26話 思わぬ再会
開幕式が終わり、1回戦目の人たち以外は控え室の方へと移った
トーナメント表によると私は3回戦目。相手は・・・ロッシュとかいう人か
全く知らないな。どれ位強い人なんだろう
1回戦と2回戦が終わり会場はかなりの賑わいをみせていた
「さぁどんどん参りましょう!3回戦は皆さんお待ちかね!聖剣に選ばれた者は実力はいかに!?エレナ選手の登場です!」
実況に促され開始位置へと移動すると会場が揺れているかのように錯覚する程の歓声に包まれた
予想していた以上の大歓声に思わずたじろんでしまう
「そして対する相手はロッシュ選手ー!こちらは各地の剣術大会で連勝記録を継続している強者だ!果たして勝利を手にするのはどちらかー!」
テンション高いなあの実況者・・・あの人がロッシュ。使う武器は片手直剣
一見細身に見えるが相当鍛えているみたいだな。連勝しているというのも頷ける
試合前の礼儀として前へ出て握手を交わす
「よろしくお願いします」
「よろしく。ふっ、聖剣を手にしているとはいえまだ若いな。君を倒せば私の名は一気に王都中に轟くはず。悪いが踏み台になってもらう」
中々強気な発言。どれ程のものか探る為にまずは様子見とするか
開始位置に戻り剣を抜き放つと観客席からは再び歓声が上がった
一応普段から使っている剣も大会参加時に登録申請しているからどちらを使おうとも問題はないのだが、大勢の人が聖剣を見に来ているこの場で出し渋っているとブーイングが飛び交うかもしれないからな・・・
「それでは・・・始め!」
「ふっ!」
審判員の開始の合図と同時にロッシュが仕掛けてくる
私の細い腕を見て力が弱いだろうとの判断か、序盤から上段から力を込めた一撃を打ち込んでくる
その考えは訂正してもらいたいところだが、そう思ってくれているのなら利用しない手はない
その上段からの攻撃を素早く避けるとロッシュは避けた私を追って連撃を放ち、それを避けたり剣で弾いたりと防戦一方を演じる
なるほど。確かにこの腕ならその辺りの相手になら負けることはないだろうな
攻めているはずが中々一撃を与えることが出来ない事に痺れを切らしてきているのか、段々と大振りになってきている
動きも十分見ることができたしこの辺りで決めるか
ロッシュの攻撃を躱した際にほんの僅かによろめいたフリを見せるとロッシュはそこを見逃さず仕留めにきた
なまじ剣の腕がある方が誘導しやすくて助かる
剣を振り上げた瞬間にすかさず懐へと潜り込む。突然の反撃にロッシュは意表を突かれたような顔をしていた
私はその勢いのまま剣の腹で振り払うようにロッシュを場外へと吹き飛ばした
「しょ、勝者エレナ選手!」
「い、一撃〜!ロッシュ選手が優勢かに思えましたが、大振りになった一瞬の隙を見逃さなかったエレナ選手が一撃でロッシュ選手を沈めましたー!」
「なんだ今の動き!早くて見えなかったぞ!」
「一瞬で移動してたよね!あの可愛さで強さも兼ね備えてるなんて素敵!」
一先ず面目躍如といったところか
周囲から称賛の言葉をもらった私は一礼してから控え室へと戻った
ロッシュの様子は・・・恐らく肋数本は折れたかもしれないけど、今回の為に回復魔法が使える者を動員させているのでそれくらいであればすぐ元通りにしてくれるだろう
それにしても・・・久々の対人戦で使ったけどやっぱりこっちだと一撃の威力は増すけど魔法で補助出来ていないこの体だと連撃が出しにくい
他の相手ならいざ知らずユリウスさんが相手となると危ういだろうな
その後の2回戦、3回戦も危なげなく勝ち抜いていき、無事に1日目が終了した
明日あと2回勝てば決勝戦。ユリウスさんも順当に勝ち進んでいるようだ
控え室で帰りの準備をしているとフィオナとフレイヤがこちらにやってきた
「ご主人様!お見事でした!」
「お疲れ様でした!明日も頑張ってくださいね!」
「2人ともありがとう。今日はこのままどこかに食べに行こうか」
身支度を済ませ試合会場を出るとそこには先程までいた観客が残っていて、私が出てくるなりわらわらと集まってきてあっという間に囲まれてしまった
「エレナさんお疲れ様でした!これ・・・良かったら受け取って下さい!」
「ど、とうもありがとう」
「私のも受け取って!」
私も私もと次から次へとやってくる
よく見ると辺りにいるのは殆どが女性だった
おとこに囲まれるよりはいいが全方位からこんな圧で迫られると混乱しそうになる・・・
気持ちは有難いがここは早々に退散するとしよう
私達は外食するのを諦め、群衆の波をかき分けて宿屋へと退散した
「はぁはぁ・・・凄い人でしたねぇ」
「ね・・・なんか試合より疲れちゃったよ」
「では私は部屋に料理を持ってくるよう伝えてきますね」
フレイヤに任せフィオナと共に先に部屋へと向かった
部屋の前まで到着しドアノブに手をかけようとしたその瞬間、部屋の中から気配を察知した
1人・・・いや2人か。従業員のかとも考えたがそれなら掃除をしていたりベッドメイキングをしていたりと何かしら動きがあるはず
今中に居る者達はこちらが入ってくるのを待ち構えているように窺える
「どうしました?」
「中に誰かいるみたいちょっと待ってて」
私は透視魔法を使い中の様子を確認した
そこにいた人物を見た瞬間驚きを隠せず、私は扉を開けて中の2人に声をかけた
「父さん母さん!」
「久しぶりねエレナ」
「会いたかったぞエレナ。元気にしてたか?」
なんと部屋にいたのはカステルの村にいるはずの私の両親であるカインとシェリーだった
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