222話 終結
「ご主人様の初めてが・・・初めてが・・・」
リュミエールとの口付けを目の当たりにしたフレイヤがわなわなとしていたが、今それについて触れるとややこしくなるのは目に見えているから放っておこう
残されていた力を託された私はハリオンを討ち果たすべく準備を整えていく。出来ればこの姿をあまり公に見せたくなかったがもうそんな悠長なこともいっていられない
「性転換」
「エレナさんがまた男性に!もしかしてその姿で戦うんですか?」
「これならあの敵を倒せると思うんだ」
事故のような形で男の姿になったあの時がきっかけとなって覚えた魔法。男性時に実感したあの力、あの力に加えてリュミエールから託された力。この2つを使い最大の一撃をハリオンに放つ
いくら頑丈な体のハリオンでもこれなら斬ることが出来るはず。あとはタイミングだ、ハリオンがこちらに意識を向けていない状態が必須条件
あの眼に見られたらこの姿も強制的に戻ってしまうかもしれない。一握りのチャンスを逃さないようよく2人の動きを見ておかなくては
「エレナさんそのお姿・・・まさか貴女は」
変身した私の姿を見たクリスティアは何かに気づいたようで思わず口に出しそうになっていた口元を手で覆っている
この姿になると勇者だった頃のあの姿に戻ってしまう。レオン達は分からないかもしれないが神獣の姿まで熟知しているクリスティアには気づかれるのではと思っていた
予想していた通りクリスティア以外は私が男の姿に変わった事に驚きはしてもエイクという事には気づいていない様子。クリスティアが黙ってくれれば騒ぎになることはないはずだ
「出来ればこの姿の事は誰にも言わないで欲しいかな」
「なにそれ、どういう事?クリスティア」
「・・・いえ、なんでもありません。私の気のせいだったみたいです」
事情を察してくれたクリスティアは他の仲間に明かす事はなかった。憂いは無くなり気を取り直してハリオン達の方に向き直る
戦況は圧倒的にセイバーの優勢モード、私達が束になっても手も足も出なかった相手に対して完全に手玉に取っている状態。このままいけばハリオンを倒すことができそうだが・・・
「ちっ、流石にこのままではまずいな。ならば・・・ふんっ!」
「うわっ、なんだあれは!体中から目玉が出てきたぞ!気持ち悪い!」
体の至る箇所から突然現れた無数の眼、あれは滅却の邪眼と同じ眼・・・ハリオンの邪眼は1つではなかったのか
よく見ると邪眼の他にもいくつか違う眼がある、あれだけの数の眼があれば全方向からの攻撃に対応ができるだろう。邪眼だけでも厄介だったというのにこれではますますこちらの攻撃を当てるのが難しくなってしまった
しかしそんな事を気にする素振りもなくセイバーは先程と変わらぬようにハリオンに攻撃を加えていく。複数の邪眼に加えその他の眼を全く意に介していない
「そのような小細工をしたところで私の前では無意味だ」
今までは本気ではなかったのかさっきよりも更に速度が上がりハリオンの眼が一撃で複数潰されていく。いや正確には一撃ではなく連撃か、あまりの速さに残像が現れ実体の方は最早目で追うことができない。彼が味方で本当に助かった
今ハリオンは攻撃を防ぐのに手に焼いていてこちらに意識がいっていない。あの複数の眼が無くなったタイミングに合わせてこちらの一撃を打ち込む
魔王を倒した時に使った私が使える実質最強の剣技、あれとリュミエールの力でハリオンを倒し決着をつける
魔法で限界ギリギリまで自身の体を強化し、更に剣にも強化魔法をかけていく
こちらが淡々とハリオンを倒す為準備を進めていく一方で、ハリオンとセイバーは戦いながら何か話しているようだった
「ここまでして何故貴様等があのような取るに足らない下等生物達を守るのか理解に苦しむな」
「確かに人間は我々にとって小さき者達だ。しかし彼らは愛を知り慈しみ合いそして躓きながらも発展、繁栄をもたらす。私の創造主にとって人間は我が子のようなもの。それを守護するのが私の役目だ。それと取るに足らないというが小さき存在だからといって油断をしていたら痛い目にあうぞ。お前はその見下していた下等生物によって敗北することになるのだがな」
「なんだ予言者のつもりか?そんなハッタリには乗らんぞ」
「予言ではない、これから起こる事の結末を言ったまでだ」
「何・・・?」
戦闘しながらの会話に意識が向いているからかハリオンは隙だらけだ。そのお陰で気配を完全に殺して背後に忍び込むことが出来た
の、はずだったがハリオンの背中から隠されていた眼が現れこちらを視認、襲撃がバレてしまった
「ハッ!それで気配を殺したつもりか!」
「くっ・・!」
気づかれたがもう後に引くことは出来ない。このまま決める!
防御態勢に入ろうとするハリオン、しかし何故か途中で動きが止まりその場で立ち尽くしていた。何かに行動を阻止されているかのように
「くっ・・・貴様、まだ意識があったのか」
「今だ・・・やれ・・・」
もしかして体を乗っ取られていたディアボロがハリオンの動きを封じてくれているのか。僅か数秒の膠着、だがこの場面ではそれで十分だ
「おしまいだ!"聖剣の断罪"!」
「ぐ、ぐおおおおお!!」
無防備状態のハリオンに一撃が直撃。今まで弾かれていた体に初めて刃が通っていく。まだだ、もっと限界まで力を引き出せ。回復した全ての力をここで全て使い果たす位じゃないとこいつは倒せない
「"生命変換"!」
後先の事は考えていられない、生命変換も使い更に威力を増幅。そうする事によって止まりかけていた剣が再び動き出す
最早ハリオンに抵抗する術はない。ようやく決着がつく
「こんなところで・・・だが次こそ、次こそは貴様等を恐怖の底に落としてやるぞ!」
「やってみろ・・・何度だって止めてやる」
その言葉を最後にハリオン、いやディアボロの体から全身の力が抜けた様に倒れてしまった。ハリオンを倒すことができたのか土壇場で逃げたのか・・・分からないがとりあえず終わったんだ
ハリオンが消えた事を確認した私はそこで意識が途切れてしまった
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