34話 買取と試食会
「よし、じゃあギルドに行ってくるね」
「はぁ~い。私達は今日は教会の方に行ってきますね」
私は先日川へ遊びに行った時に入手することができたメタル・フィッシュの素材を売りにギルドへ行くことにした
フィオナとフレイヤの2人は教会に行き様子を見に行ってもらっている
あれから教会で作られているパナモの実は順調に売れているらしく、孤児院の子供達が一生懸命樹の世話をしている甲斐もあり少しずつ生産量を増やしているようだ
ノアもちょこちょこ顔を出しては子供達を見守ってくれているらしい
そして今日はそのパナモの実で作ろうと話していたスイーツ等の試作品作りも兼ねている
あとで試食会を開くようだしどんなものが作られるのか今から楽しみだ
ギルドへ到着すると私は他の人に呼び止められる前に受付のお姉さんの元へと早足で向かった
「あっエレナさん、先日の剣舞祭優勝おめでとうございます。会場で見に行った人が凄い盛り上がりだったって聞きましたよ。私も直に見たかったなぁ」
「ありがとうございます。それで今日は素材の買い取りをお願いしたいんですが」
「あ、はい。買い取りですね。本日は何の素材でしょうか?」
私は空間保管からメタル・フィッシュの素材を取り出して見せると周囲から驚きの声が上がり、次々と見物客がやってきた
「これ・・・メタル・フィッシュの素材ですよね?しかもこんな綺麗な状態で手に入れるのは相当難しいはず・・・どうやって倒されたんですか?」
「倒したのは私ではなくフレイヤですけどね。こう、地面に叩きつけて倒しました」
「叩きつけたって・・・それだけで倒すことが出来たんですか」
受付のお姉さんが言うには本来メタル・フィッシュは十数人規模の中堅魔法使いと前衛の剣士達で編成した部隊で倒すというのが定石らしい
魔法で徐々に弱らせて動きが鈍ったところに前衛で止めをさすというお決まりの戦法があるようだ
長期戦を要するので倒す頃には鱗やヒレは脆くなっていて素材として扱えない代物になっているというのが一般的で、一匹から数枚使える鱗が取れれば儲けもの
今回のように何十枚と取れることなんてないと熱弁された
そういう訳で買取額も私が想定していた額の数倍で取引してもらうことができた
食料確保のついでに取ったものなのでこんなに貰うのはなんだか申し訳ないな
ついでに何か良さげな依頼がないかと掲示板の方に目を向けていると私の元にギルドマスターがやってきた
「ゲッ・・・ギルドマスター」
「ゲッとはなんだ失礼だな。エレナ、お前に話がある。部屋についてきてくれ」
今度は何を言われるんだろうか・・・
重い足取りでギルドマスターについていき部屋へと入ると単刀直入に話を切り出してきた
「実はギルド本部から連絡が来てな。お前が今の階級にいるのはどういうことなのかという手紙が送られてきたんだ」
王都にあるギルド本部からわざわざ・・・先日の剣舞祭で私の名前を知った本部の人が私のことを調べたのかな。ギルド側からすれば当然の疑問か
でも今のままで困ってることは特にないからなぁ
「でだ。この機会に昇格試験を受けてはみないか?」
「昇格試験ですかぁ。私は別に高い階級になるのを望んでるわけじゃないんでいいですかね」
「そうか・・・それなら仕方ないな」
そう言うギルドマスターはどこか浮かない顔をしていた。何かあるのだろうか?
「どうかしたんですか?」
「あぁいやなんでもないさ。本部にどう伝えるか考えていただけだ」
本部の人間を納得させることが出来るか考えてくれていたのか
その気になればギルドマスター権限で無理矢理従わせることもできるだろうに
これまでも何度か昇格の話を断って来たけどなんだかんだで私の意見を尊重してくれているからな
今回位はギルドマスターを助けると思って受けるとするか
「分かりました・・・昇格試験受けますよ」
「おぉ!本当か!」
「ただお願いがあります。フィオナとフレイヤの2人もその昇格試験を受けられるようにして下さい」
「分かった。あの2人も桁外れな力をもっているから問題はない」
「よろしくお願いします」
「というわけで昇格試験を受けることになりました」
「昇格試験ですかぁ。やってやりますかぁ!」
「よく分かりませんがそれに合格すればいいんですよね。楽勝です!」
教会へやってきた私がフィオナとフレイヤにも昇格試験の説明をすると2人とも快く了承してくれた
試験は数日後、それまで内容は伏せられていて当日までは明かされない
まぁ何がきてもこの3人なら問題はないだろう
「まぁその話は一先ず置いといて、見てください!パナモの実を使ったお菓子とか他にも色々作りましたよー!」
テーブルにはパナモの実を使ったクッキー、パウンドケーキ、タルトやその他にもジュースやジャムといったものがたくさん用意されていた
「たくさん作ったねー。それにどれも美味しそう」
「調理班の子供達も手伝ってくれたんですよ。ねぇ~」
「「ねぇ~♪」」
お店で販売することとなる商品を作ることを任された孤児院の中で料理が上手い子達
フィオナから作り方を教わる為に一生懸命頑張っている
外で作業をしている子達も呼んで皆で試食をすることに
まずはクッキーからいただこう・・・うん美味しい。サクサクで口当たりがよく、乾燥させた実は甘みが増していてとても美味しい
ジュースはパナモの実を水で少し割ってあるようだ。そこに柑橘系の果物が入れてあるのか甘みがありながらもサッパリとした味わいに変わっていて飲みやすい
その他のお菓子も凝っていてどれも申し分ない出来だ
「うん、どれも凄く美味しい。これなら売り物にしても問題ないね」
「ですよね~。でも流石にこれ全部を商品化するのは難しそうですね。いくつかに絞らないと」
「それなら作り方が比較的簡単なクッキーとジュース、それとジャムはどうかな?ジャムなら日持ちするから売れ残る心配もないだろうし」
「やっぱりその辺りが無難ですかね。よし!じゃあ調理班の皆さん!その3つを中心に頑張っていきましょう!」
「「はーい!」」
フィオナの手を借りずに商品化しても問題ないレベルのものを作れるようにならないといけないからな
向上心のあるこの子達ならきっと上手くいくだろう
それから数日が経ち、昇格試験の日がやってきた
「それではこれより昇格試験の試験内容を発表します」
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