33話 川へ遊びにやってきました
「着きました〜♪ここがこの前言っていた川です」
私達は先日フィオナが言っていた例の川へと遊びにやってきた
山を少し登った場所にあるせいか気温も少し低い気がする
川のせせらぎと鳥の鳴き声も心地よい。聞いていた通りいい場所だ
「いい所だね」
「ですよね~♪それじゃあ早速水着になりましょう♪」
「早く入りましょうご主人様!」
そう言って2人は着ていた服を脱ぎ始め水着に着替え始めた
私達以外に人がいないとはいえもう少し気を使った方がいいと思うが・・・
フレイヤは下がスカートになっているタイプ。フィオナはビキニタイプで腰にはパレオを巻いている
うん、2人とも似合っているな
「ほらほら、エレナさんも早く着替えて下さい」
「わ、分かってるよ」
フィオナに急かされ止むを得ず着替え始める
なるべく布面積が少ないものは選ばないようにしていたが、2人の圧に押されてフィオナと色違いのものを渋々購入することにした
「うんうん!私の見立て通りですね。エレナとっても似合ってますよ♪」
「美しいですご主人様!」
「凄く恥ずかしいんだけど・・・」
普段の下着よりくい込んでいる気がするのは気のせいだろうか?
あと物凄く心許ない。世の女性はよくこの姿で動き回ることが出来るな
ここに私達3人しかいなくてよかった。流石にこの姿を他の人に見られる心の準備はまだできていない
「それにしても人間は変わっていますね。水の中に入るのにわざわざ専用のものを作るなんて。どうせ濡れるんだから風呂のように全裸でいいと思うんだが・・・」
「人間の世界にはモラルというのがあるんですよ」
「何が漏れるかはよく分からないがご主人様が選んでくれたものだからな!大切に着させてもらいます!」
フレイヤは始めの頃普段の下着すら渋い顔をして着けていたからなぁ
私が選んであげなければ本気で全裸で行くつもりだったみたいだし危ないところだった
着替えが終わった私達は軽く準備運動をしてから川へと足を入れた
「あぁきもちー・・・」
「ですねぇ・・・」
「とりゃあ!」
「わっぷ!なになに!」
見るとフィオナが持ってきていたバケツを使ってこちらに向かって水をかけてきていた
なるほど、川ではそういう風に水をかけ合って遊ぶのか。なるほどなるほど・・・
「仕返しだぁー!」
「ちょっ!魔法はズルいですよぉ!」
「どりゃあ〜!」
「フレイヤ!その勢いはヤバいから!地面が抉れてるって!」
最早遊びというより軽い戦闘みたいになってしまったが、その後はのんびりと過ごした
いつもは鬱陶しい日差しも冷えた体を暖めるにはちょうどいい
太陽が真上まで登った頃に私達も昼食にすることにした
「じゃあ私は火の準備をするので2人は魚を釣ってきてもらえますか」
「分かった」
「大物を釣り上げるぞー!」
フィオナに火起こしを任せ、私達は少し下流の方へと移動して釣りをすることにした
釣り竿は魔法で作り餌は街で購入したものをつける
これだけ綺麗な川なら魚もきっと美味しいはず。たくさん釣ってフィオナに美味しい魚料理を作ってもらおう
「ご主人様!あそこにたくさん泳いでいるのを見つけました!」
「おっ、流石目がいいね。よし!早速とりかかろう」
魚が集まっている場所目掛けて釣り針につけた餌を投げ込む
これだけいればすぐ食いつくことだろう
ー数十分後ー
「釣れませんね・・・」
「だね・・・」
川にいる魚達は餌に何度も食いついているが、私達の反応が良すぎるせいで魚が餌に触れた瞬間に竿を上げてしまうのだ
それを踏まえて魚が食いつくまで我慢していると今度はいつの間にか餌だけ食べられている始末
まさか自分にここまで釣りスキルがなかったなんて・・・
いっその事投網で一網打尽にしてやろうかとも考えたが、あまり多く釣りすぎるのもよくない
あくまで自分達が食べる分だけを獲らなくては
しかしこのままでは昼食が抜きになってしまう。どうしたものか・・・
「あっ!ご主人様あれを見て下さい!」
フレイヤが指差す方を見ると下流の方からこちらに向かって凄い勢いでやってくる何かがいる
近づいてくるたびにどんどんその姿が大きくなってくる
頭の部分には鋭く長い一本角。鋭いヒレに鋼鉄のように堅い鱗に覆われているあの魚は・・・メタル・フィッシュか
なんていいタイミングなんだ。あの魚は鱗がとてつもなく堅い分、身が凝縮されていていて味も抜群だ
あの魔物なら釣り竿を使う必要もないしな
「フレイヤ、頼める?」
「任せて下さい!」
迫ってくるメタル・フィッシュに挑発の魔法をかけてフレイヤに攻撃がいくよう仕向ける
魔法にかかったメタル・フィッシュは目論見通りフレイヤの方に目掛けて突進し、鋭い角で攻撃してくる
フレイヤはその攻撃を最小限の動きで躱して角に手をかけた
「よっと!」
フレイヤはそのままメタル・フィッシュを持ち上げた
自分より幼い見た目をした少女が巨大な魚を片手で持ち上げている姿はなんともシュールだな
ビチビチと必死に抵抗するメタル・フィッシュを河原の方へと思い切り叩きつけるとメタル・フィッシュは動かなくなった
「終わりましたよご主人様ー!」
「お疲れ様。これだけの大きさならこいつだけで十分だね」
「早速フィオナに調理してもらいましょう!」
その後火起こしが済んで私達の帰りを待っていたフィオナにメタル・フィッシュを見せるととても喜んでくれた
メタル・フィッシュは食べるだけでなく装備の素材として使うことも出来る
鋭利なヒレは鏃として、堅い鱗は防具の素材としてそこそこの値で売ることができる。角も加工すれば武器として使うことが出来るだろう
この辺りの冒険者では装備的な理由も含めて倒すのは難しいかもしれないが、私達にとっては1匹で2度おいしいい思いができる魔物だから今回現れてくれて非常に助かった
普通の釣りより魔物を倒す方が簡単というのもおかしな話だが・・・
「出来ましたー!どうぞ召し上がれ!」
フィオナが作ってくれたのは串に刺して焼いたものと刺し身にして野菜と一緒にしたカルパッチョだ
串焼きは塩とタレの2種類あり、塩は素材の味をダイレクトに感じることができてタレの方は甘辛いタレでどちらも食欲を駆り立てられた
カルパッチョもメタル・フィッシュを生で食べるというのは初めてだったがコリコリとした食感で淡白な味というのもあり用意していた野菜やフィオナ特製ドレッシングとも調和がとれていてとても美味しかった
食休みした後はまた3人で川で遊んだ。少し上流に行った場所には小さな滝もあったのでそこから飛び込んだりもして休日を堪能した
ーその日の夜ー
「いたたた!凄くヒリヒリする・・・」
「ハシャぎすぎて日焼け止め塗るのすっかり忘れていましたね・・・体中がヒリヒリします。どうしてフレイヤさんは平気なんですか?」
「私は人間の体でも元は竜だからな!日焼けなどしないのだ!」
まさかこんなことで動けなくなる日が来るなんて・・・今度行く時はしっかり日焼け対策しておかないとな・・・
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