211話 怪物を倒すには
ラミアス達に侵入してこようとする魔物の対処を任せ、私は自分で築いた防壁を登ってインフェルノ・グラトニーの目の前までやってきた。改めて見ると本当に大きいな、これだけの大きさだと攻撃は当てやすいだろうが生半可な攻撃では止まらないだろう
それ以前にこいつに有効な攻撃手段を探さなくては倒すことすら不可能、どうすればこの化け物にダメージを与えることができるか
「ご主人様!乗って下さい!」
「フレイヤ!」
グラトニーの背後から私に気がついたフレイヤがこちらにやって来た
横を通り過ぎるタイミングで跳躍し背中に乗る。フローリアの方はグラトニーから離れた場所にいる魔物の方の相手をしているようだ
「すみません、私達が魔物を倒したせいでこんな事に」
「いや、仕方ないよ。この展開は誰も予想出来てなかったから誰も責められない。それよりもあれをどうにかして倒さなくちゃいけないんだけど・・・この状況でなんでそんなにニヤニヤしてるの?」
「すみません、ご主人様を乗せて戦えるのが久々で嬉しくてつい」
この状況でそんな呑気な事を考えていられるなんて流石というかなんというか・・・
気を取り直して2人でグラトニーに弱点がないか周りを飛び観察する。しかし球体状の体に弱点らしき弱点は見当たらない、防壁にいた騎士達がグラトニーに放った魔法を一通り見たがどの属性もダメージらしいダメージが入った様子はなかった
魔法も物理的な投擲も効かない相手に有効な技がないか飛行しながら考えているとグラトニーの黒い体から突如触手が現れ飛んでいる私達目掛けて攻撃を繰り出してきた。今までの奴の特性から考えてあの触手も触れられたらきっとひとたまりもないだろう
「あれに当たったら一巻の終わりだよ!避けてフレイヤ!」
「この程度の攻撃で私を捕らえられると思うなよ!」
無数の触手がフレイヤを捕えようと迫って来るが針に糸を通すような繊細な動きで回避していく。普段他の人を乗せている時は落とさないよう速度を落として飛行しているが今この時はそんな事を考えもせず遠全開で飛び回る。確かにフレイヤの背中に乗って戦うのは随分と久しぶりだがこうしているとあの頃の感覚が蘇ってくる。年がら年中飛び回っていた頃の背中に乗っていた時の身のこなしは今も体に染みついているものだな
なんて昔の思い出に浸っていてはフレイヤの事をどうこう言えないな。襲いかかってくる攻撃を現時点では回避できているものの、どこまでも追尾してくる触手相手に逃げ続けていてもフレイヤの体力がやがて限界を迎える
打開策を考えようにもこちらに考える暇さえ与えてくれない。触手が形を網の様に変形させてフレイヤを捕えにかかってくる
ブレスで迎撃するもやはり無効化されてしまい触手の網が目の前までやってくる。あとがなくなり私は咄嗟に触手に向かって聖剣を振るい攻撃を放った。すると聖剣は取り込まれることなく黒い触手を見事に斬り捨てた
それまでいくら攻撃しても全く動じず歩みを止めることをしなかったグラトニーが初めて立ち止まり怯むような様子を見せる。襲いかかってきた触手も私達から離れていった
「効いてますよご主人様!どうやらその剣ならあいつにダメージを与える事ができるみたいですね!」
どうやら聖剣のような神聖力のある武器でならグラトニーにダメージを与えることができるようだ
これでようやくこの状況を打破する手段を得ることができた
しかし問題はまだ残っている。この剣のサイズと神聖力では奴にダメージを与える事は出来ても倒す程の傷を与えるとなると時間がかかりすぎて防壁を突破されてしまう
一撃で吹き飛ばす位の神聖力のある技でもなければあれは仕留めきれないだろう。けど残念ながら私1人ではあれを倒せる程の神聖力は持ち合わせていない。以前王国で使った事のある神聖魔法でもグラトニーを屠れるかは怪しいところ
しかしここには奴を倒せるだけの神聖力を持っている人物が2人いる・・・それは聖女リュミエールとセレーネだ
その2人の神聖力を借りることができればきっとグラトニーを倒す事ができるはず。ならばここは一旦奴の動きを封じ込めるとしよう
「天使の鳥籠!」
神聖力が込められている拘束魔法を使いグラトニーを包囲。閉じ込められたグラトニーは先程までであれば拘束されようとも気にする素振りすらなかっただろうが今は違う。やはり神聖属性を嫌がっているのは間違いないようだ
一先ずはこれで少しの時間は稼げるはず。その間に2人の元へと向かおう
「フレイヤ、聖女様とセレーネの所に大急ぎで向かってくれる。2人の力が必要なんだ」
「そうはさせないぞ!」
この場を離れて2人に力を借りようと移動しようとしたその時、グラトニーの背後から2体の魔族が現れこちらに攻撃を仕掛けてきた。グラトニーに集中して気づくのが遅れてしまったが、結界が無くなったことで魔族達が法国内に侵入してきてしまっていた
「こいつを殺らせるわけにはいかないんでな。貴様等の好きなようにはさせないぞ」
このタイミングで面倒な・・・今は一秒でも時間が惜しいというのに。こいつ等を野放しにしてリュミエール達の元まで行ったら他の場所に被害が及ぶ可能性がある。階級的にはそこまで高くない魔族達だからフレイヤと共に速攻で倒してしまおうかと思ったそんな時、今度は下の方からこちらに向かって来る者が現れた
「エレナの邪魔をするなっ!」
「エレナ様、ここは私達に任せて行ってください」
「ラミアス!シエル!・・・・無理しなくていいからね!」
地上で魔物の相手をしていたラミアス達がこちらに気づいてやって来た。無茶はするなといったのに・・・でもここは迷っている暇はない
魔族の相手をラミアスとシエルに任せることにし私達はリュミエール元へと急いだ
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