218話 魔神の封印
瓦礫に埋もれている子供を助ける為に意識を一瞬向けた隙を突かれハリオンの攻撃をまともにくらってしまった。撃ちぬかれたのは腹部、こちらに攻撃を仕掛けてくる事はある程度読めていたので急所を避けることはできた。とはいえ体を貫かれたのだから当然大量の血を流すことに変わりはない
「急所は免れたかようだがその状態でどう吾輩と戦うというんだ?まさか回復する時間を吾輩が与えるとでも思っているのか」
無論みすみす回復を許す程そんな優しくはないだろう。呑気に回復なんかしていたらその間に殺されるだろうな。だからといって目の前で子供がやられる姿をただ見ているだけなんてマネはできなかった
しかし早く回復を施さないと出血多量で死んでしまうな。フレイヤに時間を稼いでもらうか?いやハリオンを倒すなら2人がかりで向かった方が勝率は高いだろうしフレイヤ1人ではハリオンが抜けて私を攻撃してくる恐れがある。足止めをして時間を稼ぐのなら2人は必要となるが・・・
「主よ!大丈夫か!」
「フローリア・・・来てくれたんだね」
「なんだかもの凄く嫌な感じがしたから戻って来た。外の魔物は粗方やっつけたぞ」
もう1人味方が欲しいと思っていたところに外で魔物を狩っていたフローリアが戻って来てくれた。魔族達が外に配置していた魔物を粗方と言っていたがかなり数がいたはず、相当頑張ってくれたようだ。フレイヤに加えフローリアも来たならば回復までの時間ハリオンの注意を引いてくれるだろう
「ご主人様は回復をして下さい。その間私をフローリアで足止めを図ります」
「ごめん、よろしくね。回復したらすぐ戻るから」
「倒してしまっても構わないのだろう?主はそこで休んでいるといい」
そう私に言い残し2人はハリオンの元へと向かっていった。2人共魔族や魔物との戦いの後で疲労しているとは思うがなんとか持ち堪えて欲しい
「竜2匹か、面白い。相手をしてやろうじゃないか」
「お前の相手なんか私達だけで十分だ。かかってこい」
「最初から全開でいくぞ!」
フレイヤ、フローリアの共闘が行われている間に私はハリオンにやられた傷を癒す。ラミアス達には瓦礫に埋もれた子供の救助を任せ、救助した後この場から離れるよう伝えた。断片的だが独り言を喋っていた時にラミアスの体を奪おうとしていたような発言が聞こえた。ディアボロの体を乗っ取ることが出来たということはラミアスも例外ではないのは確か、とはいえここからできるだけ離れてもらうしか今は出来ない。それにハリオンは私達でも手に余るような相手、申し訳ないがラミアス達がここにいても出来る事はもうない
フレイヤとフローリアが時間を稼いでくれたお陰でなんとか無事回復は済んだが、血を流しすぎてしまったせいか少し目が霞む。傷を癒すことは出来ても失った血までは戻すことは出来ない
けど回復を行っている間に神聖魔法の反動はもう無くなり力は戻ってきた。早くフレイヤ達の戦いに加わってハリオンを倒さなくては
そう思い行動に移そうとした矢先、フレイヤとフローリアが傷だらけの状態でこちらに飛ばされてくる
「フレイヤ!フローリア!」
「う、す、すみませんご主人様・・・」
「主、あいつ変な魔法を使ってくるぞ・・・」
「なんだもうおしまいか?案外大したことはなかったな」
疲労していたとはいえ2人もこうもあっさり倒してしまうとは。フレイヤは所々が氷漬けにされ、フローリアは酷い火傷を負っている。回復に集中していたから戦っている姿は見れなかったが私の予想を遥かに超えている、魔神と名乗っているのは伊達ではないということか
私1人でどこまでやれるか・・・残された体力と魔力、それを踏まえてハリオンに勝つとしたらチャンスは一度だけ。失敗したら敗北は必至、一か八かだがこの敵に勝つにはやるしかない
「次は貴様が相手か、少し位なら遊んでやるからかかってこい」
こちらに攻撃してくる素振りはなく、逆に攻撃してこいと手で招いてくる。こちらが動かない限り相手も動きそうになかったので攻撃を仕掛けた
先程の攻撃で物理でダメージは与えるのは難しいと判断したので今度は魔法を放つ。様子見の一発でこちらの攻撃に対してどういう反応をするのかと様子を窺っていると、ハリオンが人差し指を回すように動かし始めた。すると私が放った魔法がハリオンに当たる直前で転回しこちらに向かってきた
「反転魔法か・・・!」
相手の攻撃を反転させ利用する魔法、フローリアが変だと言っていたのはこれの事か。2人の傷の状態からしてブレスを利用されたのだろう
けど物理の時と違いこちらは魔法を使って当たらないよう防いでいるということはダメージを与えられるかもしれない。相手が反転魔法を使ってくるならそれを対策しつつ戦うしかない
「魔法|消却!」
「ほぉ、そうくるか」
対象の魔法を一時的に使用不可にする魔法、これでハリオンが使う反転魔法はしばらく使えなくなった
あとはどう攻撃を与えるか・・・強力な魔法を撃っても避けられたのでは意味が無い。どうにかして動きを封じるしかないか
「サンドウェーブ!」
「そんなもので吾輩に傷を負わせられると思っているのか」
ハリオンに襲いかかる砂の波、当然こんな事でダメージを与えられるとは思っていない。これはただの目眩し、本命は別にある。ハリオンが向かってくる砂の波を手刀で一刀両断したところを今度は狙う
「閃光!」
「さっきから何をしているのだ貴様は」
閃光を使いハリオンの視界を奪う。ほんの数秒しか効き目はないだろうがその数秒でこちらの準備は完了する
「永久氷結!」
閃光の効果が消えた瞬間ハリオンの足元に魔法陣が発動される。魔法陣の中にいたハリオンは足元から徐々に氷漬けにいき身動きが取れなくなっていく
サンドウォール、閃光で視界を塞いでいた間にハリオンの立っている場所に仕掛けておいた。設置型の魔法なので動き回る相手ならば誘導しなくてはいけなかったが、こちらを甘く見て油断していたハリオンにその必要はなかった
「なるほど、これが狙いだったわけか」
その言葉を最後にハリオンは完全に閉じ込められ、更地と化した場所に氷の柱が出来上がった
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