31話 祝勝会
剣舞祭は優勝という形で幕を閉じた
優勝賞金を手に入れた私はとある酒場を貸し切りにして皆で祝勝会を行うことにした
これなら周りの人達に囲まれる心配もなくゆっくり楽しむ事ができる
「それでは!ご主人様の優勝を祝って!カンパ〜イ!」
「「乾杯〜!」」
ここ最近控えていたお酒も今日位はいいだろう
テーブルいっぱいに置かれた料理をツマミに口へと流し込む
疲労した体にキンキンに冷えたお酒が染み渡る
「プハァッ!美味しいですねぇ♪すみませんお代わりお願いします~」
「どのお料理も美味しいわねぇ。これはどんな調味料を使ってるのかしら」
「あぁ、それはですねぇ」
母とフィオナは料理談義に花を咲かせている
そんな2人の話を肴にお酒を呑んでいるとフレイヤが取り皿に料理を取って私へ渡してきた
「どうぞご主人様」
「ありがとうフレイヤ」
フレイヤから渡された皿を受け取りそこから一口運ぶ
うん、この料理も美味しい。このお店にして正解だったな
「それにしても今日優勝したことでご主人様は更に有名になりましたね!ご主人様の騎竜として私は鼻が高いです♪」
「そ、そう」
まぁ今回は自分で選んだ結果だし、もうここまで来たら流れに身を任せるしかないかな・・・
それから暫く皆で賑やかに時を過ごしていると入口の扉が開く音が聞こえてきた
扉の方に目を向けるとそこにはフードを被った小柄な女性が立っていた
見た感じここの従業員ではなさそうだ。入口には貸し切りの札があったはずだが・・・
「すみませんお客様、こちらは本日貸し切りでして・・・」
「知っていますよ。ここにエレナさんがいらっしゃるのも調べ済みです」
この声・・・まさか
女性がフードに手をかけ顔をこちらに見せてきた。案の定セフィリアだった
私達がここで祝勝会を開いている事を知って駆けつけてきたようだ
「あの子・・・どこかで見たような・・・」
「ハッ・・・!母さん!あの方はこの国のお姫様のセフィリア様だよ!」
「あっ!確かに国王様の隣で一緒に座っていた方!」
2人はセフィリアが王女だと分かると膝をつき頭を下げようとする
しかしそれをセフィリア本人が制止した
「そのような事をする必要はないですよエレナさんのお父様にお母様。私がお邪魔しているのですからどうか気になさらないで下さい」
「し、しかし・・・」
まぁ気にしないでっていうのは無理があるよな・・・一国の王女様がお忍びでわざわざやってきたんだから
お店の人もビックリして腰抜かしちゃってるよ
周囲が緊張している中、フレイヤがセフィリアを指さして言い放った
「また来たな!しつこくご主人様に付きまとうストーカー王女め!」
「誰がストーカーですか!」
フレイヤの一言から2人の言い合いが始まる
その2人のいがみ合いお陰か、お店にいた人達の緊張も少しだけ解すことができた
ホッと一息ついているとセフィリアの他に更にもう1人お店へと入ってきた
「すみません。セフィリア様がどうしてもと言って聞かなかったもので」
「ユリウスさん」
セフィリアを追いかけてきたのか
剣舞祭が終わったばかりだというのに大変だな・・・
「ユリウスさんもせっかくですから一緒にどうですか?」
「よろしいのですか?」
「人数が多い方が楽しいですしどうぞ遠慮なく」
「ではお言葉に甘えて失礼させて頂きます」
急遽2人が加わり、空になった皿も出てきていたので追加の注文をすることにした
料理が出来上がるとセフィリアが取り皿に分けて私の元へと寄ってきた
「エレナさんはい、アーンして下さい♪」
「あっ・・・アーン?」
何をするのかと思えば・・・こんな皆が見ている中でそんな恥ずかしいことできるわけないじゃないか
そうこうしているうちにセフィリアが私の口にスプーンを近づけてくる
その様子を見たフレイヤが再び止めに入ってくる
「ハムッ!」
「あーっ!何するんですか!それはエレナさんに食べて欲しかったのに!」
「残念だったな!お前のアーンがご主人様の口に入ることはない!はっはっはっ!」
意外とこの2人ウマが合うじゃないんだろうか
そんな2人を見ていると両親からの視線を感じたのでそちらの方に向くと唖然とした顔をしていた
「娘が王女様を侍らせている・・・」
「変な言い方しないでよ」
信じられない気持ちになるのは確かに分かるけど・・・
驚いている両親はとりあえず一旦放置しておいて私はユリウスさんに声をかけた
「ユリウスさん、今日はありがとうございました。久々に思い切り戦うことが出来て楽しかったです」
「こちらこそありがとうございました。また機会がありましたらお手合わせお願いします」
空になったお互いのグラスにお酒を注ぎ乾杯をする
次戦う時は一段と強くなっていそうだ。私も鍛えておかないとな
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