220話 救世主
「威勢がいいだけで大したことはなかったな。まぁ体の調整をする分位には使えたしよしとするか」
「ぐっ・・・全員でかかって手も足も出ないとは・・・」
「なんなのよこいつ・・・」
プラメアやレオン達が加勢に入りハリオンと戦いを繰り広げたが、こちらがどうにかして食い止めようと必死に戦ってもハリオンは涼しい顔をしていて一人、また一人とやられていき結局足止めをした程度で全員軽く捻られてしまった私が苦戦したプラメアの剣もハリオンの前では子供のお遊び同然だった。まだ息はあるようだが全員骨を数本やられているようで動ける者はいない
「吾輩とした事が少し遊びすぎてしまったな、さっさと貴様等を始末してこの国を消すとしよう。まずは貴様からだ偽物勇者」
「くっ・・・」
私達に止めを刺そうとハリオンは先ず始めにレオンの元に向かい始めた。それを阻止しようと私の横を通り過ぎようとしたハリオンの足を掴んだ。こちらに視線を向けてきたハリオンに対し私が睨みつけるとそれ以上の鋭い視線で睨み返してきた。それでもこちらは怯むことなく言葉を発した
「行かせないぞ・・・お前なんかの思い通りにはさせない」
「貴様等のその目を見ると虫唾が走る。希望を捨てず最後まで抗おうとするその目、遊んだりせずさっさと仕留めておくべきだったな。消えろ」
こちらを一瞥した後再度レオンの方に向き直ったハリオンは私の方を見ることもなく止めの一撃として魔法を放ってきた。私はそれを最後の魔力を使いハリオンが使っていた反転魔法で奴の攻撃を跳ね返してやった。するとどうだろうか、今まで散々こちらの攻撃が通らなかったハリオンの体に致命傷とは言えないが初めて傷をつける事が出来た
どうやらいくら邪眼とやらでも視界外からの攻撃にまでは対応出来ないようだ。満身創痍の相手から反撃が来ると思っていなかった奴の油断もあっての結果だろうが
自身の体に傷がついたハリオンはこちらに向き直る。冷静を装おうとしているがその顔は明らかに激昂していた。
「貴様・・・肉塊にしてやる」
最後の最後に一矢報いてやったがもう本当に力は残されておらず指一本動かすことができない。ラミアス達は大丈夫だろうか、フィオナ、シエル、セレーネ、キューちゃん。叶うことならどうか逃げ延びて欲しいが・・・
二度目の人生は前世では出来なかった様々な体験が出来てとても充実していたな。今度こそあの世に行く事になるだろうが元々女神様の温情のお陰で歩むことが出来た人生だ
あの世に行ったら仲間達にハリオンを止められなかった事を怒られてしまうだろうか。昔の仲間に会えるのならそれも甘んじて受け入れよう
今までの思い出を噛み締めながら最後の時を待った。しかしいくら経ってもハリオンからの攻撃は来ない。どうにか力を振り絞り顔を上げて様子を窺ってみるとハリオンの背後にいつの間にか何者かが立っているのが見えた
「どうやら間に合ったようだな」
その者の声はどこかで聞いた事のある声だった。霞む視界の中でようやく捉えることが出来た声の主はエルフの里に行った際、子供の姿になってしまい元に戻る為に向かった世界樹の中で遭遇したあの神獣アポストロスだった
滅多な事では人前に姿を現さないこの神獣がどうしてこの場所に・・・まさか私達を助けにやって来たのか。朦朧とした意識の中考えていると、その答えはまるで私の思考を読み取ったかのようにアポストロス自身が教えてくれた
「彼奴が現れた直後は気配が弱く感知が遅れ、世界樹からここまで来るのに到着するまで時間がかかってしまったが・・・図らずともお前達が奴を足止めしていたのが功を奏したようだな。あとのことは任せてもらおうか」
世界樹からこの法国まで何千キロとあるはずだが・・・そこからハリオンの僅かな気配を察知したというのか
けどこれでハッキリした、彼?は私達の味方としてここに来てくれた。今はそれだけ分かればいい
アポストロスの実力は以前戦った時に十分把握している。言う通りあとの事は任せよう
「数百年振りだな魔神、散々この私にやられているというのに性懲りもなくまた来たのか」
「セイバー、貴様はいつもいつも吾輩の邪魔をしに来よって。今度こそ息の根を止めてこの世界を我が物にしてやろう」
セイバー?もしかしてアポストロスのことか?
アポストロスは私達人間が勝手に名付けた名前、個体名はそんな名だったんだな。双方の会話から察するに様々な災害を阻止していたのは全てハリオンの企みが関わっていたようだ。その度にセイバーが現れて食い止めていたということらしい
ハリオンとセイバー、お互いが暫しの間睨み合った後戦いが開始された。2人の動きはかろうじで目で追うことが出来たが、最早人が出せる速度を優に超えていた
両者の戦いに思わず見入っているといきなり私の目の前にハリオンが現れ攻撃を繰り出してきた。しかしそれをセイバーが食い止める
「相変わらずだな。私がいる限りお前の好きなようにはさせないぞ」
「ちっ、忌々しい・・・」
セイバーのお陰で命拾いしたがこのまま私がここにいても邪魔にしかならない。2人が戦っている間に辛うじで体を這う位は出来るまでに回復した。少しでもこの場から離れて戦いやすいようにしなくては
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