205話 脱出
法国の外から魔族の気配を察知し一刻も早くここから出て現場に向かおうと脱出を試みる。しかし先程感じ取った魔族の気配、1体や2体どころの話ではないな。大量の魔物の気配が邪魔して正確な数までは感じ取れないが少なく見積もっても10体は確認できる
「ご主人様、この感じ・・・」
フレイヤも魔族の気配を察知したようだ。一概に魔族といっても魔族にも階級のようなものがあり低い階級の者は少し手強い魔物と同じ位の強さなので脅威になることはないだろうが、階級が高い個体になればなるほど強力な能力を持つ者が現れてきて相手をするのに手こずるだろう。ここからは上位の存在は感じ取れないが油断は出来ないな、悟られないようあえて気配を消しているかもしれない
「なんだか外から今まで感じた事のない嫌な空気を感じるな」
魔族と出会った事がないだろうプラメアもその存在を知らなくても嫌な気配を感じ取ったようだ。魔族達と戦うのならプラメアの手は借りたいところ、今ここにある戦力があれば十分に対応できるはずだ
「そうだ、結界に精通している者がおりますのでその者に声をかけてここの結界の解除をお願いしてみます。そして点在している騎士達に指示を送り国民の安全を確保して参ります。お力になれず申し訳ありませんが皆様それまでどうかここでお待ち下さい」
「いやリューよ、ここに人を呼んで待っていられる程の時間はなさそうじゃ。この結界は儂に任せてお主はさっさと向かうがいい」
「プラメア・・・分かりました、頼みましたよ」
プラメアの言葉にリュミエールは国民を救うべく行動を開始。プラメアの言う通り結界の解除が出来る者を探してこの場に来るのを待っていたら法国を守る三重の結界を解かれて魔族や魔物の大群が雪崩れ込んで来てしまう恐れがある。しかしプラメアにはこの結界から出るのに何か算段があるのだろうか?
啖呵を切ったプラメアは前に出てきて何やら準備運動をし始めて剣を構え始めた
「回復に集中したいからあまり使いたくはなかったが緊急事態の様じゃし仕方がないの。お主ら少し下がっておれ」
「何をするんですか師匠?」
「黙っておれ、集中できん」
その場がシンと静まり返り全員がプラメアに視線が向く。もしかしたらプラメアの持つ自然エネルギーを使って結界を斬ろうというのだろうか。私達が使う魔法と違いプラメアが使う自然エネルギーであれば発動はできるだろう。しかし攻撃を吸収してしまう結界を相手に一体どうするか拝見させてもらおう
集中力を極限まで高めたプラメアは自身の体にある自然エネルギーをかき集め剣を振るった
「ハッ!」
プラメアが振るった剣は空を切った。凄まじい気迫は伝わってきたが見た限りではただ何もない空間に剣を振り下ろしただけにしか見えなかったが・・・沈黙の時間が流れそれに耐えきれなくなったレオンが口火を切った
「し、師匠・・・?今のは一体・・・」
「案ずるな、ほれ見よ」
プラメアが指す場所に再度目を向けるとなんと張られていた結界にヒビが入っていて、そのヒビはそのまま全体的に広がっていき結界は消滅した。今の一振りでどうやって結界を破壊したのか皆目見当もつかないが、少なくとも私にはマネの出来ない技というのは理解できる
「凄いですね、今のはどうやったんですか」
「今のは空間そのものを斬る儂が編み出した技じゃ、この技なら結界に吸われることはないと思っての。本当はエレナと戦っていた時に使ってやろうと思っておったのじゃがこれを使うには集中する必要があってまだ動きながら放つことが出来ないから・・・ってこんな話をしている場合ではないだろう。今ので儂は力を使い切った、暫く回復の方に専念しなくてはならんからここで待機させてもらうぞ。終わったらすぐ駆けつけるから儂の分も残しておくのじゃぞ!」
「そんな余裕があるとは思えませんが・・・・ありがとうございます!皆行こう!」
プラメアのお陰で結界の外に出ることができた私達は皆で教皇が向かった方角へと駆ける。それにしてもあの技がまだ未完成で助かった。あんなの初見では絶対避けられないしポンポン使われていたら腕の1本2本飛ばされていただろうな
今はそんな事置いといて早く目的地に向かって外にいる奴らを殲滅し教皇を捕らえて企てを止めなくては
会場を出ると私が想定していたよりも事態は良くない方へと進行していた。結界はまだ無事なようだが法国内で数か所煙が上がっている場所を確認、既に魔物が数体侵入しているようだった。何者かの手引きによって魔物を召喚された可能性がある。幸い巡回している騎士達で対応できる相手のようでそこまで大きな被害とはなっていないようだが、魔物に人を割いているせいで混乱している国民を上手く避難場所へと誘導することができず避難に遅れが発生しているようだ。その様子を見たレオンがいち早く行動に移る
「早く魔物達を駆除して民間人を避難させないと!街中の魔物は俺達が相手しますのでエレナさん達は教皇をお願いできますか」
「分かりました、くれぐれも無理はしないで下さいね」
中で暴れる魔物達の討伐へと向かったレオン達はそこで別れ、私達は教皇の場所を目指した
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