんだ。怪物みたいな白髪(はくはつ)の嬢ちゃんにやられたってな。話半分に聞いていたがさっきので確信した。嬢ちゃんがその人物だってな」


そういうことか・・・しっかりと口止めしておけばよかったな

ここまで話が広まっているとは思っていなかった

にしても怪物って。仮にも女に対して失礼だな


「嬢ちゃん。名前は?」


「エレナって言います」


「エレナ、俺はギルドマスターのガリアス。お前のような優秀な人材は大歓迎だ。よろしくな」


ガリアスはそう言って俺に手を差し出してきたのでこちらも手を出し握り合う

無事冒険者となれた俺は、ギルドが運営している新人冒険者御用達の女性専用宿舎へと身を移した

ここなら他の宿舎と比べて月の家賃を大幅に削減することが出来る

冒険者稼業が軌道に乗るまで食事と住処をサポートしてくれる有り難い制度だ

早速明日から依頼をこなして、独り立ち出来るよう適度に頑張っていこう



読んでいただきありがとうございます

次回更新は月曜日19時です。よろしくお願いします!

「よかった」「続きが気になる」など思っていただけたら幸いです

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