204話 教皇の企み
結界内にいる私達に向かって教皇が突然魔法を放ってきた。流星群の様に降り注いてくる炎の魔法は結界をすり抜けてこちらに向かってくる、すぐさま防御魔法で防ごうと発動しようとするが魔力が体内で滞ってしまい放出することが出来ない。先程から体が重くなったとは思っていたがどうやら魔法まで封じられてしまったようだ。魔法が使えないと分かると即座に各々が回避行動をとり教皇が放った魔法を避けていく
「皆無事!?」
「問題ありません!」
「ちょっともういきなり何なのよぉ!」
突然の事で驚きはしたが全員に怪我はないようだ。見た感じ教皇にあんな魔法が使える程の魔力があるようには到底思えない。やはり教皇が手にしているあの禍々しい杖、あれが教皇の魔力を大幅に上げていると考えられる
こちらはプラメアとの戦いを終えたばかりで疲労が溜まっているというのにあんなのを撃ち続けられたらたまったもんじゃないぞ。魔法特化のフィオナやエレノアも自慢の魔法が使えないのではこの場で無力、それにこの結界は・・・
「やってくれたな!こんな結界私が壊してやる!」
「フローリア待って!」
私の制止を聞かずフローリアが結界に向かってブレスを放った。しかしブレスは結界に直撃すると破壊するどころか吸収され、そしてフローリアが放った以上の威力となってこちらに返ってきた
「ハハハハッ!無駄だよ!その結界はいかなる攻撃も吸収して倍にして跳ね返す。魔法も使えない貴様等がそこから出る方法はない!」
ガラガラになった会場に教皇の高らかに笑う声が響き渡先程の魔法を再び放ってきた。本当になんなんだ、どうして攻撃を仕掛けてくるのかサッパリ見当がつかない。原因があるとすればプラメアやレオン達なのだろうがここまでされるような事をするとは思えない
理由も分からずただひたすら攻撃を避け続けていると突如結界を覆うように更に新たな結界が張られ教皇が放つ魔法を防いだ。今度はなんだと辺りに目を配ると会場の入口付近にリュミエールが立っていた。今日は公務があるからと大聖堂の方にいたはずだが、騒ぎを聞きつけて会場まで来てくれたようだ
リュミエールは私達を攻撃する教皇に目を向けると諭すような声色で問いかけた
「ザカリス教皇、これは一体どういう事でしょうか?何故勇者様達に向けて魔法を放つのですか?それにそのおぞましい杖は一体・・・」
「リュミエール・・・・」
教皇がリュミエールに向ける目はまるで敵対している相手を見るような鋭いものだった。この2人の関係性は私には分からないが良好ではないということだけは理解出来る
リュミエールが来たお陰でこちらへの攻撃は一時止む。けどそれも僅かな時間、再び攻撃が始まるその前に外に出られないかと結界の解除方法を探る
しかし私の予想とは裏腹に教皇はそのまま私達に向けていた杖を降ろし会場から去ろうとしていた
「本当はこの手で葬ってやりたいところだが残念ながら私は他にやらねばならぬ事があるので失礼させてもらう。貴様達はこれから起きる事をここでただ指を咥えて聞いているといい」
そんな捨て台詞を吐いたザカリスは転移門でその場あとにした。どこに向かったのか分からないが一先ずは助かった、けれどザカリスが言っていた事を考えると早くこの結界を破らないとマズイ気がする
結界の外にいるリュミエールであれば結界をどうにかできるか?
「リュミエール様、この結界を解除する事は可能ですか?」
「申し訳ありません、私が使えるのは回復や浄化、防御位で結界を解除するような魔法を持ち合わせておりません・・・」
そうなるとやはりこの結界内にいる者達でどうにかするしかない。攻撃を吸収して跳ね返す結界を破るには吸収できない程の威力がある攻撃を当てる必要がある。今この中で一番威力のある攻撃を出せるのはフレイヤとフローリアのブレスだが、そのブレスが跳ね返されてるからなぁ。それ以上の威力となると・・・
この状況をどう打破できるかと思案していると会場の外から何やら悲鳴が聞こえてきた。外で何か良からぬ起きているようだ
恐らくザカリスが言っていた事と関係しているんだろうが気になるのはそんな事ではない。悲鳴が聞こえた瞬間数えきれない程の魔物の気配、そして懐かしい・・・けれどもう二度と感じたくないと思っていた忌まわしい魔族の気配を察知した
ラミアスからは感じられない全く別物の純粋な悪意がここからでもビンビンと伝わってくる。もう魔族はラミアス以外に存在しないと思っていたが・・・どこかに隠れていてこのタイミングで魔族が法国にやって来るという事は十中八九ザカリスによって仕組まれたものなのだろう
ここまで大がかりな計画をザカリス1人だけで画策していたとは考えづらい。共犯がいるのは間違いないはず
この法国の周りには三重の結界が張られていて外からの敵を侵入させないようにしてある。しかしその結界が無くなるのも時間の問題だろう、ザカリスがその対策をしていないわけがない。奴が何を理由にこんな事をしているか分からないが一刻でも早くこの結界を破壊して企みを阻止しなくては
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