21話 教会のお手伝い 前編
森の精霊ノアを助けたあの日から数日が経ち、私は久しぶりにギルドにやってきた
相変わらず周りからの目線が気になるが、話しかけるなオーラを目一杯放ってるお陰か流石に近づいてくる者はいなかった
今日は久々に3人での仕事だ。さて、どんな依頼を受けようか
手頃な依頼がないか探していると、受付の方から担当のお姉さんがこちらにやってきた
「エレナさんお久しぶりです」
「あっどうも、ご無沙汰してます」
「今日は皆さんでお仕事ですか?でしたらお願いしたい依頼があるんですがお時間よろしいでしょうか?」
受付のお姉さんの提案に了承し、席の方へと移動して説明を受けた
頼まれた依頼は教会に併設されている孤児院のお手伝い
本来この依頼は新人向けのものだ
というのも教会の依頼料は国からの補助金から出している
孤児院にいる子供達が暮らせる月の生活費ギリギリの額で、そこから依頼料を捻出するとなると生活が苦しくなってしまう為、ギルドに依頼する際は最低ラインの依頼料しか出せない
私達にこの依頼を振ってきたということは恐らく既に新人冒険者達に断られたのだろう
冒険者も生活がかかっているので雀の涙程の報酬では受ける者は中々いない
「どうでしょうか?引き受けてくれると有り難いんですが・・・」
そう言う受付のお姉さんの顔は少し曇っていた
色々な冒険者に断られ続けて困り果てているのだろう
私は2人と顔を見合わせて確認した後、お姉さんに依頼を受けることを伝えた
「分かりました。この依頼私達が受けます」
「本当ですかー!助かります!」
お姉さんは私の手を握って感謝の言葉を述べてきた
依頼を斡旋する方も色々大変なんだろうな
こちらは今のところ依頼額はあまり重要視していないし直接誰かの為になる仕事もたまにはいいだろう
私達は早速孤児院がある教会へと向かった
ギルドから歩いて10分程の場所に教会はある。到着し扉を叩いて人が出てくるの待つ
少しの間待っていると突然扉が勢いよく開かれ、扉の前にいたフィオナが吹っ飛んでいった
「フィオナ!?」
「わぁー!お客さんだー!」
中からやって来たのは孤児院の子供達
ざっと数えて2、30人はいるだろうか。予想していたよりずっと多い
どの子も10歳に満たないような小さな子供ばかりだ
扉に吹き飛ばされたフィオナが起き上がる
「あいたたた・・・元気な子達ですね」
「大丈夫ですか?子供達が申し訳ありません。ギルドから来てくれた方々ですよね。私はリリシアと言います」
子供達の後ろからリリシアと名乗る20代半ば位の若いシスターがやって来た
私達の自己紹介を済ませた後、シスターリリシアに奥の部屋に案内されその道中で話を聞かせてもらった
今回依頼を出したのはもう1人のシスターが体調を崩したことがきっかけらしい
2人でも30人近い子供を相手にするのは大変なことなのに1人ではとても手に負えないだろう
「僅かな依頼料しか出せず申し訳ありません」
「いえ、気にしないで下さい」
「今回は皆さん女性の方々で助かりました。この前ギルドから来ていただいた方は男性の方だったんですが、その・・・子供が泣いてしまいまして」
「あぁ・・・」
ギルドにいる男性陣は皆強面だからなぁ・・・受付のお姉さんが私達に依頼してきたのはそういった事情もあったのかもしれないな
その後、シスターリリシアからエプロンを支給され手伝いの内容を説明された
おおまかな内容として掃除、洗濯、昼食の支度、子供達の勉強や遊び相手等々
中々骨が折れそうだが3人で分担すれば問題ないだろう
掃除はフレイヤに任せて私は洗濯を。フィオナに昼食の準備を担当してもらってそれぞれ作業を始めた
洗濯物は子供達の服とベッドシーツ。数十人分となるととんでもない量だ
1つ1つ洗っていたら日が暮れてしまう。私は魔法で空中に大きな水の球体を作り、その中に洗濯物をどんどん入れていく
そして風の魔法で球体の中を勢いよく回転させて汚れを落としていく
こうすれば纏めて洗うこともできて時間の短縮になる
「「すごーい!」」
気がつくと後ろにいた子供達が私の魔法に釘付けになっていた
規模の大きい魔法を見たことがないのか、ただ洗濯をしているだけだが目を輝かせて見学していた
洗濯を終え、綺麗になった服とシーツを干しはじめようとすると、1人の女の子が洗い終わった服を渡してくる
「はい!」
「おっ、ありがとうね」
自ら手伝いを買って出てくれた女の子と洗濯物を干していく
すると他の子供達も参加し始め、いつの間にかリレー方式になむていた
そのお陰で素早く干し切ることができた。皆自主的に手伝いにきてくれるいい子達だな
さて、こちらが予定より早く終わったから掃除を任せているフレイヤの方に行ってみるか
教会の中に入ると、何やらかけ声のようなものが聞こえてきたので声のする方へ向かうとフレイヤを見つけた
「ちがーう!窓を拭く時はもっと腰を落として!はい1、2!1、2!」
「1、2!1、2!」
力強いかけ声と共に教会の窓を拭き上げていく子供達
どうやらフレイヤに指導されてやっているようだが・・・ここは軍学校かなにかか?
「ほらそこ!サボるんじゃない!」
「それはアンタもでしょうが」
「あうっ!」
フレイヤの頭を軽く小突く
教えるのはいいが、仕事なんだから自分も働かなくてはと注意する
私も掃除を手伝おうと思ったが、トイレ、お風呂場も清掃が済んでいて、部屋も今やっているこの場所で終わりのようなので最後に残していた廊下を軽く吹いた程度で終わった
最後は昼食の準備をしているフィオナの元に向かった
厨房の方に行くといい香りが漂ってきて子供達の可愛いらしいお腹の音が聞こえてきた
頑張って手伝いをしたからいつもよりお腹が空いているのかな
「あっ、皆さんちょうど良かった。シチューが出来上がったからお皿を用意してくれますか?」
どうやらフィオナの手伝いはする必要なかったようだ。流石料理の手際がいい
子供達と一緒にお皿を用意し、盛り付けられたものをテーブルの方へ運んでいき最後にシスターリリシアの分を盛り付け席に着く
「わぁ!今日はお肉が沢山入ってる!」
「ここに来る途中で買ったんです。おかわりもあるので一杯食べて下さいね」
「そんなことまで・・・ありがとうございます。では皆さん祈りを捧げましょう」
食前の祈りを捧げ、それが終わると皆一斉に食べ出した
フィオナの料理は子供達にも大人気で、寸胴鍋にたくさんあったはずのシチューがあっという間に消えていった
多めに作っていたようだが流石育ち盛り。これは夜の分も大量に作らなくてはいけなさそうだな
昼食が食べ終わり洗い物をしていると、子供達がやって来て私達に言ってきた
「ねぇねぇ魔法教えてー!」
先程私が使っていたのを見て自分でやりたくなったのだろう
本来この後は算数の勉強の予定だったが、シスターに話したら許可を貰えたので午後からは予定を変えて子供達に魔法を教えることとなった
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