38話 北の大地へ
「あづい・・・」
「ここ最近で一気に気温が上がりましたからねぇ・・・夏本番って感じですね」
「教会から頂いた実を使って冷たい飲み物を作りましたのでよければどうぞ」
「ありがとうシエル・・・はぁ生き返る〜」
シエルからもらった冷えたジュースを一気に飲み干す
レジティアの街に戻ってきてからというもの、日に日に気温が上がってきていてた
カステルの村は樹々が生い茂っている場所だった為、夏はそこまで苦ではなかった分この街で初めて迎える夏はなかなか堪える
これだけ暑いと仕事をする気も起きなくなる・・・が、1人例外がいた
「ご主人様~!街の外で猪を捕まえて来ました~!」
「こんな暑い中フレイヤさんは元気ですねぇ」
「暑さなら慣れているからな!」
暑さに参っている私達とは対照的に元気いっぱいなフレイヤ
赤竜族が住んでいる場所は火山地帯の近くなのでこの程度の暑さなんてことはないんだろう
逆に冬は動きが鈍くなって苦手なようだが
正直このまま外に出ずにまったりしていたいところだがフレイヤやシエルばかり働かせているのも気が引ける
働かざる者食うべからず。ギルドにでも行って何か依頼でも探してこよう
外に出ると強い日差しと熱気が襲ってきたがそれに耐えながらギルドへと足を運ぶ
ギルドの中に入るとムワッとした外とはまた違う熱気が襲ってきた
依頼に群がる冒険者たち。この時期は森から魔物や害獣が森からやってきて村の畑の成長した作物等を漁りにやってくるという被害も多発する
森にも食べるものはあるが、人間が作ったものの方がうまいと思っているようで毎年のようにやってくるのだ
なので自然とギルドの需要も増え、冒険者は稼ぎ時というわけなのだ
それにしても暑い中よく鎧のような装備をつけていられるものだ。見ているこっちが参ってしまう
私だったら即ダウンするだろうな
そんな人だかりを避け、いつものように受付のお姉さんの元へと行き声をかけた
「こんにちは〜」
「エレナさん、こんにちは。今日も暑いですね〜」
「ほんと参っちゃいますね。それで今日も依頼を受けに来たんですが何かいい依頼はありますかね?」
「そうですねぇ。エレナさん達は活動可能範囲が広がりましたからねぇ」
先日の昇格試験で階級が上がったことによって私達3人は冒険者として活動できる範囲が以前より大幅に広がった
ちなみに今の私達の階級は鉄だ
更にその上に銅、銀、金、白金という階級がある
この街にいる一番階級が高い冒険者でも銀の階級で、王都にでさえ金までしかいないらしく白金級の冒険者は現在この国にはいないようだ
白金級ともなれば英雄級。それこそ国全体にその名が轟くような偉業でも成し遂げないとその階級に登り詰めることはできないだろう
まぁそんな階級を目指している者なんて極一部だろうし、そういう名を売るような機会なんてそうそうないだろう
私には縁がない階級だ。上げても銀あたりまでで十分だろう
そんなことを考えているうちに受付のお姉さんが何か思い出したように手を叩いて1枚の依頼書を取り出した
「そうだ!今の時期にピッタリな依頼がありました!エレナさん達なら問題ないと思うんですがどうでしょうか」
「なになに・・・北の大地での採掘依頼ですか」
受付のお姉さんが渡してきた依頼は北の大地にあるシュベルスト山脈という場所でしか取れない鉱石、”フレイムメタル”の採掘依頼
そして北の大地という場所は年中雪が降っている降雪地帯。こことは正反対の気候にある
フレイムメタルは青くてとても冷たい鉱石。そのあまりの冷たさに地肌に触れると火傷のような現象が起こることからこの名前がつけられた
確かにこの場所なら暑さとは無縁だろうが・・・避暑地どころか季節が変わっちゃってるんだよなぁ
「どうされます?他の依頼にしますか?」
「そうですねぇ・・・」
この鉱石は普段冷蔵品を保存する為に使っている魔力結晶よりも効果が強く、今の時期だと飲み物や氷菓子などを出しているお店からの需要も高い
ただ場所が場所なだけに採掘に行くものが中々現れず、取りに行ったとしてもフレイムメタルは寒冷地から出た場合、一定期間経つと冷却効果が失われてしまうのでこちらにやって来る頃には品質が悪くなってしまっている場合がほとんどだ
私の場合品質の心配は問題ない。けど遠いんだよなぁ・・・どうするか
受けるか受けまいか思い悩んでいると、ふと頭にある考えが降りてきた
「すみません、これって自分用に何個か取っても問題ないですか?」
「え?そうですね。取りすぎなければ問題はないと思います」
「分かりました。ではこの依頼は受けさせてもらいますね」
北の大地への採掘依頼を受けて私は一度家に戻り冬用の衣類等を取り出して身支度を始めた
今回は私とフレイヤで北の大地へと向かう
依頼内容は採掘だが当然魔物も現れるので当然戦闘に参加できないシエルを同行させるわけにはいかない
フィオナは孤児院で子供達に料理を教えるということで2人には留守番を任せることにした
「じゃあ行ってくるから。留守番よろしくね」
「はい。行ってらっしゃいませ」
「気をつけて下さいねぇ~」
2人に見送られ、私達は北の大地にあるシュベルスト山脈へと向かった
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